2012年6月15日、国立国会図書館法の改正法が可決・成立した。
これは、従来、図書、雑誌、新聞、CD、DVD、ビデオなど、頒布を目的として発行されたすべての出版物は、国立国会国会図書館に納付することが義務付けられているのだけれど、そうした紙媒体だけではなく、電子書籍や電子雑誌といった、オンライン資料も収集しましょうというもの。
具体的には、民間が出版するオンライン資料について、国会図書館への送信などを義務付ける。ただし、出版物が有償であるか、DRM(Digital Rights Management System 技術的制限手段)が施されている場合は、その費用補償をどうするかの検討をしているという事情から、当面は送信の義務は免除される。
ここで、収集対象となる"オンライン資料"とは、従来の「図書、逐次刊行物等」に相当する情報という観点から、主にテキストや図などで、更に何らかの編集過程を経たものと定義されていて、放送番組、動画、音楽配信、ウェブ情報等は対象から除外されている。
「電子書籍ビジネス調査報告書2011」によると、2010年度の電子書籍市場規模は約650億円と推計され、前年の574億円と比較して13.2%の増加。その内、88%はコミックを中心とした携帯向け電子書籍となっている。ただし、携帯向け電子書籍については、今後、携帯電話からスマートフォンへ利用者の移行に伴って、携帯向け電子書籍市場そのものは頭打ちになると予想されているのだけれど、電子書籍の媒体が携帯からタブレット端末や電子ブックリーダーなどに置き換わってゆくだけで、電子書籍市場規模全体でみると、2015年度には2000億円程度に達すると推測されている。
まぁ、巷の電子書籍等の普及具合を考えれば、今後増々、書籍等の電子化が進んでいくことは容易に予想できるし、その意味で国会図書館がオンライン資料を収取するのも当然の成り行き。
ただ、今回は対象から外れているけれど、テレビやラジオの番組を「文化的資産」として国立国会図書館に収集・保存しようという動きがある。
5月17日、自民党の鶴保参院議運委員長は記者会見で、国立国会図書館にテレビやラジオ番組の保存を義務付ける国会図書館法改正案の骨子を発表している。法案は、民主、自民、公明、みんな各党の参院議運委メンバーが共同で作成したもので、議員立法として今国会に提出、成立を目指している。
保存対象は、テレビは東京で視聴可能な7局の地上波と衛星放送で、ラジオは首都圏のAM局とFM局の番組。運用は、国会図書館内に録画、録音用の装置を設置して、一般利用者にも館内での視聴を許可する。ただし、著作権保護のためダビングは認めないというもののようだ。
ところが放送局側はこれに反発。NHKの松本正之会長は6月7日、「番組の保存、利用には権利保護の問題など多くの課題がある。広く意見を聞き時間をかけて検討してほしい」と述べ、民放関係者は「公権力による事後検閲につながり、免許事業である放送が圧力を受ける恐れがある・・もともと放送は(録画・録音で)固定されることを前提にしていない。ニュースを扱っていても新聞などとは違う」と主張している。
だけど、権利関係云々は兎も角、"公権力による事後検閲"というのは、おかしな理由。確かに検閲というのは、日本国憲法によって禁止されているけれど、それは、放送前の段階で公権力が強制的に内容を調べて不適としたものを放送させないことをいう。
これについては、昭和59年12月12日に最高裁判決が下された「札幌税関検査事件」の判例が参考になる。
これは、横浜のある図書輸入業者が、海外の商社から、写真集を輸入しようとしたところ、関税定率法で輸入禁制品とされているポルノフィルムが含まれていて、税関検査でひっかかってしまったことに対して、輸入業者が「憲法21条2項に禁じる検閲だ」として税関検査の合憲性を争った事件。
この判決では、検閲の定義がされていて、そこでは、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部または一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的・一般的に発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを言う」ものを検閲としている。
判決は原告敗訴だったのだけれど、最高裁は、対象物が、既に外国で発表済みであり、事前に発表そのものが禁止されていないことと、税関検査は、関税の確定や徴収が仕事であって、思想内容がどうこうを検査するのが仕事ではない、ことを判決理由としている。
要するに、事前に公権力が中身を検査して、世の中に発表させないことが検閲であって、世に出た時点で検閲は成立し得ないということ。まぁ、最近、自国民がノーベル平和賞を受賞したのにそのニュースを突然打ち切った国がどこかにあったけれど、ああいうのを"検閲"というのであって、公に発表されたものについては、"確認"や"検証”はできても、"検閲"などは出来る筈がない。
それに今のマスコミは、事後検閲云々言う以前に、自分で"自己検閲"していることを思い出した方がいい。卑近な例では、たとえば、通名報道なんかはそう。先日、SMBC日興証券の元執行役員をインサイダーで逮捕された事件があったけれど、警察が本名と通名の両方を発表したにも関わらず、NHKが通名だけ報道していたけれど、これなんかも事前に本名は発表しないと自分で自分を検閲した結果だといえる。
民放関係者のいう、「放送は、録画・録音で固定されることを前提にしていない」なんてのが通じるのであれば、いくら嘘をついてもOK。やりたい放題になってしまう。
たとえ、"問題番組"だと後で噂になったとしても、それが第三者もしくは大勢の人で確認することができなければ、それを咎めることは難しいし、仮に、問題となった番組の提供をテレビ局に要求したとしても、自分に都合の悪い番組をホイホイと提供する訳がない。
マスコミが自分達で、"報道する自由"や"報道しない自由"を行使するのは、時間的制約その他の要因から、ある程度やむを得ない部分があるとは思うけれど、一度、放送したものを、後で公権力から圧力を受けるのを懸念するのであれば、尚の事、視聴者側にも報道内容を"検証する自由"や"確認する自由"を保障しなくちゃいけない。でなければ、放送局は"報道の自由"という名の"事前検閲"によって、視聴者の知る権利を奪っている事になる。
公共の電波を使って放送された時点で、検閲など有り得ない。放送の録画・保存は、それとは別の次元で議論されるべきだし、権利関係の問題はあるだろうけれど、保存できるようにすべきだと思う。

この記事へのコメント
opera
最近は言わなくなりましたが、NHKで「地域主権」についての(自称)解説者討論をやっているのをチラ見した時は、「こんな放送局はぶっ潰してしまえ」と本気で思いましたw
白なまず
と言う内容の動画を見ました。面白いですね、B-CASカードは最近クラックされ、
BLACK-CASカードなる物が外国から輸入されて怪しい人達が売買しているようですが、、、
B-CASクラックを機会にTVのネット認証が進むかもしれませんが、ネット認証もクラックから
は逃れることは出来ないでしょうね。アノニマスも宣戦布告しているようなので、、、
≪国際ハッカー集団「アノニマス」が日本の政府機関へのサイバー攻撃を表明している問題で、警視庁は、不正アクセス禁止法違反容疑などで本格捜査に乗り出す方針を固めた。≫
デジタル放送以前では、NHKが写らないテレビは作れませんでしたが、
デジタルTVでは、NHKや有料放送局を選択的に受信しない設定ができるので、
NHKは見たくないので、スクランブルを掛けて契約者のみ視聴できるようにしろ!
という事を法的になんとかすれば、NHKの財源が破綻し解体する事が可能なようです。
●NHKを追い詰める方法としてB-CASカードを使えるかもしれない! 動画
【B-CASカードについて3-1