今日はこの話題しかないですね。
1.増税法案可決
6月26日、衆院での消費税増税法案の採決が行なわれ、賛成多数で可決された。投票総数459票のうち、賛成363票、反対96票で、民主党からは、小沢氏や鳩山元首相ら増税反対派57人が、造反して反対票を投じ、16人が棄権、もしくは欠席した。
反対票57人は当初の下馬評を40人台を大きく超えるもので、小沢氏は57人の反対票に「よし」と呟いたという。もちろんこれは、事前に造反しても厳重な処分は行われないという噂が流れ、中間派から反対に流れた票も入っているものと思われる。
産経新聞によると、反対票を投じた57人は以下のとおり。
小沢一郎、東祥三、山岡賢次、牧義夫、鈴木克昌、樋高剛、小宮山泰子、青木愛、太田和美、岡島一正、辻恵、階猛、松崎哲久、古賀敬章、横山北斗、相原史乃、石井章、石原洋三郎、大谷啓、大山昌宏、岡本英子、笠原多見子、金子健一、川島智太郎、菊池長右エ門、木村剛司、京野公子、熊谷貞俊、黒田雄、菅川洋、瑞慶覧長敏、高松和夫、玉城デニー、中野渡詔子、畑浩治、萩原仁、福嶋健一郎、水野智彦、三宅雪子、村上史好、山田正彦、加藤学、中川治、橘秀徳、橋本勉、鳩山由紀夫、松野頼久、初鹿明博、川内博史、小泉俊明、平智之、中津川博郷、福田衣里子、福島伸享、小林興起、石山敬貴、熊田篤嗣(敬称略:産経新聞調べ)
ざっと見たところ、やはり反対票は小沢グループが中心で、中間派もちらほら。珍しく、宣言通りルーピー氏も反対票を投じている。
で、小沢氏は、採決後に重大発表するとか言っていたのだけれど、採決後の記者会見では「最後の努力として民主党のあり方に帰ることを政府、党執行部に主張していきたい。」と離党しないと宣言した。離党を期待していた人は、思いっきり肩すかしを喰らった。
だけど、この肩すかしが結構曲者で、ある意味、小沢氏にハメられたといってもいいのではないかと思う。どういうことかというと、今回の小沢氏の動きで造反の反対票が57票でたことで、政府及び民主党執行部と野党が対立するよう仕向けられてしまったから。
6月26日、自民党の谷垣総裁は今回の衆院採決で民主党から大量の造反が出たことについて記者会見で「民主党執行部は厳しい処分で臨むべきだ。…参院で協力する前提は処分をきちっとすることにある」と、民主党の対応次第では参院での法案審議に協力しない考えを示している。
まぁ、どのレベルの処分が"きちっとした"処分になるのかは分からないけれど、これまでの谷垣氏および自民党幹部の言動を考えると、除名処分相当ではないかと思われる。ただし、他党にそこまでを要求する以上、自党で造反者が出れば同等の処分を行わないと筋が通らない。
今回の採決では、自民党からは、中川秀直元幹事長が欠席しているのだけれど、谷垣総裁は、石原幹事長に処分を検討するよう指示しているから、欠席した中川氏をどれくらい重い処分にするかで、民主党に要求する処分レベルがどれくらいのものかは推測できるかもしれない。
2.小沢にハメられた民主執行部と自民
さて、結果的に大量の造反者を出してしまった、民主党執行部としては、自民から処分しなければ参院で協力しないと言われた以上、何某かの処分が必要になってくる。
野田首相は採決後の記者会見で、大量の造反者を出したことについて、「政党なので、当然、党議拘束がかかっている。これに対する対応をしなければならない…私と幹事長で相談しながら、党内の所定のルールにのっとって、厳正に対応をしたいと考えている」と"厳正に"の部分に力を込めて発言している。
では、造反者57名を問答無用で除名するかというとそうではなくて、「一人一人精査しなければならない。どの法案に反対したのか賛成したのか、どういう理由か精査する必要がある」と、記名で採決が行われた3法案全てに反対した小沢氏ら44人とその他の造反者とでは、処分に差をつける考えでいるようだ。無論、これは54名以上を除名してしまうと、単独過半数割れになってしまって、不信任案が可決してしまうことを避けるためのものであることは見え見え。
だから、"厳正に"と口では言っていても、何だかんだで、53名以下の除名者で済ますよう調整を掛ける筈。けれど、結果的に一部であっても党を割らせることになることには変わりない。また、このどこまで除名するかの"さじ加減"は、先に述べた自民側の造反者の処分の重さとも連動してくる。
自民が自分の造反者を重い処分にしたのに、民主が軽い処分にしたら、やはり自民の参院での協力は得られない。だから、欠席という造反に対して、自民が除名クラスの重い処分を下したとしたら、野田首相側としても、自党の欠席者クラスであっても、それなりの処分を検討する必要に迫られる。だから、この部分でも自民と民主との間で駆け引きが行なわれると思う。谷垣氏も本気で野田政権を追い込むつもりがあるのなら、場合によっては、採決を欠席した中川秀直元幹事長を除名処分するなど血を流す必要が出てくるかもしれない。
こうしてみると、小沢氏の採決反対という一手によって、民主党執行部と自民が対立するという局面が生まれてる。だから、見方によっては、民主党執行部と自民は、増税法案が御破算に成りかねない局面へと小沢氏にハメられたとも言える。
3.鳩と中間派もハメられた
そして、更に、小沢氏のこの一手は、民主党内の中間派にも及んでいる。元々中間派は、執行部にそれほど対立する気はなく、当初は賛成に回ると見られていた。ところが、採決間近になって、反対しても重い処分にはならないだろうという観測が流れ、反対に回った中間派の議員が増えていった。それが結果的に57の反対票となった。
ところが、反対しても除名まではされないだろうと高をくくって、反対に回った中間派の議員は、採決が終わってみれば、野田首相が厳正な対処をするといい、自民が態度を硬化させ、気づいてみれば、除名されるかもしれないという立場に追い込まれている。
しかも、見苦しく党に残ると宣言した鳩山氏が反対票を投じている。鳩山氏が3法案全てに反対したかどうかは分からないけれど、厳正な対処をするのであれば、反対票を投じた鳩山氏とて処分は免れない。折角、輿石幹事長と談判して、反対しても重い処分にならないよう手配した筈なのに、気づいたら自分も処分対象になってしまってる。
だから、反対票を投じた、鳩山氏も含めた中間派の議員は、採決が終わった途端、逃げ場を失ってしまってる。これも小沢氏にハメられたと言えなくもない。
このように、小沢氏は、民主党執行部、自民(公明)、党内中間派の3者を同時に、逃げ場のない局面に追いやることに成功した。それでいて、小沢氏自身はまだ離党という"勝負手"を出していない。一気に詰めにかからずに、布石を打つことで局面を変えた。小沢氏は、この3者を見事にハメた。
筆者は碁のことはよく分からないけれど、碁打ちの人にとっては、こうしたじわじわと局面を変えていく攻め方が基本なのだろうか。
ただ、それでも、野田首相と自民が結託さえすれば、小沢氏を排除することなど簡単にできる。野田首相が"絶妙な"さじ加減で、53名にならないように除名処分者を減らしていって、自民を宥めて参院審議して貰えばいい。
だから、また、ステルスモードに入って、谷垣総裁に頼みこんで物事を進めるのではないかと思う。そして、現実は、小沢氏とて勝った訳でもなんでもなく、敗走せずに踏みとどまっただけというのが正直なところだと筆者は考えている。

この記事へのコメント
日比野
>小沢氏一人を除名にし…
6/28付エントリーに書きましたけれども、そういう案もあるようですね。
>almanosさん
自民がどこまで参院審議のハードルを上げるかですよねぇ。
>静岡の還暦男様
コメントありがとうございます。増税法案が通るかどうか参院次第ですが、仰るとおり、先に信を問うのが筋ですね。
>ス内パーさん
ご教授ありがとうございます。3つの碁風ですね。なるほど。小沢氏が首相になる目は殆どないと思いますけれども、拙ブログ恒例(?)の「○○首相の一字」シリーズで小沢氏の一字は前々から浮かんでいるのですけれども、今回の造反劇で増々その一字を感じていますです。(苦笑)
>sdiさん
>自覚できてるんしょうかね
造反後の会見で、小沢氏が「われわれは首相が政治生命を懸けると言った法案に反対したので、今後それなりの対応をしないといけない」と述べたことから、私はその自覚があると思っています。
とおる
野田首相としては、何度も処分を科され、今回は反対を煽ってきた首謀者である小沢氏一人を除名にし、他の反対者を最悪は(9月の代表戦の後まで)党員資格停止にして、分断するかも。(小沢氏について出たい人は、「出て行ってくれ~!」と。)
sdi
静岡の還暦男
almanos
ス内パー
碁打ちはおおざっぱに力戦派、堅実派、模様派の3つの碁風に別れます。
力戦派は相手の石を取り、陣地を削ることで勝利を目指す碁風です。女流やアマチュア力自慢に多いタイプで視野が狭かったり守りがおろそかになりがちだったりします。
堅実派は生きた陣地、拠点作りを重視する碁風です。弱い人と中国韓国選手に多いタイプで細かい差し合いが強い一方発展性の乏しさから土地が足りずに負ける、拠点完成前に食い荒らされるなどの場面も見られます。
模様派は広く浅く石を置き、相手を小さな土地に押し込めつつ大きな土地を奪う碁風です。
日本選手によく見られるタイプで広く浅く置いてある石を利用して真綿で締め付けるように潰したり攻め合いで出来た壁使って大きく陣地まとめたりして勝つ一方各個撃破で広く置いた石を食い荒らされたり陣地の隙を差し込まれて陣地まとめに失敗する場面も見られます。
小沢の場合は模様派ですかね。ただ碁打ちの思考とも今回はずれてる気はしますが。