今日は、簡単に…
6月25日、自民党の谷垣総裁は、都内の日本外国特派員協会で講演し、増税法案の衆院採決について「造反者を処分できないようでは、参院で一緒に審議を進めていけるのか非常に疑問だ。きちっとした処分を強く求める」と、民主党の造反者には除籍も含む厳正な処分が必要だと述べた。
これは、むろん、民主党を分裂させ、更に野田政権を追い込むためだと思われるけれど、造反者を処分できなければ、参院で協力できない旨の発言もしているから、参院通過を盾に処分を迫っている。しかも、小沢氏らが離党して、内閣不信任案を出した場合でも、「政府・与党が誠実に対応するのか、暗黙の抵抗を続けるのかに懸かってくる」と同調しないとは言わなかったから、更に野田政権にプレッシャーを与えてる。
この、内閣不信任案への同調については、6月25日、自民党の茂木政調会長がTBSの番組で、「やるべきことをやらず、ずるずる引っ張るということがあるならば、内閣不信任案も視野に入れざるを得ない。オプションとしてはある」とこれまた可能性を匂わせているし、安倍元総理も22日のBS朝日の番組収録で、「1日も早く民主党政権を終わらせるために、可決させるという選択肢もある…3党合意はあるが、合意について信頼するに値しないという判断をするに至れば、当然、不信任案に賛成する」と肯定している。
これらの発言で共通していることは、政府与党が、法案に対して誠実に対応しているか、信頼に値するかどうかを条件に挙げていること。法案の中身云々ではなくて、法案審議の日程や党内手続きといった部分で攻めていること。
法案の中身とは全く関係ない部分を条件にしているから、修正合意のときのように、自公案を丸飲みするといった手は使えない。民主党が抱き着けない部分をささっと持ってくるあたり、自民は解散に追い込む戦略をまだ捨てているわけではないように見える。ただ、3党共同提出した法案を参院で自分で否決するのは、民主党が不誠実という理由だけでは少し弱いように思われる。本当にやるのであれば、もう少し世論に説明できる"何か"が必要ではないかと思う。
さて、法案可決の為には、"誠実な"対応を見せなければいけない民主党は、造反の動きが拡大しているようだ。それは、複数の党幹部が、法案に反対しても除名まではしないと、大甘処分を示唆する発言をしたためだと見られている。
当初から、党を割らないために大甘処分を画策していた輿石氏は元より、樽床幹事長代行は「過去の事例を踏まえながら対応していくべきだ」と述べ、城島国対委員長も「過去の事例をしっかり検証して対処することになる」と、「前例踏襲」を強調する発言をしていた。
民主党はこれまで、法案採決を巡って造反者を除名した例はないから、幹部が前例を踏襲するなんて言えば、誰だって、除名はないなと考えるのも無理はない。実際、この発言以降、鳩山元首相が法案反対を明言。輿石氏も鳩山氏に対して、「党を割らないよう最善の努力をする」と大甘処分を示唆している。
こうなると、日和見の中間派の中からも造反者が出てくることになる。 25日現在で造反者は棄権・欠席含めて60人規模とも70人規模とも囁かれている。
野田首相サイドの説得工作もあまり効果はなかったようで、野田首相自ら電話で小沢グループの議員に「どうか穏便に」と要請したものの、「首相のする仕事ではない」と逆にあしらわれる始末。
特に、気になるのは、小沢氏が40人から45人程度の離党者署名を握っていると見られていることで、仮に離党者が42人出れば、新党きづなの衆院9議席と合わせることで、内閣不信任決議案の提出条件である51議席を確保することになる。そこへ加えて自民が、小沢氏らが提出する内閣不信任に同調すれば、一気に野田政権は辞任か解散に追い込まれる。
25日の夕方、民主党は臨時の代議士会を開いて、野田首相が最後の説得に乗り出したのだけれど、怒号が飛び交う大荒れの会合となったようだ。
代議士会は午後5時半から行なわれ、約250人の議員が出席したのだけれど、主な発言を時事通信の記事から次に引用する。
民主代議士会の主な発言
25日の民主党代議士会での主な発言要旨は次の通り。
野田佳彦首相 一致結束して力を合わせ、社会保障と税の一体改革関連法案の衆院通過に向け支援、賛同賜るよう心からお願いする。
階猛氏 民主党が社会保障の公約を撤回したのか、していないのかがはっきりするまでは、法案を採決すべきではない。国会の会期を大幅に延長したのだから、時間をかけて議論すべきだ。
村井宗明氏 大幅な予算縮減につながるはずの政府調達の改革が停滞している。首相はやる気のない官僚を異動させてでも改革を進めるという覚悟を見せてほしい。
川内博史氏 民主党代表選のときの野田首相の演説に消費税という文字はなかった。首相になった途端に消費増税を言い始め、党は今や分裂の危機にある。国民の約束と3党合意とどっちが大事なのか。
山田正彦氏 この場で収拾するなら、両院議員総会を開くべきだ。そのために必要な署名は集まっている。総会を開かないのは党規違反であり、党議拘束に従わないよりも罪が重い。
橋本勉氏 ギリシャでは増税しても景気低迷で税収が減った。日本は世界一の借金国と言われるが、長期金利は世界一低い。ギリシャと同じようにしないためには消費税率を維持すべきだ。
大畠章宏氏 民主党の現状を堤防に例えれば決壊寸前だ。野田首相、輿石東幹事長、小沢一郎元代表の3人で会談し、「党を割らない」「選挙はしない」の2点で合意した。輿石幹事長がこの合意を受け止めてどう乗り越えるかが重要だ。
輿石幹事長 国民の生活が第一という旗を降ろすわけにはいかない。一致結束してあす(26日)の採決に臨んでもらいたい。その前に処分がどうだこうだという議論をすべきではない。首相を信じ、私を信じ、対応を一任してほしい。
(2012/06/25-21:20)
まぁ、会合の中身は、もっと時間を掛けて議論してくれというのが多く、やはり自公案をベースにした内容で修正合意したことが反発を生んでいるようだ。
野田首相は、会合の席で法案に賛成するよう、心からお願いすると強調していたけれど、それは、ある程度の議論を経ていて、最後の駄目押しにつかうのならいざ知らず、議論不十分だと思っている相手には、何度繰り返したところで効果は薄い。聞いている相手だって、もっと議論する場を"心から、心から、心から"設けて欲しいと思っている。筆者には、会合での野田首相の表情は、どことなくテンパっているように見えた。
いよいよ明日、採決が行なわれる。

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