小沢造反戦略の奥を読む

 
今日は半分以上妄想かもしれませんけれども、小沢氏の造反戦略についてもう一歩踏み込んでみたいと思います。

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1.右往左往する中間派

小沢氏の増税法案採決反対を巡って、民主党内中間派が揺れている。

6月22日午後、鹿野前農相は官邸を訪れ、自らのグループで法案取り下げを求める声があると伝えた。わざわざ伝えにくるということは、首相に忠誠心を示すことにはなるけれど、同時に鹿野氏は自分で自分のグループを取りまとめられないことを白状したことになる。

また、鳩山グループでも、同調者が出始めた。松野氏、初鹿氏がグループ幹部に反対の意向を伝え、川内氏も23日、民放テレビで「採決させないことが基本だが、採決があれば出席する」と反対を仄めかせている。

鳩山氏自身は、21日の段階で、小沢氏の造反・離党について、「私どもの考え方こそ民主党の本来の考え方だと国民や執行部に理解してもらいたい。すぐに新党運動に同調していくということではない」と、自分は離党しないといっていただけに、こちらも自分のグループを取りまとめられていない。

22日、小沢氏側近は「反対で54人以上、棄権も含めると70人以上になる」と断言しているそうだけれど、幾分かはハッタリ成分が入っているにしても、離党署名45人を集めているというのは、執行部にとってはさぞかし不気味に見えていることだろう。

実際、22日に、野田首相に民主党関係者から採決の票読みをした極秘ペーパーが届けられたのだけれど、反対は54人を数人上回っていたというから、これが本当であれば、侮ることは出来なくなる。

官邸サイドは「20人程度は説得可能」とみて、野田首相自ら電話を入れるなど切り崩し工作をしているという。中には、閣僚経験者が「棄権だけなら政務官のポストに就ける」、「比例単独議員には小沢系が抜けた後の選挙区を与える」と露骨な切り崩しを行っているとの声も漏れ聞こえているのだけれど、この期に及んで、民主党の看板で衆院選を戦って勝てるのか、という視点が薄いように感じられる。

確かに、民主党には100億を超える資金があるというから、公認候補になれれば選挙も大分楽に戦えるだろう。だけどそれは選挙に豊富な資金を使えるというだけであって、それが選挙に勝てることを保証しているわけじゃない。ただでさえ、今の民主党には逆風が吹いている。

まぁ、離党する側の議員にしても、"悪名高き"小沢新党で出ても勝てるかどうかは怪しい。それに小沢新党には資金面の問題もある。

小沢新党が50人から60人の規模になるとした場合、その立ち上げ費用は30億円に上るとも言われている。頼みの"ルーピー鳩山金庫"は同調しないといっているから、彼の財布はアテに出来ない。となると、政党助成金ということになるのだけれど、政党助成法では、毎年1月に政党届けを提出した政党に対し、4、7、10、12月の4回に分けて交付される。その配分は、各政党に所属する議員の総数で割った割合と、前回の衆院選と前回・前々回の参院選の得票を各政党の得票の総数で割った割合に応じて配分される。

だから、小沢氏は今の段階で離党して新党を立ち上げたとしても、来年の1月か、総選挙後の交付月まで貰えない。つまり、年内に総選挙が行なわれるのであれば、小沢新党に助成金は入ってこない。

もしも、金が回ってくるとすれば、離党ではなくて、民主党からの"分党"という形にして、執行部と合意すれば、最短で7月支給分からの政党助成金を貰える可能性はある。だけど、ここまで楯突いた小沢氏に対して、執行部がそんなことを許すわけがない。

だから、小沢氏に同調しようか、党内に残ろうかと逡巡している議員にとっては、逆風の民主党と悪名&金欠の小沢新党のどちらで出ても、厳しい選挙戦になることは容易に予想できる。

かくて、民主党執行部は、金で中間派を切り崩し、小沢氏は反増税を旗印に説得工作をすることになるのだけれど、一部には、反増税だけで勝てると小沢氏が思っているとしたら甘い、という指摘もある。

だけど、そんなことは、小沢氏は百も承知の筈。




2.小沢新党と他党との連携はあるか

6月20日、小沢氏は「反対後の環境整備はきちんとやる。選挙には絶対勝てる」と周辺に伝えたそうだけれど、果たして、そんな環境整備とやらはあるのか。

ひとつ考えられることがあるとすれば、やはり他党との連携。既に、離党した場合、新党きづなとの合流を検討するとの報道があるけれど、それ以外の党との連携できるかどうかという点。

6月22日、みんなの党の渡辺代表は記者会見で、「アジェンダが同じなら、われわれの救命ボートを回したい」と政策の一致を条件に、離党した民主党議員の受け皿になることを表明している。渡辺代表は5月22日の党役員会で「『反増税』という限りにおいて、それぞれの勢力と連携していく」と小沢氏との共闘も示唆しているから、党内でもある程度の体制を整えている可能性がある。

だから、渡辺代表と小沢氏が既に水面下で繋がっていれば、小沢氏が自分のグループの議員の面倒を見てやってくれ、と話しをつけていることだって十分考えられる。何となれば、小沢グループの議員が離党後、小沢氏と喧嘩別れかなんかしたように"見せかけて"みんなの党に転がり込むなんて芝居だってやろうと思えばできてしまう。

あともう一つ。維新の会との連携についてはどうか。

6月22日、松井大阪府知事は「小沢グループ全ての人たちがわれわれと同じ価値観を持てるとは思えない。小沢さんも組みたいと思ってないだろうし組むことはない」と、小沢新党との連携を否定している。だから、普通に考えると連携はないということになるのだけれど、橋下市長が微妙な発言をしている。

6月19日、橋下市長は記者会見で、「小沢一郎・元民主党代表が、『橋下氏は今まで続いてきた旧体制をぶち壊さなければ真に新しい国民のためのものは生まれないという趣旨の話をしているが、その点は私の年来の主張と同じだ』と言っている。主張が同じならば連携も可能だと思うが、小沢氏との連携の可能性についてどうか」と質問され、「『旧体制を壊さないと真に新しいものは生まれない』との考えは小沢議員とまったく一緒だと思う…連携の可否ついては、政治的ないろんな判断が必要になって...。まず第一に僕の立場は、ずっと国政で権力中枢を担ってきた小沢議員にとやかく言える立場ではない。一ローカル市役所の所長なので、偉そうなことを言える立場ではないが、政治的な話は"大阪維新の会"でいろんな議論があるので、ちょっと僕一人のコメントはここではできない」と、明言を避けている。

尤も、これについては、「「維新の会」の現実」のエントリーでも述べたけれど、わざと松井知事と橋下氏との間で意図的に発言にズレを持たせて、あとでどうにでも対応できるように両天秤を掛けている可能性がある。




3.暗躍する小沢

現時点で国会議員が一人もいない「維新の会」は政治団体ではあるけれど、政党ではない。政党として認められるためには、5人以上の国会議員が必要になる。政党になれれば、総選挙後に、政党助成金を受け取ることができるし、小選挙区選挙でも、党公認候補は葉書やビラの枚数で優遇されたりする。自前で金を用意できない人は、塾生にはなれない程、選挙資金に困っている、維新の会だから、少しでも選挙資金を節約できるのなら、それに越したことはない。

6月23日、維新の会の「維新政治塾」は、約880人の塾生の「入塾式」を行っているけれど、合格した関東地方のコンサルタントの40代男性によると、「知り合いの合格者と連絡を取ったら、東京大、慶応大、早稲田大など高学歴で、医師や会社経営者など所得が高そうな人が多かった」そうで、彼自身も面接で選挙資金を問われ、「1億円弱は出せる」と答えたという。

また、そのほか、みんなの党の衆院選選挙区支部長のほぼ全員が塾生として選抜されていて、橋下市長は、露骨に「政治的配慮で塾生として残した」と述べている。これは、明らかにみんなの党との連携も視野に入れていると思われる。

このように、維新の会は、金があるか既存政党の候補者クラスを中心に塾生として選抜していて、"安上がり"で、且つ、"勝てそうな"候補を立てようとしているように見える。

小沢氏は、この辺りに目をつける可能性があると思う。

たとえば、小沢氏が橋下氏に水面下で働きかけ、民主党の中間派で離党した議員を中心に最低5人の議員を用意して、彼らに数百万かそこらの持参金を持たせてやるから、維新の会の公認候補にしてくれとアプローチしたとしたらどうか。

維新の会としては、5人の現職議員がくるなら、それだけで政党要件を満たせるから、それは歓迎すべきことだろう。だけど、小沢グループの面々を受け入れることは、世間的にはそれだけで、小沢氏との連携と見なされる可能性があるから、それは避けたい。だから、小沢色のついていない、"中間派"の議員であれば、受け入れると答える可能性はある。

もし、こんな裏取引が成立したら、小沢氏は、中間派の議員に対して、「増税法案に反対して離党することになったとしても、僕と一緒に行動しなくてもいい。希望すれば、維新の会に受け入れて貰えるよう便宜を図ることだってできる。既に話はついている。」と囁くだけでいい。それだけで造反票は確実に増えるだろう。

23日の維新塾の入塾式で、橋下市長は、「政治への不信感はピークだ。民主党政権は、意思決定の仕組みが構築できていないがゆえに党内ですら決定できない」と民主党を批判し、対立のスタンスを取っている。だから、民主党議員にしても、ストレートに維新の会に入れて下さいとは言いにくい。

そこを、小沢氏が橋渡しをすることで、離党しても維新の会で立候補できるとなれば、ぐらっときてもおかしくない。

もちろん、これは、ただの筆者の推測にしか過ぎないし、水面下のことは分からないけれど、一応可能性として述べておきたい。



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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    小沢氏の隠し財産がどの程度あるのかと言う話.
    彼の恐いところは(うわべの)突進力.
    戦後のボンボン議員に立ち打ちできない.
    自分の将来はないことを承知した時が恐い.
    生き残りを考えているなら嘘付増税首相の鴨.
    2015年08月10日 15:25

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