6月21日、今国会会期を9月8日までの79日間延長することが賛成多数で可決した。
元々、民主党は、自公の要求する、8月10日までの50日延長の線で検討していたのだけれど、野田首相の強い意向で79日の延長に変更した。どうやら、自公の要求通りの延長幅だと、「話し合い解散」に応じたと見られかねないことを懸念したとも言われている。
これを受けて、民主党の城島国対委員長は、自民党の岸田国対委員長に「きょう中に法案は提出しない」と通告。そして、その後の与野党国対委員長会談で、「9月8日までの79日間延長」を提案した。
一応、城嶋氏によると、一体改革関連法案、特例公債法案、衆院選挙制度改革関連法案及び、公務員制度改革関連法案の成立を首相が強く望んでいることに加え、9月1日の設置を目指す、原子力規制委員会の同意人事を行う必要から、11週間の延長はどうしても必要になるということのようだ。
だけど、会談の場で、会期延長は伝えたものの、修正法案の審議日程および採決の日時を明示しなかったから、自民は一気に態度を硬化させた。
自公両党は、民主党が採決日程とセットで会期延長を提案してくるだろうからと、修正案の速やかな共同提出に向けた準備も整えていたという。そして、当初求めていた21日までの衆院採決についても、多少であればずれ込んでも容認する積りだったという。
それを、ただ延長、それも79日という大幅延長だけ通告する。自公から見れば、さぞかし身勝手に映っただろう。
20日夜、自民党は急遽、党本部で幹部会を開き、22日中に法案の衆院採決が実現できなければ、会期延長に反対する方針を確認していたのだけれど、谷垣総裁は、幹部会後に「遅きに失した。与党としての統治能力の欠如を如実に物語っている。…どんなに待っても22日だ。そこからのらりくらりするようなら、ご破算だ」と民主党を批判した。
実は、民主党が79日延長を通告した、与野党幹事長会談が終わったタイミングで、小沢グループ幹部からのアプローチが自民党にあった。その内容は、「会期延長に共同で反対しよう。50人以上が反対するから否決できる。これで首相は終わりだ」というもので、会期延長を否決しようというもの。
これを受けた、自民党の岸田国対委員長は公明党の漆原委員長と延長に反対するか協議したのだけれど、あれ程、野田首相に、小沢氏を切れと言っていた手前、そんな話には乗れる訳もなく、結局、この提案は見送られたという。
とはいえ、なりふり構わず、増税法案を潰そうとする辺り、小沢氏とその一部の造反の意志は固い。
21日午前には、民主、自民、公明の3党が、幹事長会談を開き、自公が22日の採決を要求したのだけれど、民主党の輿石幹事長は「最大限努力する」と答えている。
そして、午後の国会で、79日間の会期延長が議決されたのだけれど、自公は反対に回っている。このように会期延長一つとっても水面下では激しい駆け引きが繰り広げられている。自民党の石原幹事長は採決について、「われわれは22日に採決すると理解している」とコメントしている。
ただ、まぁ、自公以外の野党が法案審議の時間を確保するよう求めていることを考慮すれば、現実的には、採決は26日になるのではないかとされていて、自公も仕方なく受け入れるのではないかと見られている。
※時事通信は26日採決で大筋合意したと伝えている。
さて、会期延長を潰すことにも失敗した、小沢氏はいよいよ剣ヶ峰に追い込まれた。
法案も会期延長も止められなかった小沢氏の最後の選択は、54名以上の造反議員を固めて、民主党を単独過半数割れさせること。それで野田政権を揺さぶることくらい。
小沢氏は21日午前に、輿石幹事長と会談し、「ご苦労を掛けるが、私どもの主張は国民のため正義だと思っているので、曲げるわけにはいかない」と採決に反対する考えを伝え、造反を宣言した。
そして、都内のホテルで、自らの支持議員らを集めた会合で、「不景気で大増税という話は聞いたことがない。大増税だけが先行するやり方は国民への背信行為であり、裏切り行為であり、我々の主張が正義、大義だと確信している。…今日集まっている皆さんにもいろいろな考えや判断があると思う。自分は何のために政治家になっているのかに思いをいたして自身で決断をしてもらいたい。」と自らへの同調を促し、「最善の策を追求するが、それが果たせなかったら新党の立ち上げも考えなければならない」と、とうとう新党結成を口にしたという。
となると、その焦点は、造反人数ということになるのだけれど、この小沢グループの会合に出席が確認された民主党衆院議員は次の通り。
小沢一郎(14)、東祥三(5)、山岡賢次(5)、山田正彦(5)、黄川田徹(4)、牧義夫(4)、小泉俊明(3)、小宮山泰子(3)、鈴木克昌(3)、樋高剛(3)、青木愛(2)、太田和美(2)、岡島一正(2)、古賀敬章(2)、階猛(2)、辻恵(2)、中川治(2)、松崎哲久(2)、横山北斗(2)、相原史乃(1)、石井章(1)、石原洋三郎(1)、石森久嗣(1)、大谷啓(1)、大山昌宏(1)、岡本英子(1)、笠原多見子(1)、加藤学(1)、金子健一(1)、川島智太郎(1)、菊池長右エ門(1)、木村剛司(1)、京野公子(1)、熊谷貞俊(1)、黒田雄(1)、菅川洋(1)、瑞慶覧長敏(1)、高松和夫(1)、橘秀徳(1)、玉城デニー(1)、中野渡詔子(1)、萩原仁(1)、橋本勉(1)、畑浩治(1)、福嶋健一郎(1)、水野智彦(1)、三宅雪子(1)、村上史好(1)、柳田和己(1)
(敬称略。丸数字は当選回数)
と、小沢氏本人を入れて49名。54名まであと5人まで迫っている。野田首相は、谷垣総裁と電話会談した際に、「造反者は46人止まり。除名するので、安心してください」と話したと言われているけれど、僅か3人しか違わない。だから、野田首相サイドとしても、個人名ベースで誰が造反する可能性が高いかくらいは十分目算がついているものと思われる。
水面下では、小沢グループと野田首相サイドとの間で熾烈かつ無意味な争いが繰り広げられている。
仮に小沢氏が54名以上造反させて、新党を結成したとしても、次の選挙でどれだけ戻ってこられるか分からない。まぁ、小沢氏自身は戻ってこられるかもしれないけれど、かつての小沢グループなど見る影もなくなっているだろう。
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この記事へのコメント
月光仮面
ちび・むぎ・みみ・はな
今後の活躍の場はないと思うが, 政局家ではある.
彼が全てを失った上で覚悟を決めるなら注意が必要.
小沢氏は嘘付に嫌われているが, 小沢氏も嘘付を,
特に増税屋やヒトデナシを嫌悪しているのは間違いない.
社会主義者で腹に一物ある増税屋首相の言葉と
既に後のない小沢氏の言葉の違いを見間違うと
失うものは大きい.
早い話が, 使えるものなら拒めないのが今の自民党.
谷垣氏にその見分けができるか. そこが問題だ.
sdi
この面子が離脱して新党作って政党としての活動ができるんでしょうか。なによりまともに総選挙を戦えるとは思えない。樋高剛氏(3)は経歴からして小沢一郎氏と心中する覚悟はあるでしょうが他の方々はどうでしょう。
なにしろ、今の選挙制度と政党助成金の仕組みは党中央がコントロールとても強い。各議員が支部長の政党支部の預金口座は始め経理は全て党本部の監督下にあるようなもの(公金の政党助成金の分配先だから当然か)。議員の政党支部の預金口座を凍結する権限をもっていますから兵糧攻めなどたやすい。小沢一郎氏の戦略は衆議院での民主党での過半数割れの可能性をちらつかせて執行部や仙谷氏らの妥協を引き出す腹、と私見ています。相手にそれを見透かされてますね。
引くに引けないチキンレースで「総選挙」という名前の断崖から身を躍らせる可能性もないとは言いません。何しろ「一寸先は闇」ですから。ただし、それは小沢一郎にとっても終わりを意味します。民主党と抱き合い心中ということにな