採決と造反

 
増税法案の会期内採決を巡って、政府・野党と与党が対立している。

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6月15日に3党合意した、社会保障と税の一体改革関連法案について、民主党、自民党とも18日に党内手続きが始まるけれど、党内に反対派を抱える民主党では調整が難航することが指摘されている。

野田首相は17日午後、首相公邸で輿石東幹事長と会談しているけれど、内容は、一体改革関連法案の党内調整や衆院採決などについてだと見られている。

無論、野田首相は21日の採決を指示したと思われるのだけれど、輿石氏自身は、15日、馬淵元国交相らから、「意思決定のプロセスはルールを持ってやってほしい」と手続きを踏むよう申し入れを受け、「党が割れてはいけない。相手に期限を区切られて、突っ込むようなやり方は良くない」と、採決先送りも検討する構えを示している。

また、党内中間派も先送り論が優勢のようで、14日夜、中間派の鹿野前農水相を中心とするグループは都内の中華料理店で会合を開き、「絶対に党を分裂をさせない」、「衆院解散・総選挙をさせない」、「社会保障に先行して消費税増税を行うことは認めない」の3点で一致したそうだし、旧民社党系の田中慶秋副代表も党所属議員の3分の1を超える154人分の署名を提出して、両院議員総会の開催と、修正内容を全議員に報告する場を設けるよう野田首相に求めている。

ただ、田中慶秋副代表の両院議員総会の開催要求にしても、修正内容の説明を要求したというけれど、撤回ではなくて、説明を要求しただけだから、党執行部は説明さえすれば要求を満たしたことになる。

また、鹿野グループが確認したという、3項目にしても、党を分裂させないだの解散させないだのなんて、それは、結果であって、そのために何をすればそれを回避できるのかを示さない限りあまり意味はない。

まぁ、唯一、"社会保障に先行して消費税増税を行うことは認めない"というのがそれに当たるかと思うけれど、3党合意の内容は、社会保障改革については、増税法案成立後1年以内に国民会議で議論して決めることになっていて、増税は最短でも2年後の話。しかも景気条項の数値目標や、実施に当たっては時の政府が判断するという縛りもかかっている。

だから、合意内容からみて、社会保障改革の枠組み決定の前に消費増税が行われることは有り得ない。その辺りを説明されたら、ころっと賛成に回るのではないか。

それ以前に、鹿野氏は農相在任時に、増税法案の閣議決定に賛成していた筈。何故今頃になって反対というのかよく分からない。



そして、党分裂に関しては、かのルーピー氏も気が気でないようだ。

6月15日、鳩山元首相は、野田首相と会談し、衆院採決で造反する可能性を示唆したそうだのだけれど、「採決せず、もっと時間をかけてもらいたい」と、会期を大幅に延長して、党内議論を尽くすよう求めたのに対して、野田首相は首相は「野党との協議の最終段階で会期延長を言える段階ではない」とさらりと躱されている。

そして、17日、ルーピー氏は北海道苫小牧市で記者会見し、「このまま首相が強引に推し進めると党が分裂する危険性は極めて高い。会期延長を大幅にして、党の中で理解を得られる努力をしてほしい」と、採決先送りを求め、「マニフェストを掲げて先頭で戦った人間としての責任の取り方はある。時期尚早だ。…民主党をつくった張本人として、分裂の危機の状況から何とか努力をしていきたい」と述べているけれど、昨年6月の菅氏の辞任表明ペテン発言にころっと引っ掛かった前科がある。

野田首相は、国会会期の延長について、「民主党執行部と対応を協議して、野党に考えを示す段取りになる」と延長方針を示し、8月まで延長する方向で検討を始めている。

だから、党執行部が両院議員総会を開いて、中間派に対して、3党合意内容を"御説明"申し上げて、8月まで会期延長すれば、ルーピー殿は、時間の無い中丁寧に説明の時間を取ってくれたとかなんとかいって、顎の下を撫でられた子猫のように大人しくなるかもしれない。

それに、民自公で3党合意した以上、小沢グループと中間派が多少造反したところで、法案は可決してしまう。中間派にしてみれば、造反したら処分されるだけ。だからやっぱり日和見して、抵抗はしたというポーズだけ見せて、結局賛成に回るか、ギリギリ欠席くらいが関の山ではないかと思う。

こうしてみると、はっきりと採決時に造反すると思われるのは、小沢グループの一部くらい。民主党執行部が造反は20人から30人程度としているのも、全く根拠のないことではないだろう。

それに、採決を先送りともなれば、途端に野党の不信任案ミサイルが飛んでくる。6月17日、自民党の町村氏はフジテレビの番組で「採決しないならば直ちに内閣不信任案だ。政治責任そのものだ」と強調し、同じく自民党の田野瀬良太郎幹事長代行もNHKの番組で「いたずらに先送りするなら検討しなければならない」と指摘。公明党の斉藤幹事長代行も「21日までの採決は3党合意の大前提だ」と述べている。

野田首相にとっては、不信任案が出されることは致命的になる。たとえ否決されても、その後の審議はストップする。それに不信任案を出すということは、参院では問責が出されるということだから、衆院を強行採決で通過させたとしても、参院で否決されてしまう。それでは何の為に苦労して3党合意まで持ってきたのか分からない。

ゆえに、野田首相は何としても、21日の採決に持っていくだろう。その結果、党が割れても仕方ないと、既に腹を括っているかもしれない。

増税法案というボールは民主党に投げ返された。


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