自民党が上げた修正合意のハードル

 
社会保障と税の一体改革を巡る社会保障分野の修正協議が大詰めを迎えてきた。

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6月13日、民主党は自民党の「社会保障制度改革基本法案」に対し修正案を持ってきたのだけれど、民主党の政策が撤回されていないとして、突っぱね、再修正を要求した。

これは、年金や医療について、自民党案が「現行案を基本とする」、というのを原則にしているのに対して、民主党案は「協議・議論して結論を得る」と先送りの内容になっていたから。

自民、および公明の両党は、民主党の最低保障年金制度創設など、かつてマニフェストに掲げた社会保障政策の撤回を求めているのだけれど、それを受け入れた文章ではないことがその理由。自民党は、民主党の修正案について、「年金などの社会保障は現行制度を基本にするとした基本法案の理念が抜け落ちており、このままでは受け入れられない」とし、「最低保障年金などを盛り込んで政府が閣議決定した社会保障と税の一体改革に関する大綱のみに関わらず、幅広い観点に立って」という文言を加え、現行制度を踏まえた上で必要に応じて、『社会保障制度改革国民会議』で議論し結論を得るという内容に修正するよう求めている。

また、公明党も大綱を取り下げないかぎり合意しない考えを重ねて示している。

普通、明日、明後日に合意しなければいけないような切羽詰まった状況では、相手の要求を丸飲みすることは無論のこと、更にそれに熨斗をつけて交渉に臨むくらいでないと纏まる筈がない。そこまで譲歩してくれるのか、と相手が驚くくらい妥協しないと難しい。それを、「協議・議論して結論を得る」なんて、自分に都合のいい事を言ってもそんなの通るわけがない。それだったら、自民の方も、増税法案について、"協議・議論して結論を得る"という修正要求をしても良いことになる。

ただ、自民は元々、民主のマニフェスト撤回までは要求してなかったのだけれど、ここにきて要求を釣り上げざるを得ない状況になっているようだ。というのも、党内に谷垣氏に対して、「民主に譲り過ぎている」と批判する勢力が少なからずおり、それに配慮しなければ、谷垣氏自身が持たないという事情のようだ。

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6月13日、谷垣氏は、党の「影の内閣」の会合で「我々は変な妥協はできない。自民党案のどこがのめないのか、具体的に持ってきてほしい」と述べているのだけれど、これは民主党にとって痛恨の一撃になり得る。

なぜなら、自民党案は現行案を基本としているから。ゆえに、自民党案の何処がいけないのか具体的に指摘できるためには、民主党案が現行制度より、部分的にでも優れている所がないといけない。

ところが、民主党の案は年金改革にしても、財源が曖昧だと指摘を受けているし、後期高齢者医療制度の廃止にしても、廃止した場合の国あるいは都道府県の財政負担が増える部分についても明確な対策を示していない。つまり、自民党案は駄目だと口ではいっていても、それに代わるより良い対案を示したわけじゃない。だから、谷垣氏のいう具体的にどこが悪いのかと聞かれても答えられない。

だけど民主党には、それを検討する時間は残されていない。

6月13日、自民党の石原幹事長と公明党の井上幹事長ら両党の幹部が会談し、修正協議について、合意が得られない場合には15日で協議を打ち切る方針で一致している。つまり15日までに合意できなければ、可決の見込みはなくなるということ。

このような状態で、採決にまで本気で持っていく積りがあるのなら、修正協議なんかより遥かに多い時間を党内の意見調整に費やして、自民党案丸飲みでも止む無しというくらいにまで、党内を纏めることに汗を流さなくちゃいけない。

だけど、野田首相はそれを輿石氏に丸投げして、修正協議ばかり見ている。しかも、その肝心の民主党内は、小沢グループだけでなく、中間派にまで反対の声が広がり、両院議員総会の開催を求める署名集めを行う動きまである。

だけど、6月14日、前原政調会長は社会保障・税一体改革関連法案の修正協議に関する党内手続きについて、両院議員総会や両院懇談会は政策決定を行う場ではないと、両院議員総会などの開催による決着を退ける発言をしているから、民主党執行部はあくまでも強硬手段にでる構え。"民主"とは名ばかりの集団。

社会保障と税の一体改革と言いながら、増税法案を通すために、自らのマニフェストを投げ捨て、社会保障法案の協議すら棚上げして先送りするという態度は、野党の要求を飲んだからだとはいえ、誰がどうみても"増税"しかする気がないとしか思えない。

流石にこれで採決というのは無茶だと思うけれど、それでも強引に押し切るか。野田政権も進退窮まった。


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この記事へのコメント

  • sdi

    ここで決裂、となると「話合い解散」の成立は困難ですね。衆議院解散は首相の専権事項。
    だれが何を言おうと喚こうと脅そうとすかそうと、首相が首を縦に振らない限り解散はありえません。首相が拒否し続けた場合、衆議院での内閣不信任可決しかありません。それを目指した場合どうなるか、我々はちょうど1年前に目の当たりにしたはずです。現に早速「野田首相と小沢一郎の間をとりもつ鳩山氏」なんて憶測が流れています。「鳩山チャンス」「小沢ターン」再びなんて御免です。同じシナリオの茶番を二度も見せてもらう必要はない。
    2015年08月10日 15:25

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