5月8日からスタートした、社会保障と税の一体改革関連法案の民主、自民、公明3党の修正協議が難航している。
修正協議は実務者協議メンバーを社会保障と税制の2グループに分け、修正内容を検討しているのだけれど、8日から行っているのは社会保障の分野で、11日から税制分野の協議を行うことになっている。
ところが、8日から始まった、社会保障分野の協議では、自民党は、「最低保障年金を含む新年金制度の創設」と「後期高齢者医療制度の廃止」の撤回を含めた自民党案の「丸飲み」を要求したのだけれど、民主党はこれを拒否。10日の夜に再協議を行ったものの、これも纏まらず、11日に持越しとなった。
6月9日、岡田副首相は修正協議について「全体の絵が見えてくれば、自民党対案の丸のみではないと分かるのではないか」と、丸飲みはしないと示唆する発言をしているし、同じく9日夜、玄葉外相も、栃木県足利市での講演で、修正協議について「譲り合って良いものを仕上げ、引き分けでまとめるのでいい」と述べ、これも丸飲みを否定している。
更に10日には、野田首相が、都内で開かれた「日本アカデメイア」の会合での講演で、「お互いが『旗を下ろせ』とか言うと議論は進まない。どういう形で現実的に制度改正ができるかに心を砕きながら、決められる政治を示せればいい」と述べ、民主、自民両党とも譲歩が必要と述べているから、どうやら、丸飲みする気はないようだ。
ただ、"『旗を下ろせ』とか言うと議論は進まない"という指摘は、一般論としてはその通りだけれど、それをいうのなら、消費税増税なんか、その旗すら出していなかった。後から自分勝手に旗を出しておいて、旗を下ろせでは議論は進まない、というのは筋が通らない。それが罷りとおるのであれば、野党だって、後出しでいくらでも旗を出していいことになる。なんとなれば、民主党が絶対飲めないような"旗"を後出しで何本も出しておいて、お互い妥協しましょうと吹っかけることだってやろうと思えばできる。
それを考えれば、自民が「最低保障年金の旗」と「後期高齢者医療制度の廃止の旗」を下ろせというのはまだ優しい方。それですら、丸飲みでないだの、引き分けでいいだの、譲歩が必要だのと言うこと自体、民主党の統率力の無さを証明している。
今のところ、民主党は、最低保障年金や後期高齢者医療制度の廃止の撤回には応じず、その代わり、自民党が提案する「社会保障制度改革国民会議」での議論に委ね、棚上げする方針でいるけれど、今度はこれに公明党が反対している。
公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は、NHK番組で、斉藤氏は新年金制度に関し「関連法案は出さないと(民主党が)言わなければ(国民会議で)議論に入るのは間違っている。国民会議に送るのは長期にわたる大きな問題だけにしないと消費税先行になりかねない」と反対の姿勢を示しているから、単に譲歩を言っても、2者ではなくて、3者間での合意は簡単じゃない。
この調子では、税制分野での協議もどうなるか分からない。税制分野については、自民党は、政府が導入を検討している「給付付き税額控除」の代わりに生活必需品などの軽減税率適用や、景気条項の数値目標の削除及び、増税の実施を最終判断を半年前に行うことを要求すると見られている。
特に、景気目標の数値目標削除については、民主党の税調で素案を纏める際に散々揉めた部分であるから、これを自民の要求通りに削除すると、民主党内の増税反対派を刺激することになる。つまり民主党の分裂を誘因する要求になる。
その反面、数値目標を削除することで、タガが外れてしまい、簡単に増税できてしまうとリスクを負うことを意味する。
この辺りをどう捉えるべきか。
3月15日のエントリー「消費税増税法案のゆくえ」で筆者は、野田政権が続く限りは、「数値目標を明記した景気弾力条項」が望ましく、逆に、麻生政権のような経済が分かる政権になるのであれば、「曖昧な景気弾力条項」の方が後々使い勝手がいいと述べたことがある。
実際、自民党の税調では、景気条項に関しては、税率引き上げの半年前までに「政権が経済状況などを総合的に判断し、増税の実施を最終判断する」との基本姿勢で望み、法案に「名目3%、実質2%」の成長率達成を増税する際の努力目標として盛り込んだ部分については「増税の実施を縛ることになる」などの批判が集中して削除を求めることで一致したそうだから、やはり、フリーハンドでいたいのだろう。
ただ、そうは言っても、これは増税実施の半年前に、野田政権のように財務省言いなりの政権であった場合には、努力目標の削除は、裏目に働くことになるから、中々兼ね合いが難しい。
もしかしたら、話し合い解散をも想定した、"賭け"なのかもしれないけれど、結構綱渡りではある。
輿石幹事長を中心とした民主執行部は、未だに採決の先送りを狙っているようだけれど、これについても自民は手を打ってきた。それが、不信任案提出。
6月7日、自民党の石原幹事長はBS番組で、今月21日の会期末までに、社会保障と税の一体改革関連法案をについて「採決できなければ問責・不信任だ。そうなれば首相は総辞職するのではないか」と、衆院に内閣不信任決議案、参院に野田佳彦首相の問責決議案を提出する意向を示している。
これは勿論、民主党の小沢グル―プを中心とした増税に反対する議員達に、増税に賛成なのか反対なのかの"踏み絵"を迫ることになる。小沢グループはあれほど増税反対を唱えた手前、否決に回るのであれば、一気に信頼を失うことになるし、賛成できなくとも欠席であっても、不信任案が成立する可能性がある。
どちらに転んでも、民主党の分裂を促すことは確実。
自民にとっては、修正合意なんて、出来なくても別に懐は痛まない。合意できないまま、採決になると反対票を投じるだけだし、採決を先送りするなら、不信任を出すだけ。だから、自民は、こちらは修正合意しなくたっていいんだよと、高飛車に構えて、踏ん反り返っていたっていいのだけれど、あまり露骨にそれをやると、またぞろマスコミが五月蠅いから、表向きは"紳士"に振る舞いつつ、民主党を追いつめていくのではないかと思う。
野田政権の生き残りの道は、最早、修正合意しか残されていない。あるいは、党首会談による一発大逆転の大連立の目もなくはないけれど、こればかりはどうなるか分からない。

この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
流石に国民に人気がないのがブレーキになる.
正にルーピーの行動が引金になるかも知れない.
それ以外なら解散はまずしないだろう.
何故なら, 既に嘘付達の正体は明らかだし,
左翼工作勢力にとってはこのままで良いから.