沖の鳥島開発と陸地化プロジェクト

 
昨日のエントリーの続きです。

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1.満潮時に水没していなければ「島」

中国の覇権主義を牽制する意味では、EEZに対する中国の"俺様ルール"を止めさせ、国際ルールを尊守させることが大事であるのはいうまでもないのだけれど、それ以前に、自国にEEZがなければ、牽制も何もあったものじゃない。

日本の国土は約38万平方キロで世界61位だけれど、領海とEEZの広さとなると、約447万平方キロで世界6位になる。しかも、海底資源の開発権については先日、大陸棚の拡張申請が国連に認められ、国土の8割にあたる約31万平方キロの海域が拡大したから、合計で約478万平方キロの開発可能な海域を持っていることになる。

その国連お墨付きの大陸棚拡大について、案の定、中国が噛みついている。5月16日、中国外務省の洪磊副報道局長は、沖ノ鳥島が日本の大陸棚の基点として、国連から認められたと日本政府が主張しているのは「根拠がない」とし、「多くの国が日本の主張に異議を唱えている」とする談話を発表した

中国がいう多くの国とは、一体、どこの"惑星"の国のことなのか聞いてみたいところだけれど、今のところ、沖ノ鳥島は島ではないと意義を申し立てているのは、中国と韓国の2ヶ国。

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国連海洋法条約の121条では、「島」 について次の様に定義されている。
第121条 第1項:島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう。

この定義に従えば、満潮時に水面上に顔を出していれば、一応「島」ということになる。

沖ノ鳥島は、フィリピン海プレートのほぼ中央に位置し、孤立して形成された南北約1.7km、東西約4.5km、周囲約11kmほどの珊瑚礁の島。干潮時には環礁の大部分が海面上に姿を見せるのだけれど、満潮になると、礁池内の東小島と北小島の2つの島を残し、大部分は水面下に沈んでしまう。しかも満潮時でも沈まない東小島と北小島にしても、海面上に顔を出すのは、ほんの少しであり、北小島は70cm程度、東小島に至っては6cmしか顔を出さないそうだ。

そこで、1988年から日本政府は、これらの島の保護のため、島の周りを約50mの円形のコンクリートで固め、さらにその周囲に鉄製の消波ブロックを設置するという護岸工事をしている。

更に、東小島については、チタン製の蓋をつけているのだけれど、これは、東小島が鼓のような形をした縦に長い岩で、崩れやすいからで、なんとかして島を守ろうと苦心している。現在、年に2回、国が、点検及び補修のため沖ノ鳥島を訪れるそうだ。

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2.島の経済活動はあるほうが望ましい

こうして、なんとか島であることを維持したとしても、沖ノ鳥島を起点としたEEZを保持するためには、そこでの経済活動があったほうが望ましい。実は、国連海洋法条約の121条の第3項には、次のような記載がある。
第121条 第3項:人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

この定義によれば、人間が居住するか独自の経済活動が出来なければ、EEZは持てないということになる。中国はこの第3項を引き合いにして、沖ノ鳥島は"岩"ということにしたいようだ。

実際、5月19日、中国外交部の馬朝旭報道官は、定例会見で「国連海洋法条約第121条第3項は「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域(EEZ)又は大陸棚を有しない」と明確に定めている。沖ノ鳥岩は満潮時に水面上にある面積が10平方メートル未満で、同条約の定める岩であることは明らかであり、EEZまたは大陸棚を有しない。人工施設の建造によってその法的地位を変えることはできない。日本が沖ノ鳥岩を基点に、広面積の管轄海域を主張することは国際法に合致せず、国際社会全体の利益を深刻に損なうものでもあり、明らかに法的に成り立たない。」とコメントしている。

この件については、1999年4月16日の衆議院建設委員会の場で指摘と政府見解の回答がある。次に引用する。
○公明党・長内順一委員 
 「…次に、もう一つの、海岸法の中にあります沖ノ鳥島についてお伺いをさせていただきたいと思います。まず、沖ノ鳥島につきましては、小さな岩が二つ出ていて、しかしながら、これによって、あの四畳半の岩一つで四十万キロ平方メートルという大変広大な地域の二百海里の経済的水域が確保されている、そんなふうに聞いております。

 ところが、これは、時間がありませんからどんどん行っちゃいますけれども、一九八八年の一月二十二日付の読売新聞なんですが、「沖ノ鳥島補強しても経済水域保てない」と。このころ、多分建設省で、沖ノ鳥島が崩れかかっていて、これを補強に入ったと思うんですが、これに対して、海の中に没しかけている沖ノ鳥島を日本が土木工事で補強しても、同島の周囲二百海里を排他的経済水域と主張する法的根拠にはならないと、アメリカのハワイ大学のジョン・バン・ダイク教授は二十一日付のニューヨーク・タイムズ紙に投書し、日本には同水域設定の権利がないと強調したと。

同教授は、日本も調印している一九八二年の国連海洋法条約百二十一条は、人間の居住あるいは経済生活を維持できないような岩は排他的経済水域を保つことができないと規定していると指摘をし、キングサイズのベッド程度の大きさしかない岩二つから成る同島はこの規定に当てはまると述べている、こんなふうに述べているわけであります。

 そこで、この百二十一条がどんなふうになっているかということでちょっと調べてみましたら、確かに百二十一条の三番目に、人間の居住または独自の経済生活を維持することのできない岩というのは二百海里の排他的経済水域または大陸棚を有しない、こういう一項目があるわけですね。したがいまして、私は、この沖ノ鳥島が日本の領土、そして二百海里の範囲内というふうに確信をしているんですけれども、こういうふうに沖ノ鳥島が日本の領土として、そして、しかも二百海里の排他的経済水域の該当の岩であるというふうな条件というのはどんなふうになっているんでしょうか、外務省、お願いいたしたいと思います。」

○大島正太郎・外務省経済局長(政府委員)
 「お答え申し上げます。 もちろん、沖ノ鳥島は我が国の領土でございます。国連海洋法条約との関連で今先生の御指摘の点を御説明させていただきますと、ちょっと先生もう既に引用された条文、繰り返しになりますけれども、引用させていただきます。

 まず、そもそもでございますけれども、国連海洋法条約第百二十一条では、「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」、これを島と定義して、島も原則として排他的経済水域及び大陸棚を有することを定めております。したがって、沖ノ鳥島は、このような条件を満たす島でございます。海洋法上の島だ、岩ではなく島だと理解しております。

 他方、今先生も引用されました岩に関する項目というのが同じ条文にございまして、三項でございますが、人間の居住または独自の経済生活を維持することができない岩は排他的経済水域または大陸棚を有しないと規定しております。しかし、この規定には岩とは何かという定義がございません。そして、そのような理由から、その内容が明確ではございませんので、また、各国の国家の実行等を見ても、現時点において、この規定によって特定の地形が排他的経済水域または大陸棚を有しないとする根拠はないということでございます。したがって、我が国としては、沖ノ鳥島は国連海洋法条約のもとでも島だということで、したがって排他的経済水域を有することができると考えております。」

と、121条第3項には岩の定義が書いてない。そして他国の現状を見ても、第3項には根拠がないから、沖ノ鳥島は島だ、というちょっと強引にも見えなくもない解釈をしている。

尤も、こちらのサイトで指摘されているように、沖ノ鳥島を"岩"だと言い張る中国が、自国の領土だと主張し、先日もフィリピンと睨みあいを繰り広げた、スカーボロー礁だって、海面上に顔を出すのはごく僅かだし、中国が実効支配している南沙諸島の永暑礁に至っては、満潮時には水没する。

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3.沖ノ鳥島陸地化プロジェクト

まぁ、今回の大陸棚拡大は、沖ノ鳥島は島だと国際的に主張する後押しになるとは思うけれど、、それでも、満潮時に海面上に顔を出すのが1メートルに満たず、特定の経済活動もないというのでは、やはり心許ない。

そのため、一部には、沖ノ鳥島の有効利用について、即効性のある研究及び、中長期的計画を検討するため、調査が行われている。

日本財団は、2004年、2005年の2回に渡って、灯台の設置、珊瑚等による地形形成、海洋温度差発電などをテーマに調査を行っている。

この中で、珊瑚等による地形形成というのは、珊瑚や有孔虫を培養して砂浜を自然造成してゆくというプランなのだけれど、東小島で採取した堆積物は珊瑚の破片ばかりで、有孔虫はほとんど見られなかったことから、日本財団は珊瑚群集を増やすことでの陸地化推進を提案している。具体的な構想としては、次のとおり。
1.リーフ上の潮汐流など海水の流動を、年間を通して詳細に観測して、静穏化と、できるだけリーフに海水の滞留を促す人工提を設置する。
2.海水の循環の中心付近に、珊瑚の卵・幼生の滞留を促す「育成礁」を数十個設置する。育成礁の一部には電着技術を用いて珊瑚の生育を助長する。電源には太陽電池を用いる。珊瑚礁域の砂浜はサンゴの破片や魚類のブダイが珊瑚をかじった破片によって珊瑚砂が供給される。礁嶺の低いところや狭いところは人工リーフで補強し、静穏域を造成する。静穏域ではサンゴの増殖礁や電着構造物でサンゴを増やして砂をつくる。また人工リーフを設置して周囲に砂を集める。砂は礁嶺より外に出にくくなり、堆積作用は加速し、やがて陸地化が進む。
3.礁池内にできる珊瑚砂を沖合に流出させず、リーフ上に堆積させるため、波の屈折や回折を利用して砂を貯める。このためには地形をわずかに改変することも必要になる。

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プランとしては環境保護というか環境改善に繋がるし良いと思われるのだけど、珊瑚を育成するだけに、1年や2年では到底できるものはではなく、10年20年どころか、100年から数百年単位で掛かるものだという。これでは、地球環境にはよいかもしれないけれど、領土保全という意味ではあまり有効ではないかもしれない。

それに対して、海洋温度差発電の方は、実現可能性が高いようだ。日本財団の視察報告によれば、沖ノ鳥島海域の海水温度分布では、温度差が約25℃あり、海洋温度差発電の設置には極めて好条件であり、1000KWから3000KW級の発電を行うだけの面積も十分にあるという。しかも、沖ノ鳥島を囲む環礁は水深2m程なのだけれど、その外はいきなり水深200mもの深さになっていて、深海の水を汲み上げる海洋温度差発電にとって、この地形は最適。

更に、取水管内部などに固着して、発電を阻害する海洋汚損生物が極めて少なく、まるで海洋温度差発電をしてくださいと言わんばかり。また、海洋温度差発電を用いた漁場造成も出来ると報告されている。

このように、沖ノ鳥島には開発しやすい環境が整っている。石原都知事が尖閣諸島を買うとしただけで10億も寄付が集まる事実がある。沖ノ鳥島の価値を国民に理解してもらうことが、沖ノ鳥島開発の鍵になるだろう。

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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    沖の鳥島の護岸工事どんどんやるべし.
    半島の経済援助はどんどんと削るべし.
    2015年08月10日 15:25
  • マングローブなどの植物を植えるのはどうでしょう?
    マングローブの種が流れ着いて自然に育ったというシナリオでプロジェクト。。。
    2015年08月10日 15:25

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