5月31日、民主党の輿石幹事長は、党社会保障・税一体改革推進会議で、消費増税関連法案の修正協議を全党に呼びかける方針を示した。
元々、自公両党との修正協議を行う予定であったのを、いきなり全党との修正協議なんて、纏まる訳がない。誰が見たって、法案成立先送りであることは見え見え。
先送りの目論見を感じ取った自民党は、修正協議に応じる条件として、「法案の採決の前提となる中央公聴会の日程を明示すること」「輿石幹事長が申し入れること」「強引な国会運営をしないこと」の3点を挙げた。
法案採決の日程の明示は輿石幹事長が反対している。しかも、その輿石幹事長が修正協議の申し入れをすることが条件になっているから、野田首相は、今国会での法案採決をやりたいのなら、輿石幹事長を説き伏せる必要がある。
6月1日午後、野田首相は、輿石幹事長と2人だけで約1時間協議し、自民党との修正協議の具体化を急ぐよう輿石氏に指示したようなのだけれど、会談後、輿石幹事長は自民党の石原伸晃幹事長と電話で会談し、修正協議について話し合ったものの、結論は出ず仕舞い。また、公明党は修正協議に応じない方針を民主党に伝えている。
だけど、一旦、修正協議が行われたら、一気に法案成立に向けて動き出す可能性はある。
6月1日、BS朝日の番組収録で、仙谷政調会長代行は、修正協議について「法案をどう実現するのか道筋が付けば、丸のみと言われようと社会保障のための財政規律を確立するという点で、同じ立場に立てる可能性がある」と、野党案丸のみだって有り得るとの認識を示している。
まぁ、民主が本当に丸飲みする気があるのかどうか分からないけれど、丸飲みといった以上、民主に主導権はない。自民或いは公明の要求を飲めるか飲めないかの二者択一になる。
この時点は、自民は法案の中身を如何様にでも弄れることになるから、それこそ、景気条項なり、所得税改正法附則第104条第2項に「施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし…」とあるように、増税の実施時期まで別の法律が必要になるような修正を要求しても良いことになる。
ここまでやれれば、増税法案は"骨抜き"になってしまう。
自民は、増税法案の修正協議について、3条件を挙げているけれど、それ以前から「小沢切り」と、「参院で問責決議を受けた2閣僚の交代」と「最低保障年金撤回」及び「後期高齢者医療制度廃止」をも要求している。だから、野田政権が、増税法案の修正協議というテープを切れたとしても、残りの要求を無視したまま協力を取り付けようというのは、虫が良すぎる。
それに、仮に協力が得られたとしても、自公から法案そのものを"骨抜き"にする要求が突き付けられる可能性だってある。
「再生エネルギー法修正案に仕組まれた罠」のエントリーで述べたけれど、再エネ法案には、自公の修正要求によって、3年後の見直しという仕込みが施されていて、後から骨抜きにすることができるようになっている。
だから、今回の増税法案にしても、同じように自公が骨抜き法案にする修正要求をしたとしても少しもおかしくない。その意味では、民主党、或いは財務省含めて、絶対飲めないと思われる景気条項よりは、増税の実施については別途国会で決議することなどという具合に後から何とでもなるような修正要求をする可能性のほうが高いかもしれない。
この辺りを考えると、自民は、増税法案の成立という"名"だけを民主に背負わせ、その中身については自分達が決めるという風に、"名を捨て実を取る"を取る戦略を描いているように見えなくもない。デフレ期の増税という"悪名"を民主になすりつけ、実権は自分達が握るという策。
その意味では、法案成立に前のめりで、なおかつ、自公にすり寄る野田政権の内に決着させたい思惑があるように思う。
そう考えると、自民は増税"骨抜き"法案成立の為に、その条件を微妙に調整して、野田首相に今国会での採決をさせるように仕掛けるのではないか。
自民党は法案成立への協力について、これまで述べた条件以外に、衆院解散の確約も挙げていたのだけれど、6月1日、自民党の石原幹事長はTBS番組で、衆院解散の確約については、「野田佳彦首相は絶対しないと思う。解散すると首相が言った段階で力を失ってしまう。絶対に言わない。話し合い解散はなく、阿吽の呼吸しかない」と述べ、今国会中の法案採決で合意できれば、解散時期の確約を得ることにこだわらないとしている。
衆院解散時期の確約を条件にすると、解散だけはなんとしても避けたい民主党内の反発が強くなり、結果として、法案採決が先送りになってしまいかねない。採決先送りは、輿石氏も小沢氏も願ったり叶ったりなのだから、かえって民主党の融和に手を貸すことになる。だから、解散時期確約は求めませんよ、と飴をぶら下げたと見る。
それに、この機会に民主党自身の手で小沢氏を排除させて、民主党を分裂に追い込み、あわよくば民主党を衆院過半数割れにまで持っていければ、参院だけでなく、衆院での主導権を握ることだって視野に入ってくる。
とはいえ、まだ修正協議が始まってもいないから、法案の中身がどうなるか分からないけれど、法案成立のために前に進めば、法案そのものが骨抜きになるかもしれず、また今国会での成立は諦めて後ろに下がれば、小沢グループの復権に繋がる。
まさに前門の狼、後門の虎。野田首相はどちらに進むのか。

この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
そして客観的な判断条件は入れたくない.
この辺は腹の探り合いになるだろうが,
陰謀家は増税氏の方が谷垣氏より何倍も上手.
総裁周辺がしっかりしていないと,
自公案丸飲みで消費税増となりかねない.
国民は結果論でしか見ない.
公務員給与引き上げ法案も自公案,
消費税増も自公案となると嘘付党の選挙
キャンペーンがどうなるか耳に聞こゆる様.
しかし, 原理主義で頭脳固着の自民執行部は
重要な事, つまり, 国民の意識調査をして
いないのではないか. 或は, 実施しても
原理主義の故に見逃しているのではないか.
大多数の国民は既に十分に保守に回帰している.
だから, 自民党が田母神氏と和解すれば
とれる方策は圧倒的に多くなる.
頭の良い人は常に理性で判断する.
理性が自分を裏切っているにも関わらず.
箕蛙
政治家の汚職は恐喝マガイと国政調査権は議員個人から国会持ち
テーマを決めた各種世論調査は目的以外排除‥想定外の結論推論は認めない円安誘導策?
‥
外国人献金で?原発爆破‥堵カーンと一髪やってミヨウヨ?
尖閣当て逃げで戦線布告を判らん不利はそのまま。
旧河本派狙いの交通事故多数は被害妄想?
蓋移転の増税と決意表明‥