有機ELとミストディスプレイ

 
今日は、家電TVの話を…

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1.薄型化と大型化を目指す液晶ディスプレイ

苦戦を続ける国内家電メーカー。その原因の一つにテレビの過当ともいえる価格競争についていけなくなったことがあると言われている。

特に液晶ディスプレイの価格低下は凄まじい。

ネット通販大手である価格ドットコムの「液晶テレビ」カテゴリの売れ筋価格帯の推移を見ると、2010年12月では、6万円未満の製品は40%、9万円未満の製品が63%程度であったのだけれど、2011年3月には、6万円未満の製品が50%、9万円未満の製品が77%を超えている。つまり、売れ筋の液晶テレビはそのほとんどが10万円以下という状態にまでなっている。

アジア太平洋イノベーション・マネジメント・センター長の中田行彦氏は、テレビ事業で国内企業が海外勢に負けた理由について「投資戦略の誤り」と「自前主義への拘り」にあり、「顧客志向」の技術開発を怠り、「グローバル化」を進めなかったことにあるという。

特に激変する市場においては、顧客の志向や選択基準を的確に捉えることは大切なのだけれど、それは次世代テレビの開発にも密接に関わってくる。

だけど、次世代テレビ市場は混沌としている。韓国のサムスンとLGは、今年1月のアメリカで行われた消費者エレクトロニクスショーで、55インチの有機ELディスプレイを用いたテレビを発表している。

有機ELテレビは、壁に掛けられる程度の薄さと軽さが特長で、次世代の薄型テレビの本命と言われているそうなのだけれど、LGの有機ELの厚さはわずか5mmしかなく、見た目は殆ど板。

これに対して、国内メーカーは大型液晶テレビの市場を開拓することで巻き返しを図る考えのようだ。シャープの片山幹雄社長は、韓国メーカーやパナソニックが相次いで製品化する有機ELテレビについて、「市場投入の予定はない」と断言し、80型液晶テレビなどの大型液晶に全力投球する考えを示している。

シャープによると、2011年度の北米での60型以上のテレビ販売台数は、前年度比5倍のペースで伸びていて、110万台の市場が見込まれているという。 片山社長は「大型テレビによって一定の市場が作れた」を自信を見せているけれど、筆者は、大型ディスプレイは家が広い、外国でこそウケるかもしれないけれど、日本の住宅事情では、あまりに大きすぎるものは厳しいのではないかと思う。

まぁ、大きなテレビをリビングに置けなくても壁掛けならできるじゃないかという意見もあるとは思うけれど、例えば壁一面をテレビに出来るようになったとしても、それを見るためにはある程度の離れる必要がある。それを考えると狭い日本の家では限界がある。やはりもっとイノベーションがかかったテレビ、次世代ではなくて"新世代"のディスプレイが必要なのではないか。

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2.空中ディスプレイとミストディスプレイ

よくSFなんかだと、空中にディスプレイを浮かんでいるシーンがあるけれど、ああした空中ディスプレイが開発されればテレビ市場が塗り替わる可能性があると思う。

実は、その萌芽となる技術は既にある。例えば、東北大学の大学院工学研究科電子工学の内田研究室は、透明な光学的機能フィルムを開発し、それをアクリル板に貼ることで、ディスプレイとなる「空中ディスプレイ」を発表している。画像はアクリル板の下からの投影することになるのだけれど、投影画像は特定の方向のみに表示することができ、光の利用効率が高く、明るい表示が可能になるという。

また、株式会社アスカネットは、2枚のガラスを組み合わせた「AIP(エアリアルイメージングパネル)」という特殊なパネルを開発し、PCなどのディスプレイが発する光をAIPに通過させ、反射角を利用して虚像を空中に浮かびあがらせる「空中結像サイネージ」技術を開発している。

ただ、空中ディスプレイといっても、これらの技術は、媒体となるアクリル板なりガラス板が必要だったり、元映像となる既存ディスプレイが必要にだったりするから、厳密にいえば、まだSFの世界には一歩足りない。やはり、何の仕掛けもなく、何もないところに映像が浮かびあがってこそ新世代のディスプレイではないかと思う。果たしてそんなものがあるのか。

虹は空気中の水分が太陽光を屈折・反射することで出来上がるけれど、同じ原理を使って、空気中の水分を使って画像を浮かび上がらせることは可能ではないかと思う。



東京工芸大学教授の久米祐一郎氏は、水のミスト流をスリットノズルから噴出させ、その表裏両面にエアカーテンで挟む3重スリット構造の空中ディスプレイの映像を投影させることに成功している。

これなんかは、水をスクリーンとして使うだけで、フィルムも要らなければAIPパネルも必要ない。もしも、映像投影用のプロジェクタとミストを発生させるスリットノズルを一体化して小型化すれば、携帯ディスプレイになる。

PowerTrekkと微生物太陽電池」のエントリーで、「PowerTrekk」という燃料電池について触れたことがあるけれど、あれなんかは、発電しながら水を発生するから、PowerTrekkとこのミストに映像を投影する装置を組み合わせれば、ミスト流に使う水と電源の問題も一度に解決してしまう。

今は、液晶ディスプレイの大型化や薄型化に血道を上げているテレビ業界だけれども、もしも、ミスト流に映像を投影する形の"ディスプレイがない"ディスプレイが開発・量産化されれば、黒電話が携帯に一気に変わったように、今の液晶ディスプレイが"ミスト"ディスプレイへと一気に変わる時代がくるかもしれない。

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この記事へのコメント

  • 白なまず

    次世代ディスプレイのヒントはやはりアニメの中にあると思います。三次元立体表示とかはちょっと古い感じで、脳内へ直接イメージが表示される(攻殻機動隊のネットでのやり取りなど)形式が最終形態のように思われます。ヘッドマウントディスプレイとか潜航眼鏡とかが普通の眼鏡サイズにする事が最初でしょうね。これが出来ればあらゆるディスプレイ需要を飲み込んで、車やバイク、飛行機、、、表示部分はハードとして無くなるかもしれない。カーナビなんかも必要なくなる。携帯電話もほぼ無しになるでしょうね。それから、視力が弱い人の補強とか、軍事機器とか、最終的には盲人の目の開発につながりそうです。そして、産業としての生産地(国)の問題ですが、人体への影響や高度な医療とか科学技術力が背景に無い製品を誰が使うか、それでも、怪しい製品を購入する経済問題は存在するでしょうから、価格が永遠のテーマであるのは変わらないのでしょうが、、、競争力がなくなた市場は捨て去る道を探らないと難しいですね。まあ、原発技術の様に最後のサプライヤーになるまで粘るのも道でしょうが。
    2015年08月10日 15:24

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