オスプレイ陸揚げ

 
7月23日、米軍岩国基地にオスプレイ12機が陸揚げされた。

画像


オスプレイは、岩国での試験飛行を経た後、10月初旬から沖縄の普天間での本格運用を行なう予定。アメリカ側は、オスプレイの安全確保の為、日本に全面協力する方針のようだ。

7月21日、カーター米国防副長官は「安全の問題に日本の人々が懸念を抱いていることは全面的に理解している。…日程が重要なのではない。安全性が重要だ」として、オスプレイの飛行記録や事故に関する情報をすべて日本側に提供すると語っている。

オスプレイの導入に当たっては、岩国市などでは、"市民団体"による反対集会とか開かれたりしているのだけれど、その反対理由は、墜落事故を何度もおこしている欠陥品だからというもの。

だけど、墜落事故だけを取り上げるのは、空を飛ぶものならなんだって起こり得る。それこそ市民が乗る民間航空機だって墜落するときは墜落する。

沖縄に配備される、海兵隊仕様のMV-22Bオスプレイの飛行時間10万時間あたりの事故率をみると、現在、沖縄のアメリカ軍が運用している、CH-53Dシースタリオンの4.51や、CH-53Eスーパースタリオンの2.35より低く、 CH-46シーナイト の1.11より高い、1.93。海兵隊全体では2.45だから、平均以下。

もう色んなところで指摘されているけれど、オスプレイは、海兵隊仕様のMV22と空軍仕様のCV22とでは、事故率が異なる。海兵隊仕様の事故率は先程述べたように1.93だけれど、空軍仕様だと10万時間あたり13.47になる。

だけど、MV22もCV22も機体構造に大きな差があるわけではなく、9割方は同じだという。それで、こんなに事故率が違うということは、機体が云々というよりは、運用の差が原因である可能性が高いとみるべきだろう。

実際、海兵隊のMV22は人員・物資輸送が主目的であり、空軍のCV22は特殊作戦に用いるという違いがある。勿論、沖縄に配備されるのは海兵隊型のMV22。だから今回のオスプレイにしても、海兵隊の運用をする限りでは、従来のヘリと同程度以下の安全性だと見ていいように思う。

それに、ヘリではないけれど、7月22日に、三沢基地に配備されている、アメリカのF16が北海道の北東約900キロの海上に墜落する事故が起きている。

単純に安全性だけを問題にするのなら、こちらも岩国と同じくらいマスコミも取り上げなければいけないと思うのだけれど、オスプレイ反対の声だけが異常に報道されているように見える。

画像


では、オスプレイであるが故に反対する理由があるのか。

在日米軍の動向を監視している「リムピース」なる市民団体があるのだけれど、そのリムピースの編集委員の篠崎正人氏は「航続距離の長いオスプレイの運用で作戦範囲が無制限に広がる可能性がある。平和に暮らしたいという私たちの願いと真っ向から対立する」と述べている。

これは実に不思議なコメントで、本当に平和に暮らしたいのであれば、抑止力がしっかり機能しなければならない。オスプレイは現行機と比べ、スピードは2倍、積載量は3倍、航続距離は4倍あって、作戦範囲は格段に広がる。それは同時に抑止が効く範囲が広がることを意味する。

7月23日、藤村官房長官は記者会見でオスプレイの沖縄配備について「アジア太平洋地域での抑止力は格段に向上すると受けとめている」と抑止力の向上を述べている。

だから、平和に暮らしたいらしい「リムピース」は、オスプレイ配備を歓迎すべきであって、反対するのは訳が分からない。 「リムピース」のサイトを見ると、そのトップページに、「軍隊にも秘密はあってはなりません!」なんて書いているけれど、それほどの情熱があるのであれば、その情熱は、米軍ではなく、中国の人民解放軍にぶつけるべきだろう。

現時点で、アメリカと中国でどちらが日本の脅威であるのかを考えると、それはもう言うまでもない。トモダチ作戦を行なった相手と、領土侵略の意思を隠さない相手。脅威となる相手をこそ監視しないと意味がない。

現に中国はオスプレイ配備を嫌がっている。

7月24日、中国の環球時報は、オスプレイの日本配備は日米の「日本南西方面の軍事的均衡力の増強」を念頭にしたもので、「普天間基地から尖閣諸島まで1時間で到着できる。積み込める戦闘部隊と火力は、現有のヘリコプターよりも増強される」とし、行動半径についても、沖縄を中心とすれば、「魚釣島だけでなく、上海を含む中国の一部の都市が含まれる」と述べている。

また、同じく24日、中国日本友好協会会長の唐氏は、北京市を訪問中の仲井真知事に「オスプレイの件はいかがですか」と質問し、仲井真氏が「安全性をきちんとしないと駄目だと言っているんですが」と答えると、唐氏が「それは当然のことです」と理解を示したなどと報道されている。

もしも、石原都知事が沖縄知事であったなら、こんな質問が出たのかか疑問なところではあるけれど、やはりオスプレイは配備するだけで抑止力としての働きがあるとみていいだろう。


Twitter
画像 ←人気ブログランキングへ

この記事へのコメント

  • とおる

    > リムピースの編集委員の篠崎正人氏は「航続距離の長いオスプレイの運用で作戦範囲が無制限に広がる可能性がある。平和に暮らしたいという私たちの願いと真っ向から対立する」と述べている。

    これの意味する所は、
    ・オスプレイの運用で作戦範囲が無制限に広がる
    従って、心情的に、中国側に住んでいる私たちにとって、
    ・平和に暮らしたいという私たちの願いと真っ向から対立する
    つまり、オスプレイ配備に反対するリムピースは中国人の代弁者。
    2015年08月10日 15:25
  • とら

    オスプレイは飛行機であって、ヘリコプターではない。 
    飛行機は風上に向かって離陸せねばならない。ライト兄弟時代の鉄則。
    事故は低速(ヘリ状態)で、風向きが悪い時に起きているようだ。
     これが弁慶の泣き所でありアキレスの腱であろう。
     離着陸の時の風向きに気をつける必要があろう。
    2015年08月10日 15:25
  • sdi

    「彼(仮想敵国)の意思ではなく、その能力に備えよ」という箴言を元にすれば中国側がオスプレイの行動可能半径を元にその配備に対してリアクションが起きるはある意味当然です。但し、「能力」に対して備えるのぱ軍人の責務です。そして、示された「意思」に対応するのが文民、主に外交官と政治家の担当でしょうね。
    我々が注視すべきは人民解放軍と北京党中央の動向です。まあ、一部のイロモノ軍人の主張は無視していいでしょう。本当に警戒しなくてはならないのは元海軍装備技術部部長の鄭明少将のような冷静で客観的な思考のできる軍人たちです。
    2015年08月10日 15:25

この記事へのトラックバック