民主党内で原発再稼働問題が火を噴いている。
1.原発の3つのシナリオ
7月21日、菅前首相は、名古屋市での講演で、「『野田さん、あなたは国民の怒りの対象になっていますよ。分かっていますか』と言うと、野田さんは『え、そんなことになっているの』と言っていた」と、野田首相と原発再稼働をめぐって交わした会話を披露し、「いついつまでに原発をゼロにする、という方針を明確にすべきだ。これは党としての責任でもある」と述べた。
更に、記者団に対して、原発再稼働反対を訴える首相官邸前の抗議活動について、「新しい政治参加のうねりが起きている・・・首相がいろいろな意見を聞くのは望ましいと思うし、そうアドバイスしている」と野田首相に主催者との面会を助言したことを明らかにしている。
再稼働を含めた原発の将来像については、6月29日に、政府の「エネルギー・環境会議」がエネルギー・環境に関する選択肢として次の3案を提示している。
1.ゼロシナリオゼロシナリオとは、その名のとおり、2030年までに原発比率をゼロとする案。その時点でのエネルギー供給は、再生可能エネルギーと化石燃料からとなり、更に、化石燃料の依存度を極力下げ、CO2排出量を低減するために、広範な規制と経済負担で、高水準の再生可能エネルギー、省エネルギー、ガスシフトを実施するとしている。
2.15シナリオ
3.20~25シナリオ
ただし、再生可能エネルギー比率が現状の10%程度から約30%まで拡大できたとしても、化石燃料に対する依存度は約70%となり、現状の65%程度よりも上がってしまうことから、再生可能エネルギー比率を35%にまで高めることを目指すとしている。ただ、それでも、化石燃料依存度は約65%、非化石電源比率は約35%と現状と同じレベルにするのが精一杯。
15シナリオとは、原発依存度を2030年に15%程度としつつ、化石燃料依存度の低減、CO2削減を実現するというもの。再生可能エネルギー比率は約30%を目指し、化石燃料依存度は約55%と、現状の65%程度よりも約10%下がる。また、非化石電源比率は約45%と現状35%程度より約10%拡大する見込み。
20~25シナリオとは、緩やかに原発依存度を低減しながら、一定程度維持し2030年の原発比率を20~25%程度とする案。再生可能エネルギーは約25%から約30%を目指し、化石燃料依存度は約50%と現状よりも約15%低減。非化石電源比率は約50%と、現状よりも約15%上がると予想している。
2.2030年には7割が廃炉になる
7月20日、電気事業連合会は、これらシナリオについて、「少なくとも『20~25%シナリオ』が必要な水準」とし、いくつかの疑念を上げている。
ひとつは、省エネルギー・再生可能エネルギーの比率拡大の想定が、現行のエネルギー基本計画をさらに上回るものであり、技術的問題やコストその他を考えると実現できるかどうかすら怪しいこと。特に、コスト面では、出力が不安定でエネルギー密度の低い太陽光発電や風力発電の導入費用についての提示および精査が不十分であると指摘している。
もうひとつは、家庭用の電気料金が、2030年に現状から最大約2倍の上昇といった大幅な上昇と、実質GDPの0.3%~7.4%の悪化などマクロ経済へのマイナス影響が示されているにも関わらず、十分な説明・理解がされておらず、更なる議論が必要とし、ゼロシナリオは有り得ないと表明している。
原発を減らしていくことについては、たとえ、今後原発が全部再稼働したとしても、原子炉の寿命は40年程度。
次の図は2011年3月現在で、全国に56基ある原子炉の運転年と経過年数の一覧なのだけれど、既存の原発は70年代から80年代に運転を開始したものが多く、既に運転から20年以上経過している炉が39基もある。
従って、2030年には、現在の原発の約7割は、40年以上経過することになり、これらは廃炉になっている筈。だから、今後原発を一切新設することをしなければ、2030年には、原発は今の3割程度にまで自然減する。
現在の日本の電力における原発依存度は、震災前の2010年の実績値ベースで約26%。だから、20~25シナリオというのは、現状の原発を微減する程度の話であって、2030年までに、いくつかの原発を新規建設することが前提になっている。
事実、「エネルギー・環境会議」の提案でも、20~25シナリオの場合、「原子力発電の新設、更新が必要となる」と記載されている。
まぁ、筆者としては、現実問題として、実現出来ても、20~25シナリオがいいところだと思うけれど、経団連は、3つのシナリオそのものに異論があるようだ。
3.シロアリがシロアリを批判する政権
7月19~20日、軽井沢で、経団連の「夏季フォーラム2012」が行なわれたのだけれど、その中で「エネルギー・環境会議」の3つの選択肢について、「いきなり国民的議論を求めるのはおかしい」、「原発事故の総括が先だ」、「原発の事故の原因を特定しないと感情論との戦いで冷静な議論ができない」、「なぜ原発を維持しなければならないのかを国民にわかりやすく説明すべきだ」、「政府は一律に原発再稼働をするのではなく、日本各地の原発は操業年数の違いで安全度と信頼度に差があることを認めるべきだ」と批判が続出。
「鹿児島知事選と人災」のエントリーでも触れたけれど、福島第一原発事故調査委員会の報告書では、事故原因は自然災害ではなく「人災」だと結論づけられている。人災であれば、人の手で対策を打つことができる。
人類は核を制御できない云々と言うのは、人災の原因と対策を十二分に議論・検討してからでも遅くはない。本当は、人災を生んだ最大要因である菅氏が、自ら進んで、その原因究明と対策について協力すべきであって、"いついつまでに原発をゼロにする"なんてのは責任逃れというか、話をすり替えている。事故当時の国政の最高責任者であればこそ、どうすれば、事故を防げ得たのかを提示する責任がある。事故ったから原発を全部ゼロにするというのは、ひとつの結論ではあるかもしれないけれど、現時点では短絡に過ぎる印象は否めない。
7月20日、鳩山元首相は、首相官邸前で行われた再稼働反対デモに参加し、その足で官邸に乗り込むという、ルーピー全開ぶりを晒した。現与党に所属する首相経験者が、反政府行動をする。どうしてもやるなら離党して野党の立場で行うべきだろう。或いは、次の選挙での自分の当選が危ういがために、歓心を買おうとしての行動なのかもしれないけれど、あまりにも軽い。
脱原発議員も「開いた口がふさがらない。『史上最低の首相』の座を争う鳩山氏や菅直人前首相が表に出てくると、脱原発の行動が異常に映ってしまう。おとなしくしていてほしい」と話したそうだけれど、この御仁が出てくると、折角苦労して纏めた話をぐちゃぐちゃにしてしまう気があると思う。それこそ、あの普天間の二の枚になるのではないかとさえ。
7月21日、鳩山元首相は、北海道浦河町での国政報告会で「野田首相はミイラ取りがミイラになるように、シロアリ退治隊がシロアリになってしまった…増税前にシロアリ退治をやろうと一番強く主張していたのは野田首相だった」と批判しているけれど、自分とて、民主党に所属したまま、再稼働反対デモに参加して、政府与党の方針に反対している。野田首相からみれば、鳩山氏だってシロアリのようなもの。
シロアリがシロアリを批判するグダグダ政権もそろそろ年貢の納め時ではないかと思っている。
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この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
嘘付増税首相もデモ参加者の正体は知っているだろう.
後は嘘付同士の化かし合い.
ヒトデナシ元首相は日本国転覆を計った罪で
起訴すべきだろう. ヒトデナシの犯罪者だ.
せみまる