小沢のオリーブの木

 
この話題に触れるのは、もう少し先にする積もりだったのですけれども、少し方向性が見えてきた気がしますので、取り上げてみたいと思います。

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1.新会派「国民の生活が第一」

小沢一郎氏が民主党を離党して早や4日、衆院議員37名、参院議員12名が民主党を離れることになった。離党した人数については、一旦離党届を出したものの撤回した議員や後で離党して小沢氏に合流した議員もいるから、今は、増えたり減ったりしているけれど、選挙が近づくにつれて、段々と固まってくるだろうと思われる。

7月4日、小沢氏は新党の旗揚げを11日とし、自身の代表就任を決めた。新党の名称はまだ決まってはいないけれど、この日、衆院に37人の新会派「国民の生活が第一・無所属の歩」、参院に12人の「国民の生活が第一」結成を届け出て、新党の幹事長に東祥三氏が就任する人事などを発表している。
※衆院会派は後に「国民の生活が第一」に変更された。

「国民の生活が第一」という名称は、先の衆院選での民主党のスローガン。これについて小沢氏は、この日の新党結成準備会合で「3年前の総選挙の『国民の生活が第一』の理念に大変、執着を感じている」と、まるで、こちらが本家だといわんばかり。

キャッチフレーズを使われた民主党はといえば、参院幹部が使う記者会見室にちりばめられた「国民の生活が第一」の背景デザインを、ロゴマークと党名に切り替える慌て振り。もう、先手を取られている。

この小沢氏グループによる新会派設立による衆参両院の会派勢力は次のとおり。
○衆院
民主党・無所属クラブ:250
自民党・無所属の会:120
国民の生活が第一:37
公明党:21
共産党:9
新党きづな:9
社民党・市民連合:6
みんなの党:5
国民新党・無所属会:4
新党大地・真民主:3
たちあがれ日本:2
無所属:13
欠員:1

○参院
民主党・新緑風会:92
自民党・たちあがれ日本・無所属の会:86
公明党:19
国民の生活が第一:12
みんなの党:11
共産党:6
社民党・護憲連合:4
国民新党:3
新党改革:2
新党大地・真民主:2
無所属:5

小沢氏は早速、他党にも統一会派の働きかけを行っていて、既に、新党きづなと統一会派を結成することを決め、さらに社民党と新党大地・真民主との統一会派結成の働きかけを行なっている。

小沢会派37人と新党きづなの9人、そして社民の6人が統一会派に加われば、合計52人になるから、小沢氏の国民生活の統一会派で内閣不信任案を提出することができる。

更に、ジャーナリストの上杉隆氏によると、小沢新党幹部も亀井静香前国民新党代表、田中康夫新党日本代表、鳩山邦夫元総務大臣などの中から、会派入りの可能性のある人物に打診を開始していて、その中の一人からは内諾を得ているそうだ。

小沢氏は着々と野党連合というか、他党との連携をとろうと動き出している。ただまぁ、連携を取るといっても、互いの政策が余りにもかけ離れていると連携したくてもできないから、その辺りの調整をどうするかがポイントになる。

自ら、「国民の生活が第一」に執着があるといい、離党の原因にもなった、反増税の旗を降ろすことは流石にできないだろうから、それ以外の部分でどれだけ連携が取れるのか。




2.小沢のオリーブの木

この他党との連携については、小沢氏はどうやら「オリーブの木」構想を描いているようだ。「オリーブの木」とは「ともにイタリアのために」を標語として、イタリアの中道政党と左派政党との連合のことで、1996年4月21日のイタリア総選挙で、オリーブの木は共産主義再建党と結んで勝利した例がある。

小沢グループ議員によると、造反組が全員小沢新党に合流する必要はなく、民主党から飛び出す議員集団を対象に、愛知選出の議員なら日本一愛知の会や減税日本が受け皿になってそこに合流する選択肢が検討されているという。

6月24のエントリー「小沢造反戦略の奥を読む」で、筆者は、小沢氏が、小沢グループの一部の議員を、小沢氏と喧嘩別れをした風を装って、みんなの党に合流したり、民主党の中間派の中から民主党を離党した議員を維新の会に合流できるよう水面下で働きかけるのではないかと述べたけれど、造反組を別の党に合流させる案はこれに近いといえる。

小沢のオリーブの木は、反増税、脱原発、地域主権でゆるやかな連合を組もうとしているようなのだけれど、地域政党を中心に連合して民自公の増税大連立に対抗する政治勢力をつくる戦略に打って出なければならないあたり、小沢氏も相当苦しい。

昨今、とりわけ民主党政権になってから、地域政党が台頭してきているように見えるのだけれど、地域政党に人気が集まるのは、もちろん既成政党に落胆していることがあるだろう。だけど、それ以外にも、地元の意見を聞いてくれないという不満があるからではないかと思う。遅々として進まぬ震災復興は言うまでもなく、大雨災害などの対応や、宮崎口蹄疫など、民主党政権がちっとも国民を助けないことは皆に知れ渡っている。

元々民主党に政権担当能力がなかったことが最大の原因だとは思うけれど、小選挙区制度による部分もあると思う。小選挙区では原則一人しか当選しないから、負けた側に投票した分はそのまま死票になってしまって、国会には届かなくなる。小選挙区制度は、そうした、マイノリティの声の受け皿を無くしてしまった。

小沢氏は、小選挙区制を導入して、政権交代できる仕組みは作ったけれど、反面、死票を増やして民意の切捨てを生んでしまった。小沢氏は先の衆院選の街頭演説で「国民生活を無視した自民党に投票して政治に文句を言う資格はない。棄権する人も同じ」とまで発言していた。

その小沢氏が政権交代を成し遂げた民主党を追い出され、地域の民意を汲み取る地域政党同士の連携に走らざるを得なくなった。"政治に文句を言う資格がない"はずの人の声を集める羽目になったのは、因果応報というか、何というか、なんとも皮肉なもの。

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3.燻る民主党残留組

ともあれ、小沢氏は今国会で、内閣不信任案の提出を目指してくるだろう。たとえ、可決されなかったとしても、不信任案を事実上の民自公連立政権にぶつけることで、既成政党との違いを浮き彫りにすることができるから。

7月5日、衆院採決の造反で、党員資格停止6カ月の処分を受けた鳩山氏と、資格停止2カ月の処分を受けた14人を含む民主党衆院議員23人と参院議員1人が鳩山氏が開いた「消費税研究会」に出席。増税法案の成立阻止を目指すことで一致している。

残留組の間では執行部の処分方針への反発から、野党が野田内閣不信任決議案を提出した場合、賛成も辞さないとする意見が浮上しているという。

これに慌てた輿石幹事長は記者会見で、鳩山氏の資格停止期間中に次期衆院選があった場合でも、鳩山氏が公認にならないことはあり得ないと、自分で処分を下したくせに自分でそれを反故にしようとする無茶苦茶振り。

それを見た、自民の谷垣総裁は「鳩山由紀夫元首相らは勉強会をつくり、不信任案が出たときどうするかという物騒な議論をしている。参院でやっていけるのか非常に疑問だ」と述べている。谷垣氏は、名古屋市内の講演で、「もし野田政権の足元がさらに崩れて成立まで行き着かないことが明らかになれば、倒閣も選択肢に入れなくてはならない」と動向次第では対決姿勢に回ることを示し、小沢氏らが内閣不信任決議案を提出した場合でも、「適宜適切に判断する」とこれを否定せず、野田政権に揺さぶりを掛けている。

今国会で小沢新党から内閣不信任案が出されることがあるとするならば、そこがまた、一つの政局ポイントになることは間違いない。


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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > ジャーナリストの上杉隆氏によると

    上杉某はジャーナリストではない.
    確信的に嘘を書くものをジャーナリストと
    呼ぶべきではない.

    石原氏と自民党の小沢嫌いは動かない.
    橋下氏も小沢氏との連携には動けまい.
    結局は新党大地のような小沢氏と同類
    としか組めない.

    米国公認の共産主義工作員の瀬島龍三の場合は
    「ジャーナリズム」が全力で胡麻化したから,
    一応は実力者らしいと言うことになっているが,
    小沢氏は反国民的であることが明白になっている.
    2015年08月10日 15:25

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