剣客橋下「増税のカタキ討ちます…」

 
今日は維新の会と橋下市長の動きについて…

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1.特別区を設置する新法案

6月28日、民主、自民、公明、みんな、国民新の5党は、東京都以外でも特別区を設置することを認める新法案の内容について大筋合意した。これは勿論、橋下大阪市長の「大阪都構想」を受けてのもの。

内容は、財政調整、税源配分、事務分担の重要3項目について国との事前協議を義務付け、特別区の対象は政令市を含む総人口200万人以上の大都市区域とする。また、特別区設置を目指す道府県と市町村が協議会を設置し、特別区の区割りや名称などを定めた設置計画を作成することも義務付け、特別区設置の条件として、道府県と市町村の議会での議決と、対象市町村の住民投票で過半数の賛成を得ることを求めている。

まぁ、特別区の認定には、人口200万以上で住民投票が必要なところをみると、どうやら民主党案がベースになっているようだけれど、総務相との「事前協議」の範囲は予算や税源配分など法律が必要な事項の変更のみに限定されていることから、ここら辺りは自公案をある程度汲んでいるように思われる。

5党は今国会に修正を踏まえた新法案の共同提出を目指すとしているけれど、同じく28日、橋下市長は大筋合意したことについて、「うれしい。くみ取ってくださってありがたい。…今、国政はどんどん決める政治をしてるんじゃないですか。やればできるやんかと、国民の信頼は高まるんじゃないでしょうか。そりゃうれしいですよ」と歓迎する意向を示している。

ただ、呼称については、「都」が「みやこ」や「首都」を示すため、新たな「都」は設けないとしている点について、翌29日に、「東京都と混乱するから都がだめなら、州がいい。日本で唯一の州になる。大阪州を広げて関西州にすればいい」と異論を唱えている。

ともあれ、法案が成立すれば特別区の住民は、自身の区長や区議を直接選挙で選べることになり、区ごとに予算を編成し、ゴミ収集なども地域の実情に合わせて決められることになる。今回、5党が「都構想法案」づくりで歩調を合わせたのは、次期衆院選で維新の会との争点をなくしつつも、連携の芽は残しておきたい思惑があると見られている。

ところが、橋下市長は、都構想合意を歓迎してみせた、同じ28日に次期衆院選で維新の会として全国的に候補者を擁立する意欲を表明している。これは、大阪市内のホテル開いた自身の政治資金パーティーで述べたもので、橋下市長は「国を変えるラストチャンス。皆さんの応援があれば、必ずや日本を新しい方向に導いていける自信がある。…来るべき大戦おおいくさでは、消費税の地方税化と国の地方交付税制度廃止の二つを中心に判断してもらう…大阪の動きを全国に広げてと言われたら、維新の会はその声にしっかり応える」と強調している。

元々、橋下市長は、都構想法案が成立したら、国政に出ないと言っていた筈。だけど、都構想法案が主要5党で合意して国会提出が見えてそれが嬉しいといったその日に、"日本を導く自信がある"という。




2.「増税のカタキ討ちます」の幟を立てた橋下市長

「維新の会」の現実」のエントリーでも触れているけれど、やはり、その時の状況によって、国政に出る出ないどちらにもいけるよう両天秤を掛けていたようだ。本心では国政に出たくて堪らないのだろうと思う。

だけど、そのためには、世論の後押しが欲しい。6月26~27日に共同通信が行った世論調査では、維新の国政進出に「期待する」との回答は54.5%で、「期待しない」の37.9%を大きく上回り、次期衆院選の比例代表投票先も、トップの自民党の22.9%、民主党の13.3%に対して維新の会は12.9%となっているから、それなりの手応えを感じているのかもしれない。

また、パーティー終了後、橋下市長は記者団に対して、「戦後民主主義の最高と言われる舞台を作りたい…政党内の造反と言うが、政治家は国民に造反するかどうかで生きるか死ぬかが決まる」と話している。

確かに、増税反対の世論が多数を占めている状況で、国民に信を問うことなく、増税法案を進める野田内閣が国民に対して造反している、というのは正論であり、同じく共同通信の世論調査での野田内閣支持率が3割を切り、不支持率が54.3%へと上昇している。だけど、同時に、小沢氏らの造反については6割近くが「理解できない」とし、小沢新党結成についても、8割近くが「期待しない」と答えている。

つまり、世論は増税反対でいるのに、その気持ちに代弁してくれる政党がないという状況にある。だから、そうした、与党への不満の受け皿として維新の会に票が集まる可能性は十二分にある。

橋下市長は、増税法案が衆院可決した26日、「民主党は政権交代の前に『4年間は増税しない』とはっきり言った。通ってしまえば何でもありという政治を許してしまう…こういう政治が許されるなら、次から選挙前の政策討論が成り立たない。国民は一体何を信じて投票するのか」と民主党を批判している。

だけど、ポイントは、橋下市長は、次期衆院選では「消費税を地方に移す案」と「地方交付税の廃止」を争点に上げているだけで、消費増税そのものに反対しているわけじゃない。ただ、やらないといったことをやった民主党の姿勢を批判しているだけ。だけど、それで、巧みに、世論の不満に対する受け皿になろうとしている。

橋下市長の倒閣発言撤回と苦悩するドイツ」のエントリーでも指摘したけれど、橋下市長はやはり、世間の不満をうまく掬い取って、糊口を凌ぐ"剣客商売"が抜群に上手い。このタイミングで、「増税のカタキ討ちます。票100万で申し受け候」の幟を立てた。

野田内閣は増税法案は通すものの、社会保障をどうするか、改革はどうするかの説明を一切していない。確かに国民会議でその中身を決めるとはいえ、国民に対する説明があまりにもなさすぎる。耳にタコができるくらい"増税は待ったなし"を聞かされたところで、何がどう待ったなしなのか示されなければ、増税だけで突っ走っていると受け取らてしまうし、そうなっても仕方ない。

野田内閣に、国民の声に耳を傾ける姿勢がなければないほど、維新の会に票が集まる構図になりつつある。官邸への反原発デモに「大きな音だね」というようなセンスでは話にならない。


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この記事へのコメント

  • ラミちゃん

    ちび、むぎ、みみ、はなさんへ

    どこが橋下市長が社会主義なんですか?今の官僚主導中央集権こそ社会主義ですよ。消費税が地方でとるのは欧米では当たり前。それに自由主義、資本主義の典型と言われているアメリカ合衆国は典型的な地方分権、道州制連邦制の国ですよ。橋下市長はアメリカみたいに地域によって国の法律まで変えろとは言ってません。あなたの意見ならアメリカは社会主義を飛び越えて共産主義国家ですね。
    2015年08月10日 15:25
  • sdi

    日比野殿とちがって、私は野田首相のデモに対する発言について良い意味で驚いています。もっと、デモ隊よりで彼らに迎合するような発言をすると思っていたので。まあ、60年安保のときの故岸首相の発言に比べたらセンスはよくないかもしれませんが。
    仮に野田首相が、デモ隊に対して「真摯にうけとめた」等々の発言をした場合どうなるでしょう?。それでなくても旧社会党や市民団体という名前の政治団体系統の人脈が濃い民主党です(社民党ほどではないにしても)。それは原発再稼動反対の旗印に100人を超える議員が集まった(実質小沢一郎氏超えかがりの反野田派活動でも)のです。彼らを勢いづかせること請け合いです。党内政局という問題だけでなく、今後の大飯原発以外の原発の再稼動の困難さが著しく増加します。
    ですから「台詞についてはもう少し考えたほうがよかった」とは思いますが、デモ隊に迎合する態度を見せなかったのは私は評価しています。
    2015年08月10日 15:25
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    やはり橋下氏は社会主義革命の魑魅魍魎の一人.
    自分達が決めれば何でもできると考えている.
    こんな輩が結局は伝統を毀損し国を崩壊させる.
    「今現在の日本」は「今現在の国民」のものではない.
    「過去の日本人」と「未来の日本人」のものでもある.
    国体ができてから二千年あるのだから, 我々には
    礎となった過去の日本人の遺志を受け継ぐ義務がある.
    2015年08月10日 15:25
  • opera

    先週は、色々な問題がピークを過ぎたと思わせる一週間だったように思います。
     たとえば、確かに一部には増税法案への造反者が英雄視されるという話もありますが、世論調査では国民の8割が小沢新党には期待しないという結果も出ています。
     また25日頃には、ツイッター等で住民税・国民健康保険料等の引き上げで阿鼻叫喚の様相だったそうですが、これは子供手当て等の財源の一つとして各種の控除が廃止されたせいで、多くの国民(主に現役世代)が「ただより高いものはない」ということを思い知らされた結果になったのではないでしょうか。
     一方反原発も、先週末には色々な集団を動員して1万5千~1万7千人(警察発表)ほど集めたようですが、20万などと吹かし過ぎたことと、その後、大飯原発に向った集団が悪天候等で散々な目にあったことを見ても、これ以上の盛り上がりは期待できない気がします。それに先週は、中部・関西・九州・四国等で、計画停電の区割りが通知されたようですし。
     「消費税増税反対」も「反原発」も一部は確実に先鋭化していくだろうと思いますが、それだけでは多くの国民の理解を得られなくなってきているのではないでしょうか。
    2015年08月10日 15:25
  • 日比野

    sdiさん。

    迎合する必要は全くないですけれども、国民の声をまるっきり無視していると、国民から受け取られていることが問題だと思いますね。"悲痛な表情"とか"固い表情"で官邸に入った、とかなら、まだ印象が違ったと思いますよ。

    野田首相は、増税法案に賛成した議員が地元で批判を受け、造反者が英雄扱いされていると愚痴ったそうですけれども、元々、増税分を社会保障に充てると言っていた時期は、まだ世論も増税やむなしだったのです。それが反対が大勢になったのは、社会保障を先送りして、増税だけ先に進めたからでしょう。

    まぁ、再稼働反対デモの一部が閣僚の"遺影"を出すという異常さは承服できませんし、私は再稼働反対でもありませんから、再稼働をするという判断そのものは評価しています。ただ、説明が不十分ですね。このままだと、世論の不満が溜る一方で、それを巧みに掬い取る維新の会に票が流れることは避けられないかと思いますね。
    2015年08月10日 15:25
  • 俺だよ

    もう改革とか抜本的変えるとかいい加減にしてほしいなぁ。ここ何年もそんなことして碌な結果が出てないどころか悪化しかしてないわけで・・大阪都構想にしろ本当に中身理解してる人がどれだけいるのか響きだけで賛成してる人が大半じゃないの?
    2015年08月10日 15:25
  • ちび、むぎ、みみ、はなさんへ

    日本の歴史とか言うけど、中央集権なんて明治維新後に革命でできた事だよ。その前は中央集権国家ではない。明治維新後の制度こそ新しいもの。その制度は日本が発展途上の時はある意味よかったけど、日本が成熟し、しかも右肩上がりの時代が終わったこのご時世、時代にそぐわなくなったという事。それと歴史なんちゃら言うなら天皇(朝廷)は京都にいてもらわないと。それこそ歴史。京都→本京都。東京→東の京。歴史があまりない街。そこに歴史なんて言ったらおかしい。
    2015年08月10日 15:25

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