8月29日、参院で野田首相に対する問責決議案が可決した。
採決は賛成129、反対91だったのだけれど、今国会参院に提出された問責決議は3つある。
ひとつは6月20日にみんなの党の水野賢一議員が提出したもの。もうひとつは、8月7日に野党7会派が共同提出したもの。そして最後の一つが、8月28日に自公両党が提出したもの。
最初の問責案は8月7日にみんなの党を含めた野党7会派の問責が提出されたため、同日に撤回されていて、8月28日の時点では、野党7会派による問責と自公による問責の2つが提出されていた。
一事不再議の原則から、問責案の一本化に向けて、自公両党と野党7会派が調整をしていたのだけれど、当初、自公両党は自分達の提出した問責案への同調を求めていた。だけど、野党7会派は先に提出した問責案の上程に自公両党が応じなかったことから、これに反発。そこで、自民党は、自公両党が同調できるような文面に7会派案を修正して再提出を要請したのだけれど、最終的には、野党7会派の問責案に自民が乗る形となった。
なぜ、問責案で調整が難航したかというと、野党7会派の問責案には問責の理由として、3党合意と消費税増税に反対する内容が明記されていたから。提出された野党7会派の問責案の全文を次に引用する。
内閣総理大臣野田佳彦君問責決議とまぁ、今国会で消費税増税法案を成立させるべきではないという文言と、3党協議による合意は議会制民主主義を破るものだという主旨が記載されていて、消費税増税法案の成立に協力した自公両党を真っ向から批判する内容になっている。
本院は、内閣総理大臣野田佳彦君を問責する。
右決議する。
理由
野田内閣が強行して押し通した消費税増税法は、2009年の総選挙での民主党政権公約に違反するものである。
国民の多くは今も消費税増税法に反対しており、今国会で消費税増税法案を成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっていた。
最近の国会運営では民主党、自由民主党、公明党の3党のみで協議をし、合意をすれば一気呵成に法案を成立させるということが多数見受けられ、議会制民主主義が守られていない。
参議院で審議を行う中、社会保障部分や消費税の使い道等で3党合意は曖昧なものであることが明らかになった。
国民への約束、国民の声に背く政治姿勢を取り続ける野田佳彦内閣総理大臣の責任は極めて重大である。
よってここに、野田佳彦内閣総理大臣の問責決議案を提出する。
これに対して、自公の問責案は、「内政・外交上の失敗で国益を損ない続けた」と、増税とは別の理由を上げていた。野党7会派の問責案が自分達を否定する理由だからそうせざるを得ない。
まぁ、一部では、今回可決された問責決議案は、8月7日に提出された野党7会派案から一部手直ししたとの報道があったけれど、別に内容が変わった訳じゃない。こちらに8月7日版の問責決議案があるけれど、8月7日の段階では消費税法案が可決していなかったから、文面が現在進行形になっているだけで、中身はそっくりそのまま同じ。
だから、野党7会派の問責案に自公が賛成するということは、そのまま自己否定することになるのだけれど、自民党は可決を優先して賛成し、公明党は採決を前に退席した。筋としては公明の方が筋は通っている。
さて、自民が自分で自分を否定する行動をとったことについては、何故そうしたのかという疑問が出るのは当然。可決後の谷垣総裁の記者会見でも、この点について質問が集中した。以下にそのやり取りの一部を引用する。
Q.先ほど、参院本会議で野田総理大臣に対する問責決議案が可決されました。まずこの受け止めを。と、まぁ、谷垣総裁は、"政治の停滞を打破するために、少々の矛盾には目をつぶった論"をその理由としていたのだけれど、であれば、問責を出さなければ、政治が停滞する、というロジックをきちんと立て、それを説明しきる必要がある。
A.まず、この3年間の民主党の政権運営、これは極めて稚拙なものであってですね、失われた国益はなかなか取り返しのつかないものだったなと思います。その上で、三党合意以降の野田政権の責任というものをきちっと問わなくてはいけないと思います。私達自民党が三党合意、一体改革でやったことは、これは参議院の選挙公約等々でやるということを国民に約束したことでもありますね。あるいは、社会保障についても我々の主張で通したわけですね。
ところが民主党は、結局このことによって「やらない」と言っていた消費税をやる。それから、マニフェストの骨組みであった、目玉政策であった社会保障等々についても実現不可能になった。この嘘をついたマニフェスト違反の責任は当然問われなければならないわけで、それは解散してきちっと信を問うことだということに尽きますね。
[中略]
それに加えまして、最近の民主党の国会運営というものは目に余るものがありますね。要するにこの三党合意、一体改革で明らかになったことは、衆議院で物を通していこうとしたら少なくとも241必要なんですが、あの時は結局218しかなかったわけですね。
ということは、今の民主党の現状を見ますとね、参議院のことも考えますとね、野党とどう合意形成をしていくかということがなければ、色々なことが進んで行かない。それがその言ってみれば呪縛行為みたいなものですね。通せるというあてもなく、このままやっていけば特例公債であろうと選挙制度であろうと、呪縛してしまうと。そういうようなことをやって、それは野党が反対するから…という所にもっていこうというだけですね。与党としての責任感も何もない。こういう国会運営は厳しく糾弾されなければいけないと思いますね。
ですから野田総理が今のような問題、三党合意後の一体改革後の政府与党の、政権与党の責任のあり方というものを十分に自覚・反省されるのであれば、我々まだ懸案がありますから、それについては色々また協議をしていく、ご相談をしていく余地があると思います。しかしそういうことがないとすれば、今後野田政権に協力することは一切できない。
それが今日のこの問責が、何よりも参院の中で、結局この問責に反対する人が91票しかなかったということが極めて大きいですね。
Q.今日の問責は自公両党が出したものではなく、国民の生活が第一やみんなの党が出したものに乗る形になった。その提案理由は、消費税の三党合意に反対であるとか、消費税そのものに反対というものだが、それに自民党として賛成して乗った理由は何か。
A.提案した野党も我々もですね、もう野田政権が今の国政を掌握して前に進めていく力がないということでは、基本的なことでは一致しているわけです。ただし、色々な物の考え方は、違う党ですから、どうしても整理が十分にできないところもあったけれども、そういうことよりも、今の政治の停滞を少しでも打破しなければと、そういうことに重点を置いて考えたということになります。
Q.野党七会派が提出した三党合意と消費税に反対する問責に乗ったということで、与党内からは「自民党の自己矛盾だ」との声もある。国民にとって分かりにくいとも思えるが。
A.これで仮に問責を出したと。この政権はだめだと野党は言っているけれども、結局数はあるんだけれども小さな違いで通せなかったとなったら、もっと分かりにくいと思います。
谷垣総裁のこの記者会見を聞く限り、そのロジックとして、「ねじれ国会の現状では、野党との合意形成をしなければ物事は進まない。与党としての責任感も何もない国会運営をするなら協力はできない。だから問責なのだ」というのを組み立てているように思われる。これは要するに「もっと、自分達と協議(3党協議)しようよ」というもので、裏を返せば、「協議しないなら、問責出すよ」というロジック。
だけど、その一方で、「マニフェスト違反の責任を取るために、解散して信を問うべきだ」と言う。
一体、解散させたいのか、連立したいのか。どっちなのかよく分からない。
ただ、この「3党協議しないから、問責だ」というロジックは下手をすると野田首相側に逆利用される可能性がある。つまり、この間の増税法案の3党合意の時のように、「3党協議でも何でもします。自民党さんのいうことは何でも聞きます」と超低姿勢で野田首相に迫られたらどうするのか。「3党協議を進めれば政治の停滞などしません」というロジックで攻めてきたら、どう対応する積りなのか。
野田首相は、自民党が求める今国会での衆院解散には応じない方針とされている。今回の問責可決で、参院での審議はストップし、近々には、特例公債法案が人質になると思われる。
そして、9月には、民主党代表選と自民党総裁選が行われる。先の野田-谷垣会談で「近いうち」の衆院解散で合意したものの民主党内では早期解散に反対しているし、谷垣氏も解散に追い込めないことが確実視されると、総裁に再選されるかどうか危うくなる。
また、ぞろ政治も不透明感が増してきた。
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この記事へのコメント
opera
そもそも三党合意による一体改革法案が成立した以上、今年度の民主党の予算案の一部も否定された(これも三党合意の重要な目的の一つ)ことになるので、当然それに基づく特例公債法案も大幅に修正して提出しなければならなかったはずなのに、従来の法案をそのまま出してきた上に強行採決ですから、自公が賛成できる訳はありません。一部の表現を借りれば、まさに自爆テロですし、問責は当然でしょう。
ただ、問題はマスゴミで、民自公連立と勝手に妄想を膨らませた報道を繰り返してきたせいで、今回の事態を全く説明できなくなってしまっています。どうせなら、民主党と一緒にこうしたマスゴミにもご退場願いたいところです。
とおる
・問責決議は、「本院は、内閣総理大臣野田佳彦君を問責する。」という事だけを決めるのであって、理由を決めるのでは無い。自民党は、決議内容の「本院は、内閣総理大臣野田佳彦君を問責する。」に賛成だから同調した。
・国会は閉会まで約一週間あるが、実質、審議する法案は無い。衆議院から来る法案は無い。特例公債法案は反対(民主党が、賛成に値する物を提供すれば別)。首相が出てくる法案や内閣が出す法案以外は、審議する可能性はある。
状況報道や政局報道で、分かりにくい話かもしれませんが、自民党は元々、次の状況なので、問責決議に賛成しても不思議ではありません。
・民主党政権は政権担当能力が無いので、解散を求めている。
・消費増税に賛成したのは、自民党は選挙で公約として挙げており、野田首相が政治生命を掛けてすると言って自民党の協力を求めたので賛成した。
・消費増税に賛成したり、三党合意をしたからと言って、連立政権を組んでいる訳でも無く、政権維持に賛成している訳では無い。
なお、自民党が野党7党案に賛成し、公明党が賛成せずに棄権し
msmr_masachika
税収が低いのは企業が節税で、利益ゼロの薄利多売の過当競争してるから。
国民には生活保護の公費負担診療を悪用する、精神薬大量処方とヤクザ転売がある。
その他、インテリヤクザに食い物にされてる制度が沢山ありそう。
この泥沼な貧困国に似た状態は、外資系が救世主として参入するのに丁度よく、
醜い現地人は滅び、
起業家精神と切磋琢磨する外資系が血縁採用で合法的に日本各地を引き継ぐ。
人種の塗り替え、人口の輸出、その下準備が人口増えまくり現地人同士討ち。
ちび・むぎ・みみ・はな
出しておけば良かったのに, 谷垣氏が消費税に
拘ったから良く分からない話しとなったのだろう.
自民党の大部分は消費税増は実際にはないと考えて
いるだろうし, 次の選挙のスローガンにはGDP増加率
2%を越えない限り消費税増はないと入れると聞く.
その点からすれば, 付則を軽視している政権を
問責するのは別に矛盾ではない.
まあ, 理論なんてどうでもよい!
見た通りの政治の現状なら選挙をせざるを得まい.
考えるのは知識人の役割だが, 考えてもまともな
結論があまり出ないのも日本のエリートの特色だ.
結局, 現実感がないのだろう.
実社会なら現場見てなんぼだし.
総裁戦, 安倍氏が出馬の意向.
まあ, 現在週刊誌などで取り沙汰されている面子を
見れば, 彼らを退場させるためにも出馬するのだろう.
総裁戦の最低レベルは安倍首相にまで上がったと言える.
SAKAKI
今日、○経の記者が来たけど、服装、しゃべり方からしてもう疲れましたよ。明日の新聞にめちゃくちゃな記事が踊るんだろなぁ。