丹羽駐中国大使襲撃事件について

 
今日は、この話題です。

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1.丹羽駐中国大使襲撃さる

8月27日、丹羽宇一郎駐中国大使が乗った車が北京で、中国人とみられる男に襲われ、車両に立ててあった日の丸を奪われるという事件があった。

丹羽氏には怪我はなかったものの、尖閣諸島を巡る反日行動と見られ、大使館は中国外務省に厳正に抗議したのに大使、中国外務省は「極めて遺憾。再発防止に全力を尽くしたい」と謝罪、27日深夜には「真剣に調査している」との談話を発表した。

通常、大使(全権大使)とは、受け入れ国の元首に対して派遣され、外交交渉、全権代表としての条約の調印・署名および滞在する自国民の保護などの任務を行う役職。言わば、国の代理。その大使を襲撃することは、宣戦布告にも等しき行為。しかも車両の日の丸を奪っているのだから、宣戦布告と受け取られても文句は言えない。

北京市公安局は器物破損などの疑いで丹羽宇一郎駐中国大使の公用車を襲った男の行方を追うとともに、ドイツ製高級車2台が用いられたことなどから組織的犯罪の可能性もあるとして、捜査を本格化させる方針だという。また、日本大使館からは、公用車の走行を妨害した2台の車のナンバーを控えていて、男の証拠写真も撮影し、公安に提供されているから、本気で足取りを追えば逮捕できる可能性は高い。

だけど、中国当局が本当に犯人を捕まえ検挙するのかどうかについては疑問が残る。というのも、中国のインターネット上で襲撃の是非を問う簡易アンケートでは、回答者の約85%が「嘉悦」(うれしい)を選択し、犯人を"英雄"扱いする声が多いのだという。

中国政府は、国内の反日世論を睨みながら、反政府運動に転化しないような慎重な対応を迫られると見られている。だから、場合によっては、なぁなぁで済ます恐れがないわけじゃない。

環球時報は事件について、「襲撃は外交の助けにならない」「子供のような行為」と戒めつつも、「もし男が中国人だと確認されても、男が精神状態に異常をきたしていたかどうかは不透明」などと逃げ道とも受け取れる主張もしていて、慎重に動向を見極めようとしていると思われる。



だけど、そんなのは向こうの事情であって、日本が遠慮する必要などない。大使が襲撃されたのだから、いつ何時、現地邦人が襲われるか分からない。

現に、事件翌日の28日には、日本大使館前で断続的に抗議活動が行われているし、遡ること、19日には、広東省で起きた5千人規模のデモで、一部暴徒化した参加者が日本料理店内を荒らし、日本車十数台を破壊した事件が起きている。

公安が本気なのであれば、先の暴徒の首謀者を探し出して逮捕しているだろうし、第一、事件翌日に日本大使館前での抗議活動など許す訳がない。抗議行動は人民の自由だというかもしれないけれど、メンツを重視する中国がそんな甘い顔をすることは有り得ない。

その証拠に、北京オリンピックの際、開催期間中でのデモ活動は、表向きは北京市内の三つの公園に限り事前申請を条件として認めるとされていたのだけれど、実際は、申請者が拘置や拘束され、一度も実施されなかった。中国当局が本気になればそれくらい朝飯前。

今回と同様に、在外大使館員が中国国内で襲われたケースには、2004年8月に北京で行われたサッカー・アジアカップ決勝戦後に駐中国公使2人が乗った車が群衆に襲われ、後部ガラスが割られる事件があったけれど、検挙すらされなかった。

当時、この事件について、落語家の桂歌丸氏が「笑点」の中で、次のように述べていたことが記憶に残っている。
えー実は、これはワタクシが思っていることなんです、 ワタクシが思っていることなんです。

スポーツの世界に、政治を持ち込んでもいいものなんでしょうか?

公使の車を壊して、検挙者が一人も出ない。こんなワタクシは、わけの分かんない話はないと思ってます。

あの国に、オリンピックをやる資格があるんでしょうか、ワタクシの思いですが、皆さんはどうお思いですか? 歌丸です。
2004年9月19日放送「笑点」より
丹羽大使は事件について「極めて遺憾だ。在留邦人や日本企業関係者が安心して中国で生活できるような環境を確保することが重要だ。…引き続き中国側に申し入れを行い、日中間の人的交流、経済交流などが円滑に行われるよう取り組んでいきたい」との談話を発表しているけれど、解決が長引くようであれば、一旦召還し帰国させるべきではないか。

中国が「愛国無罪」やらなにやらで犯人を検挙せず、なぁなぁで済ませるのは向こうの勝手だとしても、それが国際的に通用させてはいけないし、日本だけには通用すると思わせてもいけない。




2.信頼するに足る「公正と信義」

竹島への李大統領上陸といい、今回の駐中国大使襲撃事件といい、国交断絶・宣戦布告クラスの出来事が立て続けに起こっている。これまでの日本外交のツケが回ってきたのだ、といえばそれまでなのかもしれないけれど、それで事件が解決する訳ではないし、自民党が悪いのだとジミンガーをしたところで状況が良くなるわけじゃない。本気で対策を取る必要がある時期にきている。

本当は、こういうことを逆利用して、国論を変えるなり、法整備を整えて、より効果的な対策が打てる環境整備をするべきではないかと思う。

両院の総議員の3分の2以上の賛成が必要となる憲法改正は難しいにしても、(集団的)自衛権の行使についてくらいは、もっと議論を進め、明確にしておく必要があるのではないか。

8月15日の終戦記念日には、各紙とも先の戦争と憲法に触れた記事を取り上げていたけれど、その多くは平和を祈念すると同時に日本の平和憲法を守れと訴えるものだった。

例えば、琉球新報などは、『終戦の日/平和憲法に立ち返れ 領土で自制し、不戦実践を』と題した社説で、「領土問題に直面する中、軍事に傾斜せず、不戦を誓う平和憲法の理念に立ち返ることが欠かせない。」と、この期に及んでも、相変わらずな主張をしている。

ただ、そうした、"反戦平和"な論調の中にあって、8月16日の毎日新聞には、少し重要な指摘があったので、取り上げておきたい。次に引用する。
発信箱:「平和立国」はつらい=布施広 

 非常に考えにくいが、竹島(韓国名・独島)の帰属問題を国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)で争うことに韓国が同意したとする。どんな法的プロセスをたどるのか、国際法の専門家に聞いてみた。

 まず司法裁の判事は15人。その中には日本人の小和田恒氏がいて韓国人の判事はいない。これを不利だと韓国が思えば、判事をもう1人選んで16人で審理することが考えられる。意見が割れた場合は、2月まで小和田氏が務めていた所長(今はスロバキア人)の意見がカギになるという。

 判決が出ても一方が従わない場合、他方は国連安保理に訴えることができ、安保理は必要とあらば経済制裁などの措置を取れる(国連憲章第14章94条)。こうなると大ごとだから、自信のない国ほど裁判をしたがらないそうだ。周知の通り、韓国は司法裁での決着を拒み続けている。

 でも竹島は韓国が実効支配しているから日本は不利だ。そう思っている日本人は割と多いが、司法裁は領有の根拠(権原)を重視する。60年代に、タイが支配し続けた寺院についてカンボジアの主権を認めたのは、その一例だ。それに「実効支配」は国家権能の平穏な継続をいうので、竹島について使う言葉ではないとの声もある。

だが、韓国を司法裁に引き出すのは両刃の剣でもあるようだ。前出の専門家は言う。「そうなれば中国などが尖閣問題でさらに強く出る恐れがある。日本がいくら『領有権の問題は存在しない』と主張しても係争地の色彩が強まるかもしれません」

 終戦記念日の空を仰いで、「平和立国」はつらいと思った。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と憲法は言うけれど、ロシアや北朝鮮を含む国々の「公正」を信じられるか。領土的野心と敵意に囲まれた日本の前途は厳しい。

ここで、筆者が注目したいのは最後の一文。毎日新聞のこの記事では、憲法には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」となっているけれど、ロシアや北朝鮮を含む国々の「公正」を信じられるのかと疑義を呈している。

ここは非常に重要な指摘。この文は、日本国憲法の前文にあり、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と謳われている。

世界各国の憲法の前文には、憲法制定の由来を記したものや、憲法制定の趣旨や目的をうたったもの、或いは、憲法の理想や基本原則を宣言するものなどがあるけれど、日本国憲法の前文には、憲法全体のエッセンスが凝縮され、憲法の理念を発信する意義と役割が託されているとされる。つまり、日本国憲法の前文は、憲法全体の性格を述べたものであり、その後に続く全ての条文を規定するものだということ。

その前文に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と謳われているということは、"公正と信義がある"という前提で、日本国憲法が成立し、その効力が発揮されることを意味している。

だから、その前提である「公正と信義」自身が揺らいだ場合、その後に続く、日本国憲法条文を有効とすべきなのかという問題が発生することになる。

この辺りについては、幸福実現党が、「公正と信義がない国家については憲法九条を適用除外すべきである」と主張しているけれど、筋としては通っている。

日本国民を拉致し、核やミサイルで脅す北朝鮮。竹島に不法上陸し、親書を付き返す韓国。そして、大使を襲撃して日の丸を奪った中国。彼らの"公正と信義"とやらが、果たして"平和を愛する諸国民"のものとして相応しいのか。

現に今、周辺国から、宣戦布告レベルのことをされている。それでもなお、"公正と信義"を信じるというのは、明らかに異常だと言わざるを得ない。

この機会に、国民も現実に目を向け、憲法改正が難しいのであれば、せめて憲法解釈の見直し論議を大いに進めるべきではないかと思う。


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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    世界の国は日本の憲法を全く知らないのだから.
    憲法前文は飾りだと思えば良い. そして,
    9条があってもあっても集団的自衛権はある
    と思えば良い. 占領下に作られた憲法に
    日本国だけが縛られる必要もあるまい.

    団塊の世代が完全引退する10年後くらいに
    憲法の見直しをやれば良い.
    その頃には教育勅語の価値も再認識されるだろう.
    そうでなければ, 改憲どころの情勢ではあるまい.

    大使襲撃.

    軍が関与しているのではないか.
    ここまで思い切ったことは一般人には無理だ.
    支那では特にそうだ.
    尖閣がらみには軍の関与が昔から言われている.
    2015年08月10日 15:24
  • クマのプータロー

    この事件を奇貨として日中双方に現執行部に我田引水をできる状況になりました。
    日本は言わずと知れた「ジュネーブ条約」がらみで必要な措置をとると明言できること、中共には次期主席がほぼ決まっている習近平のフリーハンドを少しでも無くしておくことです。
    その意味では今回の襲撃事件、中南海と官邸の手打ちで丹羽大使も承知の上かと勘ぐってしまいます。下手人が挙げられても書類上存在しない人間をでっち上げ、セレモニーを行うことなど朝飯前ですから。
    事態の収拾が早ければ早いほどそう感じます。
    2015年08月10日 15:24

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