昨日のエントリーのつづきです。
1.世界観の立場から尖閣を固定せよ
軍事的な尖閣防衛とは別に、もっと金を掛けず、血も流さない方法がある。それは、軍事戦略の更に、上位概念として、尖閣は日本の領土であり、領土問題など元からないのだ、という世界観・政策レベルで推してゆくという手。
「用兵の道は心を攻むるを上と為す。城を攻むるを下と為す。心戦を上と為す。兵戦を下と為す」、認識のレベルで尖閣が日本の領土だと認識させることができれば、侵略される危険はずっと減る。たとえば、中国が東京は中国のものであるといきなり宣言したとしても、世界は嗤って取り合わない。どちらの領土か分からない中途半端な状態が一番いけない。
8月24日、石原都知事は、定例会見で、尖閣の領有権について、次のように述べている。
沖縄返還交渉のときに私も竹下登さんとくっついてたんです。沖縄全体を返還するという条文作るときに、ものすごく島があって名前もない島も岩もあるからね、困ったなあと言ってるから、私たちはヨットの国際レースをやるときに、自分は東経何度何分にいると報告する。それと同じように、いくつか点を打ってその点を結んだ、確か6カ所か7カ所か、その線に入る領土や土地は無名の島も含めてすべて沖縄県として返還するという条約になったんですよ。そのなかにちゃんと尖閣は入ってます。2012.8.24 東京都知事定例会見より
ここで述べられている、点を打って、その中の島や土地が沖縄に返還する条約については、外務省のサイトに掲載されている。次に引用する。
【参考:沖縄返還協定第1条】ここで述べられているように、海洋上に7点とって、それを結んだ海域の内側になる島及び岩礁が沖縄に返還されたのだけれど、実際どの海域なるかについては次の図を参照されたい。思いっきり、この結んだ線の内側に尖閣諸島は含まれていることが分かる。こうした事実をきちんと世界に発信しておくことが大事。
2 この協定の適用上,「琉球諸島及び大東諸島」とは,行政,立法及び司法上のすべての権力を行使する権利が日本国との平和条約第三条の規定に基づいてアメリカ合衆国に与えられたすべての領土及び領水のうち,そのような権利が千九百五十三年十二月二十四日及び千九百六十八年四月五日に日本国とアメリカ合衆国との間に署名された奄美群島に関する協定並びに南方諸島及びその他の諸島に関する協定に従つてすでに日本国に返還された部分を除いた部分をいう。
【参考:沖縄返還協定第2条】
日本国とアメリカ合衆国との間に締結された条約及びその他の協定(千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約及びこれに関連する取極並びに千九百五十三年四月二日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約を含むが、これらに限られない。)は、この協定の効力発生の日から琉球諸島及び大東諸島に適用されることが確認される。
【参考:沖縄返還協定 合意された議事録】
第一条に関し,
同条2に定義する領土は,日本国との平和条約第三条の規定に基づくアメリカ合衆国の施政の下にある領土であり,千九百五十三年十二月二十五日付けの民政府布告第二十七号に指定されているとおり,次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる区域内にあるすべての島,小島,環礁及び岩礁である。
北緯二十八度東経百二十四度四十分
北緯二十四度東経百二十二度
北緯二十四度東経百三十三度
北緯二十七度東経百三十一度五十分
北緯二十七度東経百二十八度十八分
北緯二十八度東経百二十八度十八分
北緯二十八度東経百二十四度四十分
2.用兵の道は心を攻むるを上と為す
また、中国内部でも尖閣の領有権について疑問の声を上げている人もいる。8月24日、広東省広州の電子サービス企業、広東捷盈電子科技の取締役会副主席との肩書を持つ女性の林凡氏は、人民日報の1953年1月8日付の記事で「琉球群島(沖縄)は台湾の東北に点在し、尖閣諸島や先島諸島、沖縄諸島など7組の島嶼からなる」と表記していた事実を指摘し、中国当局が監修した1953年、1958年、1960年、1967年に発行した地図の画像を示し、その多くが「尖閣群島」「魚釣島」などと表記され、日中境界線も明らかに日本領土を示しているとした上で、「中国政府はこれでも釣魚島はわれわれの領土だといえるのか」と疑問を投げかけている。
これに対して、中国国内からは、感情的な反論もあるものの、「知識のない大衆が中国共産党に踊らされたことが分かった」 「資料をみて(尖閣諸島が)日本領だったことが明白に分かった」 「タダで使われて反日デモを行う連中には困る」などと、林氏に賛同する見方も広がっているという。
なぜ中国国内で、こんな意見を出せるのかとも思うのだけれど、筆者は、これは中国政府がわざと見逃していると見る。2010年のノーベル平和賞に中国の人権活動家である劉暁波氏が選ばれたときなんかは、いきなりテレビ放送をブラックアウトさせてまで情報封鎖する中国政府が、林氏の"尖閣は日本領である"発言を見落とすことなんて有り得ない。おそらくわざと拡散させている。
おそらく、尖閣領有権を巡って、国内の反日活動が反政府活動に転化しないよう予防的にさせているの面もあるのではないかと思うのだけれど、それで、中国が尖閣侵攻を諦めたのかというと、必ずしもそうとは限らない。なぜなら、もっと上位から尖閣を絡め取る手があるから。
仮に、尖閣が沖縄県のものであると世界的に確定したとしても、その肝心の沖縄県を中国に編入させてしまうことができれば、尖閣なんてオマケでついてくる。いちいち軍事侵攻なんて手間をかけなくても、殆どタダで手にいれられる。
2005年あたりから、中国は国内で、沖縄は日本に帰属していないとの論文を多数出し始め、沖縄は中国領土だ論を広め始めている。
その工作は沖縄本島にも及んでいて、2006年1月に中国大使館1等書記官が那覇市内で講演した時、「沖縄の人が日本に所属することを望むか、中国に所属することを望むか、それは沖縄県民の決めるべきことだ。沖縄の皆さん、中国語をもっと勉強して話しましょう」と発言したという。
もしも、沖縄が中国の甘言にのって、中国に帰属しますなんて決めようものなら、これまでの努力は一辺に水泡に帰する。これなんかも、「心を攻むるを上と為す」という世界観レベルでの戦略だと見做すことができると思う。
その意味では、たとえ、中国が、国内で「尖閣は中国領土ではない」説を拡散させたとしても、その上位から沖縄丸ごと自分のものにしようとしている可能性があることは忘れてはいけない。古代中国で、弁舌でもって斉の七十余城を帰順せしめた"レキ食其"に、いつ習近平がならないとも限らない。
まぁ、逆にいえば、中国が沖縄が元々中国領だった説を唱えるのであれば、日本も対抗して、台湾に昔のように日本に帰属しませんか、と声を掛ける手だってある。
当然、中国は激怒するだろうけれど、那覇で講演した中国書記官のロジックが許されるのであれば、日本だって「台湾の人が中国に所属することを望むか、日本に所属することを望むか、それが台湾人が決めるべきことだ。台湾の皆さん、日本語をもっと勉強して話しましょう」と言っていいことになる。中国は沖縄の主権帰属は未確定だと嘯いているけれど、台湾は未確定どころか、日本に帰属していた過去がある。
もしかしたら、中国は、昨今の李大統領の竹島上陸等々で日本の世論が沸騰しているときに、下手に尖閣に手を出して、日本の国論がごろっと変わるのを警戒しているのかもしれない。そこで尖閣について一歩引いたように見せながら、沖縄本土への工作に力を入れて、沖縄を丸ごと手にいれる方向に舵をきっていることだって十分考えられる。
その意味でも、やはり、対中国の戦場は沖縄本島そのものである気がしてならない。
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この記事へのコメント
白なまず
長文引用で申し訳ありませんでした。
sdi
あくまで私の想像ではありますが、北京の「党中央」は尖閣を含む東シナ海より南シナ海のほうに傾注したいと考えているのではないでしょうか?。スプラトリー諸島の情勢の緊迫度は尖閣諸島のそれを上回っていますし、ゲームプレイヤー(利害関係国)の多さが輪をかけています(実は日本もプレイヤーの一人のはずなのですが)。北京が自分の都合でこれ以上のエスカレーションを望まないというのであれば、こちらはその間に離島防備の進めるべきです。南西諸島方面の海保の物理的な戦力増強、離島への警察力の速やかな派遣体制の整備(MV-22はまさにこのための機体)、沖縄本島の陸・空の自衛隊戦力強化等、できることは山ほどあります。
opera
日本の防衛戦略としても、中長期的には、尖閣のミサイル基地化や陸自の常駐よりも、『動的防衛力』の確立、すなわち「新規の機動艦隊の創設」というのが最もオーソドックスかつ汎用性のあるやり方だと思います(実際に、最近アメリカから提案があり、日本はお金がないという理由で断ったという話もあります)。
また、戦略目標も、かつてソ連海軍をオホーツク海に封じ込めたように、日米及び隣接諸国と協力して南シナ海に封じ込める、ということになるのではないでしょうか。そのため、尖閣防衛を含む東シナ海の対中政策は、単に国土防衛というだけでなく、その出口を塞ぐと同時に、シーレーンを確保するという意味になると思います。
このような状況を、順不同で大雑把に冷戦末期と比較すると、
・デフレ脱却:第二次オイルショックの克服
・国土強靭化;三全総から四全総へ
・集団的自衛権、離島防衛法等の整備、海上保安庁の権限強化:自衛隊法等の関係諸法令の改正
・オスプレイ、ガメラレ
ちび・むぎ・みみ・はな
信用すれば戦争が始まる.
日本は孫文にやられたばかりだろう.
日本がやることは「自衛隊をおく」に尽きる.
当然, 支那は日本ボイコットに取り掛かる.
日本人がやることは, 新聞や経団連が如何に
騒ごうと, 日本は支那無しでもやっていける
事を理解しておくこと.
真っ赤な(嘘)朝日と近衛文麿の大衆煽動に
やられたばかりだろう.
兎に角, 江戸時代からずっと現在までの
支那の観察者が述べたことを理解するなら
本日の1の主題は的外れ.
日本人は支那人を本当に理解していない.