尖閣防衛の本丸 (中国からの侵略について 前編)
今日、明日と2回に分けて、尖閣関係のシリーズエントリーをしたいと思います。
1.尖閣出動に関する指針の策定
8月13日、政府は尖閣諸島での武力衝突が起こる可能性を念頭に置き、自衛隊の尖閣出動に関する指針の整備に入ったことが明らかになった。
これは、7月26日の衆院本会議で野田首相が「尖閣を含む領土・領海で不法行為が発生した場合は、自衛隊を用いることも含め毅然と対応する」と、尖閣への自衛隊出動を検討する考えを表明したことを受けたもので、指針には、中国の漁船・漁業監視船などが尖閣諸島に接近したり上陸した場合に、自衛隊の出動指針や段階別対処などに関する具体的な内容が盛り込まれるとされる。
政府は、尖閣周辺で中国の漁業監視船が海上保安庁の巡視船と衝突したり、にらみ合っている隙に、漁船に乗った中国の民兵隊が尖閣諸島を占領する可能性が高いとみていて、これらを海保の船だけで止めることは難しいことから、具体的な指針作りとなったようだ。
既に政府方針を受けて、自衛隊制服組トップの岩崎茂統合幕僚長が尖閣出動に関する対処方針の策定を7月末に指示している。
ここでは、公船と漁船の日本領海侵入や尖閣への不法上陸を想定。平時でも有事でもない「グレーゾーン」の事態にも対応できるようにするためで、例えば、先日の香港抗議船による尖閣不法上陸などもこれに該当すると思われる。
あの時は、抗議船一隻による不法上陸であり、海保と沖縄県警だけで十分対処できたのだけれど、抗議船が何十隻も一度にやってきたり、「海軍予備部隊」と位置づけられる中国国家海洋局の海洋調査船が付近に展開した場合は海保では対応が不可能になる。また、不法上陸した者たちが重武装した民兵や軍人だったりした場合では、県警レベルでは手が出せなくなる。
そうした事態にも対応しなければならない可能性があることを考えると、自衛隊の尖閣出動に関する対処方針を策定するのは当然だともいえる。既に、不法上陸を許してしまった以上、遅きに失したとも言えなくもないけれど、それでも一刻も早い方針策定は必要。
一方、現場でも、平行して島嶼防衛の動きがある。今月下旬から9月26日まで、西太平洋のテニアン島で陸自と海兵隊の合同訓練を行う。これは、離島侵攻を想定した島嶼防衛の能力向上のため実動訓練で、自衛隊から約40人、米海兵隊から数百人が参加するようだ。今回の訓練は、今月初めにアメリカで行われた森本防衛相とレオン・パネッタ国防長官の日米防衛トップ会談で決定したもので、防衛省は「特定国を仮想敵国として狙ったものではない」としているけれど、まぁ、これは誰がどう見ても、尖閣を狙う中国や、韓国が不法占拠している竹島に対する牽制だろうと思われる。
では、実際のところ、尖閣は守り切れるのか。
2.尖閣防衛の本丸
アメリカ海軍大学のジェームズ・ホルムス准教授は外交誌「フォーリン・ポリシー」9月号の巻頭論文「2012年の中日海戦」の中で、日本と中国が尖閣諸島をめぐり軍事衝突した場合の展開を予測している。
論文は「現実の軍事衝突は、米国が日本を支援して介入する見通しが強いが、日中両国だけの戦いも想定はできる」とし、日中両国の海洋部隊が戦闘に入った場合について、まず戦力や艦艇の数量面では中国がはるかに優位に立つと述べているのだけれど、実戦闘では、日本が兵器や要員の質で上位にあると指摘していて、中国側の多数の通常弾頭の弾道ミサイルが日本側の兵力や基地を破壊する能力を有するものの、日本側が移動対艦ミサイル(ASCM)を尖閣や周辺の島に配備し防御を堅固にすれば、周辺海域の中国艦艇は確実に撃退でき、尖閣の攻撃や占拠は難しくなるとしている。
ただ、いくらアメリカが介入しなくても日本が有利だといっても、撃退するためには尖閣および周辺の島々にミサイルを配備することが前提の話。逆に言えば、もしも尖閣が中国に占領されてしまって、そこにミサイルが配備されてしまったら、今度は、自衛隊が近づけないことを意味する。
だから、中国が尖閣に上陸するような事態となれば、可及的速やかに奪い返さないと大変なことになる。その意味では、日米合同での島嶼防衛の実動訓練は大きな意味を持つと思うけれど、それ以前にそんな事態を招かないように、外交的・軍事的防備を固めて置く必要がある。
尖閣を巡る、日中間の争いに関して、今のところ、アメリカは、特定の立場を取らないという姿勢でいるけれど、尖閣自身は日米安保の適用対象としている。
8月16日、ヌランド国務省報道官は 「尖閣諸島は『日米安全保障条約第5条』の適用対象だ」と述べていて、シュライバー元国務省次官補も15日、「アメリカ政府は衝突が発生するのを避けることを望んでいる。しかし、もし衝突が避けられないのであれば、アメリカ政府は日米安全保障条約に従って、日本を守り、しかるべき結果に責任を取る準備をする」とコメントしている。
たとえ、口だけだとしても、バックに世界最強のアメリカ軍がついている可能性があると思わせるだけで十分抑止力になる。
8月24日、訪米中の中国人民解放軍の蔡英挺副総参謀長は、アメリカ側との会談で、尖閣諸島を日米安保条約の適用対象だとするアメリカの立場に強く反対すると伝えているけれど、中国にしてみれば、尖閣を巡って通常戦闘では、日本単独を相手にしてさえ勝てるかどうか怪しいのに、アメリカまで援護にくるとなると、全く手が出せなくなる。
だから、尖閣に限ってみても、尖閣に陸自を常駐させるか、ミサイル基地を建設して要塞化しない限りは日米安保を堅持する方向でいった方がいい。第一、離島は尖閣だけじゃない。6800を超えると言われる日本の離島のひとつひとつに軍事拠点を設けたり、ミサイル配備するなんて、お金がいくらあっても足りない。
予算も人も削られていっている日本の国防を考えれば、中期防衛力整備計画で示されているように、必要な時に、必要な兵力を素早く投入する「動的防衛力」を進めるのが現実解。
その意味では、沖縄へのオスプレイ配備は、その航続距離を考えれば「動的防衛力」の構築そのものだといえる。オスプレイの配備については、沖縄の現地で反対運動が続いているけれど、先日の香港活動家による尖閣上陸を受けて、配備賛成の動きもあるのだという。
現実に、日本側の憲法上の制約、自衛隊の人員や装備等々を考えると、今日明日に尖閣をミサイル基地化することは殆ど不可能。だけど、オスプレイ配備によって、それと同様の効果が見込めるとなれば、どうすべきかなんていうまでもない。その意味では尖閣防衛の本丸は、沖縄本島にあるといえるのかもしれない。
明日につづきます。
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この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
政府に守る気があるのかと言う点を除いては.
本当に守る気があるなら, 前回述べたように,
完全装備の戦闘部隊を単におけば良い.
数はそれほど問題ではなく, オスプレイも不必要.
「自衛隊が存在する=日本国民は本気」
これこそ世界の国がもっとも恐怖する事実なのだ.
大東亜戦争に散った多くの魂が日本を守る.