8月17日、韓国のKBSテレビは、韓国軍が、竹島と離於島を守るため、「独島・離於島艦隊」の創設を進めていると報じた。
竹島は日韓間で、領有権問題を抱えているけれど、中韓間でも離於島を巡って、領有権問題を抱えている。
離於島とは、中国と韓国が共同管理している排他的経済水域内にある位置する岩礁で、黄海の出口にある岩。ところがこの岩は、水面下にあって、干潮時でも海面上に顔を出すことはない。
国連海洋法条約の第121条には、「自然に形成された陸地であること」「水に囲まれていること」「高潮時に水没しないこと」の3条件を満たすものが島と定義しているから、この定義に従えば、 離於島は島じゃない。
ところが、韓国は海面下4.6mにあるこの離於島の上に櫓を組んで、2003年5月にヘリポートや港湾施設を備えた綜合海洋科学基地を建設して実効支配を始めた。この時中国は、特段の抗議等はしなかったのだけれど、2006年に離於島を「蘇岩礁」と呼んで、突然、管轄権を主張し始め、領有権問題が発生している。
そして、2012年3月に、中国は「蘇岩礁周辺を含め我が国のEEZのパトロールを強化する」とし、4月下旬には中国とロシアの海軍が黄海で大規模演習を実施し、その後、「EEZの確定を目指し、韓国と談判する」と発言した。
韓国側はそれを受ける方向のようなのだけれど、これを進めると韓国が自爆する可能性が指摘されている。というのは、領有権の根拠とする理論が離於島と九州西方の日本との共同開発海域とで違っているから。
排他的経済水域は自国の沿岸から200海里まで設定できるのだけれど、その水域が隣接国の排他的経済水域と重複する場合は、沿岸国同士の交渉によってEEZを確定しなければならない。このとき、その線引きを何処でするかについては、両国のEEZの基点からの中間線で引く「中間線論」と自国の沿岸から伸びる大陸棚の突端で引く「大陸棚自然延長論」の二つの方法がある。
最近は、国際的に「中間線論」の方が認められつつある
ところが、この中間線論で持って、九州西方の共同開発海域に中間線を引くと、その海域の殆どが日本のEEZとなる。この海域は、膨大な天然ガスと石油があると見られているのだけれど、韓国はこの海域のEEZは「大陸棚自然延長論」で線を引くべきだと主張している。
これは離於島を起点とするEEZは「中間線論」を主張しているのと明らかに矛盾している。要するにダブルスタンダードで領有権を主張しているということ。
だから、中国との離於島を起点とするEEZの確定交渉において、中国から、九州西方海域は「大陸棚自然延長論」を主張しているじゃないかとその矛盾を衝かれたらどうするのだ、と指摘されている。
まぁ、その中国とて、離於島や東シナ海ガス田には、「大陸棚自然延長論」を主張するくせに、ベトナムと向かい合う南シナ海では、よりEEZが広くなる「中間線論」を主張してる。要するに、自国の利益の為なら、ダブルスタンダードなんて平気の平左。それが国際社会の現実。
このように相手国とのEEZ境界が確定せず、揉めそうな海域について実効支配しようと思えば、その海域への軍事プレゼンスを発揮するのが一番手っ取り早い。EEZが未確定でも、自国の軍艦がいつもパトロールして、相手国の資源調査船なり、採掘船なりが侵入できなければ、その海域は事実上の自国のEEZになる。
そういったことを考えると、今回の韓国の「独島・離於島艦隊」の創設は、竹島と離於島起点のEEZの実効支配をより強化するための方策ではないかと考えられる。
韓国は、「独島・離於島艦隊」を、最新鋭イージス艦2隻や駆逐艦4隻、潜水艦2隻など約10隻の艦艇で構成する計画で、更に、竹島から約90キロ離れた鬱陵島に海軍の前進 基地を置くことも検討しているそうなのだけれど、北朝鮮の脅威が去ったわけでもないのに、海軍をそちらに向けて大丈夫なのか。
いずれにせよ、実効支配には武力という"力"がないといけないのは現実としてある。
先日、テレビ番組で、民主党の前原幹事長は、竹島問題を聞かれて「根本的解決は実力行使しかない」と発言し、出席していた猪瀬都副知事から「実力行使の中味は何か」とすかさず問われていた。実効支配されている竹島に実力行使となると、自衛隊による軍事的奪還しかない。実質的に戦争になる。
前原氏は、猪瀬氏に突っ込まれて始めて自身の発言の拙さに気付いたのか言を左右して誤魔化していたけれど、"口だけ番長"とはいえ、あまりに口が軽すぎる。野党であればいざしらず、与党の政調会長。実効支配されている島を取り返すのは武力行使しかないというのはその通りなのだけれど、それを公に発言するいうことは、同じ理屈で、中国が尖閣を武力行使して獲ることも了解したことになる。
これは、韓国がEEZで「中間線論」と「大陸棚自然延長論」を自分に都合のよいように使い分けているのを中国に利用されるのと同じように、尖閣に対しても逆利用される危険を孕む。
口だけ番長が口だけで収まっている分にはいいかもしれないけれど、その口が災いを呼ぶかもしれないことには十分留意する必要がある。

この記事へのコメント
日比野
bizen
>離於島起点の中間線論に従った海域を主張していて
韓国は離於島を「島」と呼び韓国のものだと主張してはいますがEEZ・大陸棚設定の起点とは見なしていません。「韓国のEEZ内にある水中暗礁」というのが韓国政府の公式認識です。訂正したほうがよろしいかと。
それにしても、中国に対しては中間線論を、日本に対しては大陸棚自然延長論を主張する様は実に滑稽ですね。政府のお偉方はダブスタに気づいてるんでしょうか・・・