8月18日、自民党の谷垣総裁は名古屋市内で講演し、「9月8日までの会期で政権側の出方を見ながら、不信任案や問責決議案をどう使うかを念頭に考えていく」と衆院での内閣不信任決議案、参院での野田佳彦首相問責決議案の提出をそれぞれ検討する考えを示した。
ただ、一度自公以外の野党7党が提出した不信任案に棄権という形で否決に回ってから、10日かそこらでもう再提出するしないの話がでるとは、流石に節操がない。まぁ、話し合い解散への動きが見られないことへの催促の意味合いがあるかもしれないと思えなくもないけれど、谷垣氏が昨今の尖閣・竹島問題について、「甘く見られているところがある。もはや民主党政権が外交を立て直すのは不可能だ」と批判しているところから見ると、或いは、これ以上、外交問題について民主党に任せることは本気で拙いと思っているのかもしれない。
だけど、この問題について、自民党に責任がないわけじゃない。民主党の樽床幹事長代行は、谷垣氏の批判に対して、「これまで何十年間にもわたって解決してこられなかったのは、どちらの政党か。自分たちがほったらかしておいて、今になってお前らが悪いと言うが、原因を作ったのは、どちらなのか」と、反論している。これはまぁ、その通りなのだけれど、原因を作ったのが誰にせよ、外交の責は、国政を預かる現与党が負う。それから逃れることは出来ない。
だから、お前が原因だとなじったところで、自分の責任がなくなるわけじゃない。政権交代後しばらくは何をやってもジミンガーを唱えていれば、マスコミも味方してくれたし、なんとかなったのかもしれないけれど、いざ、自身の生命と財産が脅かされると国民が感じ始めると、そういった言い逃れは通用しなくなる。
領海侵犯や不法上陸といった領土侵略が実感として感じられる事態が続くと、国民とて、現在ただいまについて、ちゃんと対応しろ、という声が大きくなるのは当たり前。だから、いくらジミンガーをしたところで、それで許してはくれない。
むしろ、自民にしろ、民主にしろ、尖閣・竹島のように国民に対して十分な説明を怠り、なぁなぁで済ませてきた部分のツケが吹き出し、面と向かい合わなければならなくなったと捉えるべきだろう。
この点について、自民党の石破氏は自身のブログで次のように述べている。
竹島問題については、今まで自民党政権時代も含めて、なるべく事を荒立てないように対応してきたことのツケがこのような形で表れてしまったと言わねばなりません。と、石破氏はこれまでの自民の対応について、間違いを認めている。今回の強制送還にしても、民主党は小泉政権時の対応に倣ったと言われているけれど、石破氏曰く、これまでの自民の対応が間違っていたとするのなら、それに倣った民主の今回の対応もやはり間違っていたことになる。
1905年に国際法に則って我が国の領土であることを確認し、以来今日に至るまで一切放棄した事実はありません。日本が主権を回復することが確実となるサンフランシスコ講和条約が発効する直前の時期を狙って、韓国が一方的に竹島を含む水域に主権宣言を行い、1954年以降不法占拠を続けているものです。
国際法はもとより、歴史的にも韓国の主張に全く正当性は認められないのですが、政治的にも明らかに対立していたソ連とは異なり、また過去の植民地支配についての経緯もあり、穏便な対応をしてきたことが韓国を増長させたことは否めません。
ましてや、天皇陛下に関して「日王(天皇陛下)が韓国を訪問したければ、独立運動で亡くなられた方々を訪れ心から謝罪していただきたい。『痛惜の念』だとか、こんな単語ひとつで来るというなら来る必要はない」などという暴言を吐くような非礼が許されるはずはありません。
[中略]
しかし、領土問題について、国民に対し正しい認識を問いかけることを怠ってきた我々自民党の責任は、免れることができません。「竹島は日本固有の領土である」と教科書に記述するだけでは全く不十分であり、国際法的・歴史的に何故そうなのかを韓国の主張と比較する形で記述すべきですし、それこそが教育というものです。北方領土についても同様であり、領土問題は存在していないにしても尖閣諸島についてもそうでしょう。
尖閣に不法上陸した香港の活動家を強制退去させる、という政府の今回の対応も、明らかに誤りです。
「小泉政権時の対応に倣った」とあたかも自民党と同じことをして何が悪いのだと言わんばかりの姿勢ですが、あの時と今とでは状況が全く異なります。その後中国船が再三にわたり領海侵犯を行い、漁船が海上保安庁巡視船に体当たりするなど、中国側の行動はさらにエスカレートしているにもかかわらず、同じ対応でよいという思考法は一体何なのでしょう。石破茂ブログ「竹島、尖閣など」より抜粋
石破氏は、小泉政権時と今回では、中国の行動は増々エスカレートしていることから、全く状況が違うとし、それでも同じ対応でよい筈がないとしているけれど、確かにこの点については説明が必要になるだろう。なぜなら、2004年の小泉政権時の強制送還という対応をしても、領海侵犯が収まるどころか、またしても不法上陸を許してしまった。これは強制送還という措置は、なんら抑止力になっていないことを意味してる。だから、今後も同じことが起こらない保証は何処にもない。
それに、何より気になるのは、今回の問題で野田政権の初動が遅かったこと。特に、韓国の李大統領の天皇謝罪発言に対する反応が鈍かったように思う。
「世界地図から韓国がなくなる日」のエントリーでも述べたように、陛下を侮辱することは日本を侮辱することと同義。これに対してただちに反論できなければ、国民の代表である資格はない。
国民主権国家において、選挙で選ばれた政治家が国民の意見を代弁できなければ、その時点で国民主権ではなくなる。野田首相にしても、玄葉外相にしても、天皇謝罪発言について抗議したのは翌日の15日。14日の時点では、玄葉外相は、「報道は承知しているが、私は一切聞いていない」とスルーしているし、野田首相は官邸に籠ったまま反応はなかった。
これでは、多くの国民は、民主党は自分達を守る気はないのだなと感じたのではないか。李大統領の天皇謝罪発言にしても、原文はもっと過激な言葉だったという情報があちこちで出てきている。そうした事も含めて、謝罪発言に対する「謝罪」を未だに要求していないのはどういうことなのか。
韓国紙の一部には、「日本政府はこれまで『竹島は日本の領土』と主張しながらも、特別に強い挑発はしなかったが、大統領の独島訪問以後、日本のやり方は根本的に変わった…独島問題は未知の領域に入った…政府は内心では緊張しながら対策準備に腐心している」と事の重大さに気づき始めているようだけれど、それこそ陛下御自身のお言葉でもない限り、そう簡単に事は収まらないだろう。
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この記事へのコメント
とおる
また、日本的な「あえて言わなくても分かってくれるはず」という方法も対外的には止めるべき。
日本国憲法は、もう既に死んでいる。
・日本国憲法は、1946年公布、1947年施行。
・李承晩ラインは、1952年に韓国が一方的に引き、日本の竹島を侵略。
・日本国憲法前文「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
opera
この点、中韓の方がむしろ敏感で、鄧小平の改革開放政策も、日本国内の左翼やマスゴミと連動した韓国の歴史問題の外交問題化も、見方を変えれば日(米)への擦り寄り政策と言えなくもありません(韓国のそれは相当に屈折していますが)。
その結果、中国の台頭に備えるべき自衛隊の南西方面展開が10年以上も遅れ(方針転換は小泉政権下)、未だに防衛費を削減し続けている有様です。
尖閣諸島の都購入や竹島問題のICJ提訴等は、それ自体は画期的な出来事ですが、それらを区々に対処療法的に行なうのではなく、全面的な対中・対韓(北朝鮮への対応を含む)政策の見直し、ひいては日本の基本的外交戦略にどう位置付け恒久化していくのかに知恵を絞るべき時期になったように思いま
ちび・むぎ・みみ・はな
同氏の支那おもねりの弁で保守派の血圧が相当に
上がった事実はそれ程昔のことではない.
それでも, 自民政権の時には世界における日本の
位置付けについての構想ある程度はあった上での
個別の対応だから, 反日政権が個別の対応を真似
すれば事態が酷くなるのは当然. 何時の間に
日本の政治的風土がこうも幼稚化したのか.
人民解放軍軍人を友人達と発言した石破氏が総裁
を狙うのだから自民党支持が増えないわけだ.
それにしても谷垣総裁.
嘘付立ちの大嘘付親分を信頼して何をするのか.
日本の政治的風土の幼稚化もここに極まれり.
自民党は総裁に色目を使っている世代を一つ飛ばし,
若い世代から総裁を選ぶのが良い. 中曽根・森
爺さん達の役目の筈だが. 大連立に狂っている場合
ではない.