8月17日、法務省入国管理局は、香港の活動家らが尖閣の魚釣島に上陸した事件で、出入国管理法違反(不法上陸)容疑で逮捕された7人を那覇発香港行きの民間の飛行機で強制送還した。 また、残る船長ら7人は、自分たちの船に乗って香港に向けて出発した。
政府は今回、不法上陸や不法入国以外に犯罪の容疑がない場合、刑事責任を問わずに強制送還する「早期決着」の方針でいたようで、入管もこの意向に沿い強制送還となった。
15日に上陸した際、野田首相は「法令にのっとり、厳正に対処する」と言っていたくせに、刑事責任を問わず強制送還したということは、法令に則らず、厳正にも対処しなかったということ。やはり口だけだった。わずか1日2日でバレる嘘をつくくらいなら最初から話すべきじゃない。
今回、表向きは、活動家たちの尖閣上陸を阻止できなかった形ではあるけれど、実際は、日本側が無理に阻止せず、結果として上陸されても構わないとしたうえで逮捕したというのが真相のようだ。
その辺りは、香港サイドも感づいていたようで、香港に拠点を置く鳳凰衛視(フェニックステレビ)は、「新聞今日談」という番組で、上陸できたのは、日本側が自制したからだという見方を示している。
元海上保安官で、一昨年、尖閣諸島中国漁船衝突映像をリークした一色正春氏は、今回の事件について、ツイッターで次のように述べている。
今回の尖閣上陸騒動の映像を見てわかったこと。海上保安庁は上陸を阻止しようと思えば十分可能であった。海上保安庁の巡視船は抗議船の進路を妨げ一定の方向に誘導し、その先には警察官が待ち構えていた。待ち構えていた警察官は、直ちに逮捕しなかった。また、佐藤正久参院議員もツイッターで次の様に述べている。
8月15日 海保の対応、上陸前は抗議船に対し放水や接舷規制(進路妨害)のみ。上陸後は逃走した抗議船に海保巡視船2隻で両側から挟み強行接舷で保安官が乗り込み捕捉している。要は当初から上陸阻止が目的であれば上陸前から強行接舷、捕捉可能だったということ。8月15日の上陸を許した野田政権、国益損失だ確かに、香港の抗議船の両舷を海保の船で抑えている画像をみると、その海保の操船技術の高さが分かろうというもの。逃走した船に対して、こんなことをやってのけているのだから、上陸前でも同じように強硬接舷はできただろうと思われる。
ただ、今回、逃走した抗議船を挟み込んだとき、抗議船の船員達は、あらかじめ積み込んでいた煉瓦を海上保安庁の船に向かって投げて応戦したという。この模様は、香港のフェニックステレビが18日に放送したようなのだけれど、これが本当であれば、公務執行妨害にあたると思われる。
政府は、不法上陸以外に容疑がなければという前提で、強制退去だった筈。不法上陸以外に容疑があるのであれば、そこらも明らかにする必要があるし、死傷者が出ることを恐れ、あえて"上陸"させたのであれば、「日本の法律に違反した外国人」として処分しなければ上陸させた意味がない。
東京都の石原都知事は、今回の日本政府の対応について、「歴然とした刑事犯罪だと思いますよ。それをただ返すというのは、日本は本当の法治国家とは言えない。また同じことが起きると思うね」と述べているけれど、その通り。
強制退去という方針を優先するのであれば、上陸を阻止した上で追い返さないと駄目。
こうしたチグハグな対応は、政府や野田首相に領土に対する明確なポリシーがないからではないかと思う。ポリシーがないが故に、場当たり的に、その場さえ収まればいいという対応になってしまう。もっといえば、戦略の階層でいう「世界観」がない。
他国の領土領海に不法に侵入し、上陸することを許すということは、国家主権を脅かされても何もしないことを意味するし、領土侵略されても構わないと同義。今回の対応はそんなメッセージを世界に発信してしまった。
もしも「世界観」レベルできちんと戦略を構築するのであれば、例えば、「世界の秩序と安定を守る」という世界観を掲げ、それを脅かす勢力に対して断固たる処置を取るとした上で、上陸を阻止して追い払えばいい。今回の上陸に際して、海保は巡視船を10隻出していたそうだから、そうした世界観を掲げた上で、抗議船と海保が対峙する画像なり映像なりを世界中に発信するべきだったと思う。法的制約で自分から発砲も出来ず、接舷のみで制止しようとする海保の映像の何処に問題があるのか分からない。
しかも、相手が御丁寧に煉瓦まで投げつけているのだから、その映像もばっちりと全世界配信すれば、どちらに非があると感じるのか言うまでもない。ここでは、何より、「世界の秩序と安定を守る」という世界観レベルでの正義を掲げることが大事であって、その為にこうした行動にでるのだという態度には全然説得力がある。
その観点からいえば、今回政府が取った、あえて上陸させただの何だのは「仕事の仕方、会戦の勝ち方」といった"作戦"レベルの話であって、戦略の階層ではずっと下位の概念。
まぁ、今回の強制送還にしても、2004年の自民政権時の強制送還にしても、政治判断はしても、世界観を出すことなしに事をすませてきた。ただ、領土問題化すればするほど、自身の世界観や正統性の提示がより重要になってくる。たとえ嘘でも、皆が信じてしまえば、それが真実になってしまうから。
政府は今回の上陸について、海上保安庁が事件の様子を撮影したビデオ映像を非公開にする方針でいるという。それは、映像を国民に示す意味、効果がある反面、映像公開が、活動家らのアピールに加担することになるとの懸念があるがその理由のようなのだけれど、それは「世界観」がないからそうなるのであって、「世界の秩序と安定を守る」という世界観があれば、正義を脅かす存在を公開することについて疑念の余地はない。
もしかしたら、ビデオに煉瓦を投げつけられる映像があったりして、公務執行妨害であることがバレてしまうから、なんとか公開せずに済ませたいなんて思惑があるのかもしれないけれど、ちゃんとした世界観を提示できれば、そんなことは問題ではなくなる。
ただ、「世界の秩序と安定を守る」という世界観では、たとえわざとでも"上陸"させてしまったというのは明らかな失点であり、今からこの世界観で勝負するのは少し工夫がいるかもしれない。
だけど、相手は相手で、今回の上陸をもって大々的にアピールをすることはもう明らか。だから、その上位概念で彼らの行動を"非"とするような世界観を出していく必要がある。
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この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> 方針でいたようで、入管もこの意向に沿い
> 強制送還となった。
今でこそ自民党は非難しているが, ちょっと前には
谷垣総裁が叫んでいたことだ. 国民は, 自民党政権でも
同じことをやっただろうと思っている.
それ位, 長年の自民党政権に対する国民の不信は大きい.
総裁のトンチンカンは野党ゆえ注目されなかったが,
田母神航空幕僚長の更迭は国民の胸に刺さった大きな刺だ.
最近の自民党はこの不信の刺をそのままに政権交替を
叫んでいるが, それは順番が違うのではないか.
自民党へ一般国民の支持が向かないことが証明している.
自民党執行部にしても, 森のお爺さんにしても,
国民の目を見つめようとしないやり方には明日はない.
もう少し自民党若手の活動を謙虚に学んだらどうか.
美月
▼「自衛隊、外国軍に技術支援 6カ国対象、ODAの枠外で」
http://www.asahi.com/politics/intro/TKY201208250566.html
(ネット記事より引用・開始)・・・防衛省・自衛隊が、東南アジアなど6カ国の国防当局や軍を対象に、地雷除去や医療など非戦闘分野の技術支援を始めた。外務省主管の政府の途上国援助(ODA)は外国軍への支援を禁じるものの、防衛省の支援はODAの枠外で制約を受けない。対象国は歓迎するが、議論が尽くされていないとの指摘が出そうだ・・・(引用・終)
全文は新聞を読まないと分からないのですが、内容によれば、今年初めに防衛省が調査団を派遣、現地調整は既に終了、対象国は歓迎しているそうです。主に海図作成技術とか、潜水病治療のノウハウ、地雷発見・処理技術、軍事病院・災害救助活動などの衛生分野での技術支援、というような事が書かれてあって、将来の東アジア周辺情勢と絡めて、非常に考えさせられる記事でした。
「外国軍」には中国軍は含まれていませんでした。中国を取り巻く諸国(6国
とおる
http://blog.goo.ne.jp/taezaki160925/e/70222262dadeefa3fb2b557f9d3e488c#comment-list
なのに、尖閣諸島に上陸した中国人には、罰金を科せられず、単に不法入国のみ。
民主党の日本国政府は、国内で日本人を2級国民として差別。
http://www.fetang.com/