竹島問題の続きです。
8月12日、政府は、李大統領の竹島上陸問題に対し、「日韓シャトル外交」を当面凍結する検討を始めた。これに伴い、野田首相の年内の訪韓も見送られることになる。
政府関係者は、「現時点でシャトル外交をやる空気ではない。一線を越えてきた韓国には、毅然と対応する」と指摘。今後は、李大統領の出方を見極めた上で、シャトル外交の扱いを最終判断する方針だという。
だけど、李大統領にとっては、任期も来年2月までと残り少なく、失うものが余りないという意味で強気に出れている面もあるかもしれない。ただし、日韓EPAや日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は間違いなくストップするから、経済・国防面での影響は避けられない。
8月11日、玄葉外相は、竹島問題について、国際司法裁判所(ICJ)への提訴を検討する方針を示したけれど、国際司法裁判所で裁判を行なう為には、紛争当事国が裁判所への付託に同意する必要がある。
日本はこれまで、1954年と1962年の2回、国際司法裁判所(ICJ)へ提訴している。1954年の提訴は、サンフランシスコ条約で韓国による竹島領有権要求が却下された後、韓国が駐留部隊を竹島に上陸させたのに対して、日本政府は国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案したもので、1962年の提訴は、その年の11月に訪日した金鍾泌中央情報部長に対して、大平外相が竹島問題をICJに委ねる事を提案したもので、いずれも国交回復前の話。勿論、韓国は国際司法裁判所へ提訴を2回とも拒否している。
その例に倣えば、今回、日本が国際司法裁判所へ提訴したとしても、韓国が拒否するものと思われる。
元外務省職員で作家の佐藤優氏は、提訴を通じて、竹島問題が国際的に認知されることで日本側に有利に働く可能性があるとし、1965年6月22日に日本と韓国の外務大臣間で交換された「紛争の解決に関する交換公文」という外交文書の中で、「両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかつた場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によつて解決を図るものとする。」と記していることを指摘している。
今回の李大統領の竹島上陸は、ロンドンオリンピックの最中のことでもあり、日本側の報道がそっちに気を取られ、竹島は、過熱しない隙を狙った面もあったのかもしれないけれど、その肝心のオリンピックで韓国はやらかしている。
もう既に多くの人が知っていると思うけれど、8月10日、サッカー3位決定戦である日韓戦後、韓国代表チームの朴鍾佑(パク・チョンウ)選手が試合後、「独島はわが領土」と記されたプラカードを掲げ、竹島問題をアピールした。これは明らかにオリンピック憲章に違反している。
オリンピック憲章では、競技会場での政治的パフォーマンスを一切禁じていて、オリンピック憲章51条には、次の様に定められている。
50 広告、デモンストレーション、宣伝朴選手がプラカードを掲げたのは、試合が行われた、カーディフのミレニアムスタジアムだから、思いっきりオリンピック・エリア。しかも、その画像は韓国で大々的に報道され、ツイッターでも拡散しているから、どう言い繕っても言い逃れ出来ないレベル。
1. IOC 理事会は、全ての広告やその他の宣伝が許可されうる原則と条件を決定する。
2. オリンピック開催場所の一部であるとみなされるスタジアム、会場、その他の競技エリアの、中と上空ではいかなる形の広告または他の宣伝も許されない。スタジアム、会場、他の競技グラウンド内では、商業目的の設備や看板広告は許可されない。
3. オリンピック開催場所、会場、他のオリンピック・エリアにおいては、いかなる種類の示威行動または、政治的、宗教的、人種的な宣伝活動も認められない。
[中略]
この規定に違反した場合には、かかる関係者の失格または資格認定の取り消し処分となることがある。本件に関するIOC 理事会の決定を最終とする。
8月11日、国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報部長は定例記者会見で、「政治と五輪を一緒にしないというのが原則。人々は政治的な意見を持てるが五輪中は違う」と述べ、調査に乗り出す方針を示している。委員会は、朴選手がメダルの授与式に出席しないよう警告し、結果、朴選手は表彰式に参加できなかった。
更に、この問題についてFIFAも、賞罰委員会を組織して、くだんの行為が故意だったかを調査する方針だという。まぁ、韓国国内的にみれば、サッカーで日本に勝つわ、大統領が竹島に上陸するわで、スッキリした気分を味わっているのかもしれないけれど、その後のことを考えると決して良い方向に進むとは思えない。
日本国内に限ってみても、韓国との関係悪化は当然のこと、政権交代以来、なにかと韓国に甘い顔をしてきた民主党政権に対する国民の目は増々厳しくなる。唯でさえ、内閣支持率や政党支持率が低迷している。そこへきて、こんな事態が起こった以上、形の上だけでも"毅然"とした態度に出ざるを得ない。
ただ、今回の韓国の暴挙は、中国による尖閣侵略をやり難くした面があるかもしれない。今回のように、竹島問題が一段とクローズアップされた状況で、中国が民兵なり、活動家なりを尖閣に上陸させようものなら、日本の世論は、侵略を受けたと受け止めてしまうだろう。それは多分に感情的なものが含まれているのかもしれないけれど、そうであるがゆえに、政府への突き上げはより強烈になる。
流石に中国は、早くもその辺りを察知し、警戒している。8月11日、環球時報は、李大統領の竹島上陸とメドベージェフ・ロシア首相の北方領土上陸について、「中国は領土問題でロシアと韓国の立場を支持し、共同で日本に対処すべきだ」とする社説を掲載している。
その中で、「日本がロシアと韓国に対する怒りを釣魚島に向けて発散させる可能性がある。日本が釣魚島で勝手な振る舞いをすることを阻止できるかどうかが、中国の国家の力量と外交の知恵を測る試金石となる。」と指摘している。ある意味では、李大統領の竹島上陸は、日本の世論の領土問題意識をうんと高めたとも言えるわけなのだけれど、中国は尖閣について、「釣魚島問題でロシアから中国への支持を取り付け、韓国世論の中国への同情を集め、米国の中立的立場を勝ち取るべきだ」と韓国とロシアを取り込みにかかる方針を示唆している。
好むと好まざるとに関わらず、もう日本国民は現実と向き合うことから逃れることは出来ない。
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この記事へのコメント
日比野
アメリカが、竹島ふを韓国のものでいいと思い始めてるとのことですけど、非常に興味深いでです。ソースを教えていただけませんか?
opera
一つは、アメリカとの事前通告を含む意思疎通の問題です。通貨スワップの破棄や輸出制限等の経済制裁は、韓国と関係のある日本企業に少なからぬ影響を与えますが、それ以上に韓国に投資するアメリカ企業にダメージを与えます。
私が前回、経済制裁とは言わず事実上の経済制裁を段階的に行ない韓国との関係を根本的に見直すべきと指摘したのも、このための時間稼ぎをする必要があると思ったからです。
第二に、領土問題それ自体は極めて重要ですが、それを日本の全体的な外交戦略にどう位置付けていくかという問題です。
この点で、麻生元総理が提唱した「自由と繁栄の弧」構想は実に優れたツールでした。日本が外交関係を重視していく対象国として、ASEAN(台湾を含む)・オーストラリア・インド・中東諸国等(日本のシーレーン隣接国)は含まれていますが、中国はもちろん、韓国・ロシアは含まれていないのです(もっとも、韓国・ロシアについては条件付きで対象編入可能)。また、アメリカの関与を排除するのではなく、むしろ前提にする構
SAKAKI
いつのまにやら中国、韓国、ロシアに日本は囲まれました。3国は語らってますよ。何らかの譲歩が引き出せると考えている。中国はそのすきに尖閣を狙う。中韓はさらに海洋資源を手にすべく沖縄、対馬を主張し、大陸棚の海底資源を狙っています。しかも共同で。
韓国も中国も資源がなく、日本以上にアジアでの生き残りをかけて必死なのです。アメリカは朝鮮戦争の悪夢は見たくない。まさに日米の弱い部分を突かれたわけですね。考えたくはないですが、あれだけ理不尽に日本を悪者にして世界中に働きかける2国にロシアまで加えて、日本の好感度が高いからと安心していられますか。いつまでも今の幸せな状況を守れますか??明治の初期も世界的な日本ブームがありました。日露戦争の直後もそうでした。しかし先の大戦ではいつの間にか孤立していましたよね。
私は悔しいですが・・プーチンがいる間に・・北方領土問題を2島ないしは3島で解決する方向で日ロ関係改善を図るべきと思います。その関係改善に前進しているという雰囲気が大切です。
政府が金融協力を継続するのならその理由を説明してもらいたい。おそらく
八目山人
尖閣の石油と日本海のM.H.は、アメリカは狙ってますよ。それから読み解けば、アメリカ中国韓国がどう動くか予想する事は、全然難しくない。
・・・片山議員の発言・・・
『 私が「日本海という呼称を不法に東海に変えようとする韓国の主張の誤りを主張し、日本としての署名を持ってワシントンを訪問」した、ゴールデンウイーク(2012年5月)、米国の北東アジア専門家たちは、「韓国は、外交部をあげて、竹島、日本海、従軍慰安婦などの対日?問題に取り組んでおり、日本海呼称など、到底正当性がないのに、副大臣がヘッドでやっている。竹島は相当大変なことになるから、(日本は憲法上軍事行動がとれないのだから)海洋資源の共同開発かなにかで手を打ったら?」と、数年前では信じなれなかったくらい、韓国よりの発言をするようになっていました。』
YT
あとはアメリカの金融資本の横槍だけですが、彼らは韓国に期待して投資しているわけでなく、単なる賭場として投資しています。スワップ11月以後延長なしの観測が強まると9月10月を撤退戦の賭場として韓国金融市場は焦土化されるだけです。