オリーブの与党と大連立

 
8月10日、増税法案が参院で可決され、成立した。

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票数は、賛成188票、反対49票。民主党の6議員が反対票を投じる結果となった。マスコミは法案成立を受けて、2014年4月に消費税率が8%、2015年10月に10%へ2段階で引き上げられ、家計を直撃するなどと、報道をしているけれど、そういう指摘は法案成立前に行うべきであり、単なるアリバイづくりにしか聞こえない。

それに、2014年4月に消費税増税するかどうかは、附則18条に従い、増税実施の半年前、即ち、2013年10月頃に時の政権が判断することになっていて、更に、努力目標とはいえ、名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度の景気条項という縛りがあるから、本当に増税できるかは決まっていない。にも関わらず、増税だ、家計圧迫だなどと、堰を切ったように報道するのは、もう決まったから、覚悟して置けよ、という新たな"心理誘導"の仕込み報道とさえ聞こえなくもない。

マスコミも、"報道しない自由"ばかり発揮しないで、少しは附則18条をきっちりと報道したらどうなのか。

さて、増税法案成立が決まり、永田町は一気に解散への流れが起こりつつあるようだ。8月11日、民主、自民両党幹部から、衆院解散の時期について、秋に予定する臨時国会になるとの発言が相次いでいる。

民主党の前原政調会長は滋賀県長浜市で講演し、「衆議院の解散は、総理大臣が決めることで、『近いうちに』というのがどれくらいなのか、私が評価してもあまり意味がない。…秋の臨時国会で、赤字国債発行法案や衆議院選挙の1票の格差の是正と議員定数を削減させる法案を成立させ、景気を支える補正予算案を手厚く組んだうえで態勢を立て直して選挙をやりたい。その思いは野田総理大臣にも伝えている」と発言している。

また、自民党の石原幹事長は読売テレビの番組で、衆院解散の時期について「首相の念頭にあるのは10月だと思う」との見方を示した上で、9月8日まで会期がある。野田さんに『解散します』と言わせる状況をつくるのが幹事長の仕事だ」と述べている。

どうやら、野田首相は今月初め、谷垣氏との党首会談を行う前の段階で、自民党の幹部に「10月解散、11月選挙」と受け取れる発言をしていたようだ。

関係者によると、野田首相は自民党幹部に電話し、消費税増税法案への協力を要請したのだけれど、自民幹部が「腹を固めれば、野党にもおのずから通じる」と解散確約を求めたのに対して、「次期衆院選はどういう結果になろうと民主党は負ける。負ければ代表は代わらなければならない。代わるのは私でなければならない。…代表選で新しい代表が選ばれても、その人は1、2カ月で代わらなければならなくなる。」と、自分が代表に再選された上で、衆院選敗北の引責辞任を示唆したという。

これが本当であれば、それを先の党首会談は、これを踏まえたものになっている筈で、やはり、"話し合い解散"で合意した可能性が高い。



ただ、これは「野田首相の3つの道」のエントリーでも指摘したとおり、野田首相が代表選で再選されることが前提の話。先の発言では、野田首相は「代表選で新しい代表が選ばれても、その人は1、2カ月で代わらなければならなくなる」と言ったとされるけれど、これは、解散総選挙をしたときのことで、輿石幹事長が発言しているように、代表が代われば、"近いうちの解散"はご破算にされてしまう可能性だってある。

なにより、10日の、参院特別委員会で、野田首相自身、「近いうちに国民に信を問う」とした谷垣総裁との合意について、「解散権はその時の首相の判断だ。もし私が(民主党)代表ではなくなった場合は、その後の首相が縛られる話ではない」と述べている。

だから、自民としては、何が何でも解散に追い込まなければならない。

自民党の谷垣総裁は9日夜、BSフジの番組に出演し、内閣不信任案と野田首相に対する問責決議について「今国会中に出さないと言っているわけではない。自主的に衆院を解散しなければ不信任、問責が出てくるのは当然だ」と述べ、野田首相が特例公債法案の早期成立に期待を示したことに関しても「冗談ではない。国民に信を問うた後に整理すれば十分だ」と発言しているから、やはりこの辺り、つまり、問責決議及び、特例公債法案を人質にして解散を迫ることになると思われる。

けれど、果たしてそれが、解散への切り札になるのか。

確かに特例公債法案は、早期成立しないと予算が持たない。7月6日、安住財務相は、閣議後の記者会見で、特例公債法案が今国会で成立しなければ、国が確保できる財源が10月にほぼ枯渇するとの見通しを述べている。だから、これを人質にして解散を迫るのは野党としては当然の戦略。

議席からいえば、衆院は民主党が尚、過半数を握っているから可決できるとして、問題は単独過半数を持っていない参院。これをどうのりきるかという要因が、民主党代表選を大きく左右すると思われる。

仮に、野田首相が再選されるのであれば、恐らく自民・公明との合意に基づいて、秋の臨時国会で解散に踏み出すだろう。だけど、それは民主党議員の多くが望んでいないから、猛烈な野田降ろしによって引きずり降ろされる可能性がある。

かといって、野田おろしが成功して、民主党の新代表が首班指名を受けたとしても、その瞬間から、特例公債法案という壁にぶち当たる。

自民は当然、特例公債法案を通してほしければ、野田首相と合意した内容をまず履行せよと迫る筈。だけど、この戦略が有効であるのは、自民の協力がなければ、法案が成立しないという前提があって初めて成り立つことで、それが崩れるのであれば、成立しない。

果たして、そういったケースが有り得るのか。実はそんなウルトラCがひとつだけ考えらえる。

それは、民主が自民以外の野党と特例公債法案に特化したパーシャル連合を組んで、自民の協力なくして特例公債法案を通してしまうこと。これが出来れば、自民の要求を呑んで解散する必要もない。

そして、その鍵は、鳩山氏と小沢氏が握っている。次の図は8月1日現在の衆参両院の各党の勢力を表したものなのだけれど、参院定数242のうち、自民を除いて121以上確保できればいい。

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小沢氏率いる「国民の生活が第一」は、参院で。野党7党(みんなの党、国民の生活が第一、共産党、社民党、みどりの風、新党改革、新党大地・真民主)共同で問責決議を提出している。これら7党の参院議席数を足すと、40議席ある。これに民主党の議席86(離党してみどりの風を立ち上げた参院3議席を引いた)を足すと126で過半数を超える。

だから、小沢氏の協力を得ることができれば、特例公債法案を通すことが可能になる。そのためには、民主党の新代表は小沢氏の協力が得られるような新代表である必要があるのだけれど、鳩山氏の支持を得ることができれば、その道筋も見えてくる。

つまり、鳩山氏にしてみれば、自民が盾にする特例公債法案を逆に利用して、自分の意に適った人物を代表選に立てることが可能になり、もしもその人物で代表選に勝つことができれば、一気に民主党の主導権を奪い返すことができる。更には、鳩山-小沢ラインの新代表であれば、任期満了まで政権を維持することができるといって、中間派への工作も可能になる。いうなれば、鳩山-小沢ラインによる"オリーブの与党"構想が代表選に向けてのウルトラC。

その意味では、小沢氏が野党7党を纏めて、問責提出まで持っていったことは一つの大きな布石となって、延命を図りたい民主議員の心理に影響を及ぼすのではないかと思う。

ただ、この"オリーブの与党"構想に対して、民主党執行部も唯々諾々とそれを受け入れるとは思えない。当然対抗策を出してくる筈で、それは現民主党主流派に属する新代表でも特例公債法案をなんとかできるという策になる。それは、おそらく、自民・公明との大連立になるだろう。それ以外に法案を通す方法がない。

だから、次の民主党代表選は、オリーブの与党(小鳩)vs大連立(仙谷・野田)の代理戦争的な様相を呈するのではないかと予想している。


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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    政局をこれほど分からなくしている原凶は
    谷垣自由民主党総裁と執行部である.

    これ程国民から見て分からない総裁はいない.
    であるから, 自民党議員は各々に理由を説明し,
    訳知り顔の者達は様々な背後関係を論ずる.

    しかし明らかなことが一つある.

    谷垣総裁は決して対決への道を辿らない.

    今後とも自民党は嘘付どもとの「対話」を
    重ねていくだろう. その先に何が見えるか?
    付則18条の形骸化と消費税増によるさらなる混乱だろう.
    何故なら, 付則18条ほど官僚達との対決が
    必要なものはないからだ.
    2015年08月10日 15:24

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