李大統領による竹島上陸について

 
8月10日、韓国の李明博大統領が竹島を強行訪問した。

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韓国の大統領が竹島を訪問するのは歴代初めてのことで、李大統領は、専用のヘリでソウルを出発し、竹島に近いウルルン島で昼食をとったあと、午後1時45分ごろ、竹島に上陸。韓国の閣僚数人も同行した。李大統領は島を1周したあと、展望台を視察。その後、島に常駐する警備隊や住民らにチキンやピザを差し入れ、歓談したようだ。竹島には、およそ1時間半滞在し、午後3時20分ごろ帰路についた。

問題なのは、日本政府が李大統領の訪問計画の一報をつかんだのは前日の夕方5時ごろで、しかも、韓国政府が韓国の報道機関に事前に知らせた情報を入手したもの。韓国政府からの連絡は一切なかったという。

日本政府は9日の夜から外交ルートで、事実関係の確認と訪問中止を申し入れたが、韓国側はいずれも「自分たちは知らない。至急確認する」と応答。10日午前には「電話にすら出ない」状況になった。つまり正式な外交ルートが全く機能しなかったということ。

玄葉外相は10日午後、抗議のため、武藤正敏駐韓国大使の一時帰国を指示。李大統領の訪問について「なぜこの時期に訪問したのか全く理解できない。政府として強く抗議する…召還は任務の停止になる。一時帰国だ。…ソウルにいつ帰すかは決めていない」と述べている。

玄葉外相は、この時期に訪問したのは理解できないといっているけれど、これまで韓国の歴代大統領は、任期満了近くなると、反日行為をすることで支持率回復を図ってきた。今回も御多分に漏れず、支持率回復のパフォーマンスではあると思われるけれど、今回の上陸は一線を越えている。

外交ルートでなんの連絡もなく、下準備もなく、一方的に上陸をした。これは、竹島問題については、今後一切話し合いをしないという韓国からのメッセージを意味してる。

だから、これを黙認してしまったら、日本は竹島を韓国領土だと認めるのみならず、いくらでも他国から侵略できることを諸外国に誤解させてしまう危険すらある。

だから、大使召還は当然の措置であるし、いつもの「遺憾の意」といったレベルではなく、それ相応以上の追加措置を取らないと、今後韓国のパフォーマンスはどんどんエスカレートする。きっちりと歯止めを掛ける段階になっている。事の次第によれば、外務省だけでなく、防衛省も連動した動きも必要なのではないかとさえ。

例えば、自衛隊による、島嶼部奪還訓練を対馬や壱岐付近で行うなど、国土を護る姿勢を見せないといけないと思う。このまま口だけの抗議で終わらせては、後々禍根を残すことに成りかねない。

だけど、森本防衛相はそこまでの危機感を持っているようには見えない。8月10日、森本防衛相は記者会見で、竹島上陸を韓国の内政問題と発言して、問題となっている。次に会見内容を一部引用する。
Q:竹島の関係で、直接は防衛省と関係ないかもしれないのですけれども、李明博大統領が間もなく大統領府を出発するという情報もあるのですが、竹島に上陸した場合に防衛省としてやりうる対応策というのは、どういうことがあるでしょうか。警戒監視とか、通常の情報収集ということではないかと思うのですが。

A:報道がある事は知っていますが、我が方は今、事実を確認しようとして情報収集に努めてまいるところです。実際に報道通りであればどうするのかということは、関係省庁と連携して我々の対応を今後決めていきたいと、この様に考えております。

(中略)

Q:竹島の話に戻るのですが、この時期に韓国の大統領が竹島入りするという動きがあることそのものについて、大臣ご自身どのようにお考えでしょうか。

A:日本の防衛政策というのと少し次元の違う話なので、個人的な印象を申し述べるのは控えたいと思いますし、防衛省・自衛隊がこの問題にすぐに何かしら対応するということではないので、そういうことも特段のコメントは控えたいと思います。普通日本人の方が普通に考えられて、これはやっぱり韓国の内政上からくる要請によるものだと皆さんが感じておられるとおりの印象を私は個人としては持っておりますが、それは韓国が内政上の判断でお決めになったことだと思います。

(中略)

Q:竹島に関してなのですが、是非、安全保障の専門家の見地から教えてもらいたいのですけれども、島の領有権を巡るナショナリズムというか、そういう動きが北方領土もそうですし、日本の尖閣の購入というのも影響しているのではないかという気はするのですが、そういった今の情勢についてどのような懸念というのをお持ちでしょうか。

A:島と簡単におっしゃいますが、我が国にとって北方領土、それから竹島というのは、これはいわゆる外交案件としての領有権問題だということで、従来から話し合っているところですが、尖閣は繰り返し我が国政府が申し上げているように、法的に歴史的に見ても日本の固有の領土であることに一点の疑いもないので、日中間に領有権問題はないということなので、尖閣諸島を我が国は領有権問題だと考えてはおりません。したがって、3つの島を比べてお話になりましたが、必ずしもステータスが同じとは言えないと思います。一般論として、我が国が領有権を主張している限り、我が国の固有の領土を自らの手で守るために必要な法的措置もとり、実効支配を強めるために政府として努力するというのは、いわば当然のことだということだと思います。

Q:尖閣購入という動きが、そういった外交の手法が周辺国を刺激して、今回の韓国国内の世論に火をつけているという見方はできないでしょうか。

A:私はこの問題は所管でもないので、問われればストレートに答える以外に私にはなかなか方法がないのですが、今ご質問の購入することが外交問題とおっしゃったのですが、私は何となくそう思わなくて、購入をしてどう手続きするかは日本の国内問題で、これは外交問題ではないと私は理解しています。

Q:先程の竹島に関する感想のところで「内政上の要請だ」というふうにおっしゃったのですが、それは大統領がそのような要請で動かれているという見方なのですけれども、その上で大臣はそのことについてどのようにお考えでしょうか。

A:それは全ての国に内政があって、日本にも日本の内政があって、他の国の内政に他の国がとやかくコメントすることは控えるべきことなのではないかと思います。
森本防衛相の発言は、いつもの韓国の国内事情による反日行為であると、普通の指摘ではあると思うけれど、一個人としての意見であれば兎も角、防衛大臣の発言としては不適。政府が竹島を日本固有の領土としている以上、国土防衛の責を負う立場からは断じて認められない旨の発言以外できない筈。

流石に、森本防衛相の発言は問題視され、与野党から厳しい批判が相次いだ。自民党の谷垣総裁は「こんなばかな発言をするとは信じられない。国会で召喚し、真実ならば問責などに値する」と批判。同じく自民党の中曽根参院議員会長は党会合で「罷免に値する」と更迭を要求。更には、国民新党の下地幹郎幹事長も「辞任してもらった方がいい」と述べている。

これを受けて、10日午後、森本防衛相は臨時の記者会見をおこない、次の様に釈明した。
Q:韓国の李明博大統領の竹島訪問についての大臣の午前中の発言が、野党側からの反発の声が広がっていますけれども、改めて真意をお伝え願えますでしょうか。

A:本日、韓国大統領が竹島を訪問したという事ですが、これは我が国の竹島に関する基本的な立場と全く相容れず、我が国としては決して受け入れられないという趣旨です。他方、どうしてこの時期に韓国大統領が訪問されたのかということは、私は多分、内政上の要請があったのだろうという推測を申し上げたのであって、竹島問題が韓国の内政問題だと言った覚えはありません。そもそも、竹島問題は日本にとって北方領土と並んで重大な領有権問題でありますので、これは外交交渉によって解決されるべきであると、このことに変わりはないと思います。

Q:大臣、野党側が問責決議案を出すという構えも見せているのですが、そういった御自身の発言が伝わっていないということについて、改めて。

A:正しく説明する必要があると思いますので、要請があれば参って説明するつもりです。

と、結局、竹島は日本固有の領土であり、受け入れられない発言に修正した。

野田首相は10日の記者会見で、「竹島が歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であるという立場と相いれず、到底受け入れることはできない…大統領とは、お互い未来志向の日韓関係を作ろうということでさまざまな努力をしてきたつもりだが、このような訪問はそうしたなかで極めて遺憾だ。日本政府としては毅然とした対応をとっていかなければならない。」と述べているけれど、口だけで終わらせるようなら、今後、韓国大統領による竹島上陸が定例化する可能性がある。

いつまでも甘い顔をするにも限度がある。譲れない一線は守らなくちゃいけない。


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この記事へのコメント

  • sdi

    >外交ルートでなんの連絡もなく、下準備もなく、一方的に上陸をした
    これについては私は判断を保留します。形式的な事前通告はやったと考えていますが。一日前とかね。
    まず、いま日本がせねばならないのは「決定」することです。
    ・日本は竹島をどうしたいのか?
    ・そのために何をせねばならないのか
    ・最終的な目標にいたるため、今何をすべきか
    ・そのための手段は外交か?、武力発動か?
    やみくもに動いて、果たして良い結果が得られるでしょうか?
    あちこちで強行意見が出てきていますけど、太平洋戦争海戦直前に米内光政の「ジリ貧を恐れてドカ貧になりませぬよう・・・」という言葉を覚えているのですかね。
    先の大戦の戦訓を、今の日本人は生かしているのでしょうか?
    2015年08月10日 15:24
  • opera

    今回は竹島問題だけに過剰に反応するのではなく、韓国に対する全体的なスタンスを変えるいい機会ではないでしょうか。外交的な手段の一種ですが、竹島問題に限定する話ではありません。
     つまり、現在の日本には歴史問題や冷戦時代の経緯から、韓国を特別視する制度的な枠組みが残っていますが、これを一つ一つ解消していく。移民問題や経済問題については、特にそうでそうです。
     ネットでは、通貨スワップの廃止等を経済制裁として行なうべしという意見もあります(通貨スワップ自体は日本企業やアメリカ等の投資家への配慮という面もある)が、やることは同じでも、これを経済制裁とは言わずにシレっとやる。知財問題の対応の厳格化や入国・輸出制限なども同様です。また、今後韓国が経済危機に陥っても、日本は必ずしも助ける必要は無く、韓国が破綻することを前提とした対策を練る等々、やれることはたくさんあるでしょう。
     要するに、韓国が日本を特別視し、これに「甘える」ことを拒絶する。その結果として、竹島問題等を正式な外交問題として考える環境を作り出す一助になるのではないでしょうか。
     なお、対中国との関係でも、中国が共産党一党独裁国家で
    2015年08月10日 15:24
  • とある平和な幻想国家

    北はロシア、南は中国、西は韓国ですか・・・。
    じゃあ東は?アメリカでしょうか?いいえ、全部です。

    憲法9条があるかぎり、日本は無力で、占領し放題ですよ。
    日本なんてフィクションなんですよ。
    実態はアメリカの占領地でしょう。

    今必要なのは、新しい国造りですよ。
    2015年08月10日 15:24
  • 日比野

    sdiさん

    >形式的な事前通告はやったと考えていますが。一日前とかね。
    なるほど。事前通告をやっているなら、これまでどおりなんですけど、どうなんですかね。ここは重要なポイントだと思います。

    >まず、いま日本がせねばならないのは「決定」することです。

    これまで政府は、防衛白書に竹島を「わが国固有の領土」と記載したりして、領有権の主張をしたりしてますけれども、一向に埒が明かないのが現状です。国際司法裁判所への提訴の提案をしても韓国が受け入ず止まったままですしね。

    日本がやるべきことは「決定」することであるのなら、これまでの対応は"決定"ではないということになりますけれども、どうも、尖閣といい、ベドメージェフ首相の北方領土訪問と「ここはロシアの領土だ」発言といい、今回の竹島といい、足元を見られているというか、狙われている感がして仕様がありません。

    実際問題、一度、実効支配されてしまえば、取り返すのは容易ではありませんけれども、そのままで何もしなければ、周辺の領土をどんどん削り取られていくことは、これまでの歴史でもそうでしたし、今現在でもこうして起こりつつあるわけです。

    こういう状
    2015年08月10日 15:24
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    武藤正敏在韓国日本大使はコレアン・スクール
    出身の朝鮮半島情報通と言うことになっている.
    しかし, 何かと言うと大統領が日本に脅しに
    来る様では単なるもの知り外交屋さんなのだろう.
    嘘付党が任命したのだから.

    丁度良い機会だから, 大使罷免の上で暫く大使
    を決めないでおけば良い.
    2015年08月10日 15:24

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