増税法案の採決日程を巡って、与野党が揉めている。
7月31日、自民党の脇雅史参院国対委員長は、民主党の池口修次参院国対委員長と国会内で会談し、増税法案について、8月8日に参院の特別委員会と本会議で採決するよう求めていた。
ところが、8月1日、民主党の城島国対委員長は、「もう少し審議していこうじゃないかということで、20日を含めた、20日の週での採決でいかがかというふうに、自公に申し入れをした」と民主・自民・公明以外の野党から、さらなる審議を求める意見が出ていることなどを理由に先送りを提案。これに対して、自民党の岸田国対委員長は「われわれは、採決8日でお願いしてるので、全く考慮にも値しない」とこ拒否。自民党は8日の採決の有無で問責決議の提出をチラつかせ始めた。
8月2日、麻生元総理は自身の派閥の例会で、民主党が増税法案の採決を20日以降と表明していることについて「与党が先延ばししようというのは前代未聞、言語道断だ。野田佳彦首相が決断できないなら実力行使で解散を迫らなければならない…首相がきちんとした対応をするなら合意にサインしたわれわれも合意は守るが、残された時間は極めて限られている」と8日の採決を先送りするなら、3党合意を破棄して、内閣不信任決議案や問責決議案を提出すべきだとの考えを述べているのだけれど、それを裏付けるかのように、2日、自民党は国会内で幹部会を開いて、8日の参院採決を受け入れなければ、採決前に野田首相に対する問責決議案を出す方針を確認している。
これに対して、民主党の城島国会対策委員長は、「消費税率引き上げ法案などは重要法案であり、民主、自民、公明の3党合意に参加しなかった政党が、『質疑をきちんとできた』と思ってもらえるような対応が必要だ。そのために、20日以降の採決を提案している。その方針を急に変えるのはおかしな話だ。…何かと言うと、すぐに『問責だ、問責だ』という国会運営は、あまり国民に理解されにくい。8日の採決を主張するのはよいが、それが実現しなければ問責決議案を提出するというのはいかがなものか」と自民党を批判。双方の主張は真っ向対立している。
ただ、そういう民主党とて、安倍、福田、麻生内閣時代、ねじれ国会をいいことに、何度も審議拒否や問責を出してきた歴史がある。ざっと次のとおり。
安倍内閣時代
・大臣が子供を産む機械などと発言をしたから辞任しろと審議拒否
・憲法改正のために必要な国民投票法で民主案を飲んだら審議拒否
・民主党が出した教育基本法改正案を自民党が丸呑みしたら審議拒否
・参院選で勝った民主党の要求どおりに解散しないから審議拒否
福田内閣時代
・参院選で負けたのに首のすげ替えで福田に変わった民意を問わないで首をすげ替えたのは民意に反しているから審議拒否
・日銀総裁人事が気に入らないと審議拒否
・イージス艦と漁船の衝突事故の真相究明がされるまで認めないと審議拒否
・後期高齢者医療制度を廃止しない事、ガソリンの暫定税率を復活させた事を理由に問責可決→問責したのだからと以降審議拒否
麻生内閣時代
・民意を問わずに首相が替わることは許されない。解散しないから審議拒否
・定額給付金を撤回しないから審議拒否
・麻生が補正予算案を臨時国会に出してこないから審議拒否
・中川昭一酩酊会見
・中川が謝罪するまで審議拒否
・中川が辞任しないから審議拒否
・今すぐに辞任しないから審議拒否
・中川の辞任について首相が謝罪するまで審議拒否
・麻生内閣が予算案を撤回するまで審議拒否
・予算案撤回→民主「このとおり麻生内閣は無責任だ。政権担当能力はない。だから審議拒否」
・民主「麻生が衆院を解散しない」事を理由として麻生太郎問責決議可決
・麻生首相が衆院解散を決めたので審議拒否
これらを見ると、もう理由なんてどうでもいい、"嫌がらせ"レベルの拒否。麻生内閣時代には、衆院解散しないからという理由で問責を出している。これは、自民が採決を先延ばしするなら問責を出すのとは、正反対。自民は法案を可決するための問責であるのに対して、野党時代の民主は自分の要求どおりにならないと即、審議拒否してる。これに比べれば自民の問責など、紳士も紳士。
さて、3党合意した時は、相思相愛かとも思われた、民主・自民・公明の3党だったけれど、何やら雲行きがおかしくなってきた。そこをチャンスとみたのか、早速第3勢力が仕掛けてきた。
8月2日、共産、社民、みんなの3党は、参院で消費増税関連法案を採決する前に、衆院に内閣不信任案を提出することで一致。自民、公明両党を除く野党の党首会談を3日に開いて、提出時期などを調整する方針を固めている。
ただ、共産、社民、みんなの3党では20議席しかないから、このままでは不信任を出せない。従って、更に他党に協力を求める必要があるのだけれど、自公以外でそんなのは「生活」と「新党きづな」の統一会派しかないということで、共産、社民、みんなの3党の国対委員長は「生活」の鈴木克昌国対委員長に協力を要請するとともに、党首会談を呼びかけている。
「生活」は「消費増税を阻止するための不信任案に賛成しないのは筋が通らない」として会談に応じる方針だという。
8月2日、「生活」の小沢代表は、自らが主催する勉強会での挨拶で、「われわれは、きちんとした目的をもって、われわれの存在を明確に示していかなければならないと述べていて、内閣不信任決議案の共同提出に応じると見られている。
ただ、「生活」はこれまで、不信任決議は自分の党からは出さないと発言をしていた。それがここにきて、急に出すと言い出したのは、不信任を可決するチャンスと見たからではないかと思う。
小沢氏は、挨拶で「自民・公明両党は、13兆円にものぼる増税に政府・与党との野合のうえで賛成したあとで、内閣不信任決議案や問責決議案を提出すると言っている。どういう理屈になるのか、どういう頭の構造なのか、よく分からない」と言っているけれど、これも裏を返せば、賛成(採決)する前に不信任に同調しろよ、というメッセージとも受け取れる。
今のところ民主党は衆院で過半数の議席を持っているから、たとえ、不信任案が出されたとしても民主党単独で否決することができる。だけど、民主党の中から更に造反議員がでれば、それもどうなるか分からなくなる。
小沢氏のこと、水面下で造反工作をしていることは十分に考えられるし、穿った見方をすれば、すでに工作を完了して、不信任の可決の目算がついたからこそ、不信任の共同提出を決めたのではないかとさえ。
いずれにしても、8月8日まで残された時間は少ない。一気呵成の政局が訪れるかもしれない。
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