石原都知事の辞任と動き出す政局

 
10月25日、東京都の石原都知事が、都庁で緊急記者会見を行い、知事を辞任することを表明した。続いて、新党を結成し、国政に復帰する意向を明らかにした。

画像


新党には、たちあがれ日本の衆参国会議員5人全員が合流する見通しで、更に、日本維新の会との連携協議も進めるとみられている。

石原氏は、国政で何をやりたいのかについて、辞任会見で、いくつか述べているのだけれど、ざっと次のとおり。
・日本の財政はピンチというが、まだまだ余力がある。国の会計方式は単式簿記だが、こんな会計方式でやってるのは北朝鮮とパプアニューギニア、フィリピン、マレーシアとかくらいだ。なぜ複式簿記にしない。だからバランスシートがない。財務諸表がない。健全な財政ができるわけない。東京は複式簿記で合理化し、財政再建をした。何で同じことを国がやらない。会計方法を世界並みに変えたらいい。

・文部省が主導したゆとり教育はどうなったか。たちまち学力が落ちた。自分の犯した過ちを文科省が取り消しましたか。

・厚生省。子供が減って、人口が減って、都会で幼稚園作ろうと思ったら、国の規格ではとてもできない。べらぼうな値段になる。何で、国鉄がいろんな資産を持っている。もてあましてる資産もあるから、そこで子供を遊ばせようと動いたら、猛反対を食った。土地の値段を踏まえた保育行政を国がやらなければだれがやるのか。一切、役人は現場を見ない。こういう行政が続いている。
と、まぁ、都知事の経験から、問題だと思っていたことを国政で改善するというスタンスのようだ。実際、石原氏は、これらの説明をする前に、「これからやろうとしていることは、都知事として14年間やってきたことの延長です」と述べている。これは有権者にとってはイメージが涌きやすいし、判り易い。

ただ、これらの内容は非常に多岐に渡り、一つや二つの省庁だけで済みそうもない。それ以前に、この政策を与党に受け入れさせることができなければ、その土俵にすら上がれない。少なくとも、どこかの省庁の大臣にでもならないと厳しそうではある。

その辺りについては、辞任会見後の質疑応答で、記者から「石原知事が次期衆院選で比例候補として立てば当選すると思うが、政策を実行するには他の政党と組まないとならない。そうした場合は自公との連立を中心に考えているのか」と聞かれているのだけれど、石原氏は「先のことは分からない。愚問だよ」と躱した。

石原氏は10月25日に都知事を辞任すると述べ、新党は11月上旬に結党する方向で調整しているようだ。新党の代表には、石原氏が就任し、次期衆院選は、比例選東京ブロックから出馬する意向。新党からは、30~40人規模の候補者を擁立したいとしている。

なぜ、石原氏は、このタイミングで辞任を発表したのか。



地方自治体の首長が辞任した場合、新しい首長を選挙で選出しなければならないのだけれど、公職選挙法で最長55日以内に選挙を行わなくちゃいけない。石原氏の辞任の日付は、地方自治法では10月25日から1週間後になるのだけれど、そこから55日後は12月25日。

これは、もちろん、先の3党党首会談で、自公が解散総選挙として希望していた、12月9日を含む。だから、もし、12月9日に総選挙が行われるのであれば、都知事選も一緒に行なうことが出来るし、もしかしたら、年内解散の情報か何かを掴んでいるのかもしれない。

そして、あたかも、それに呼応するかのように、自民党の安倍総裁は、鹿児島県日置市の街頭演説で、来週29日から、召集されると見られる臨時国会について、「私たちは、決して国民の生活を人質に取ろうとか、審議を拒否しようとは思わない。むしろ審議をした方が、 民主党の問題点は出てくる」と、年内解散を確約しなくても、審議に応じる考えを述べている。

このことから考えられるケースは次の3つ。
1.水面下で、年内解散の確約を取った
2.年内解散の確約がなくても、解散に追い込める見通しがついた
3.年内解散は諦め、とりあえず野田政権を追い込めるだけ追い込んでいく
1のケースは、仮にあったとしても傍からは分からないから、分析のしようがない。それでも臨時国会を閉じるときまでには嫌でも明らかになるし、3のケースは早期解散はないということで、今のところ一番有り得ると見られている。

だけど、石原氏の新党結成で、僅かではあるけれど、2の可能性が出てきたように思う。それは、無論、民主党からの石原新党への離党工作。既に民主党から、あと6人離党すれば衆院の単独過半数を割るし、連立与党でみても9人離党で過半数を割る。

だから、石原氏が工作して、民主党から10人も引き剥がしてしまえば、衆院で不信任案が可決する公算が高くなる。実際、石原氏は辞任会見後の質疑応答で、「国会議員5人でスタートするのか」と質問され、「もっと多くなるんじゃないの」と意味深な発言をしている。

これまで民主党から離党した議員は、次の選挙で少しでも当選できるようにと、支持が高かった「日本維新の会」に流れていったのだけれど、ここ最近、「日本維新の会」の支持が下がってきたこともあって、離党を躊躇う動きも出ていた。

だけど、ここにきて、石原新党が立ち上がると、もちろん、その支持率にもよるけれど、人気に陰りの見えた「日本維新の会」に代わって、新しい離党者の受け皿が出来ることになる。まぁ、石原氏のことだから、或いは既に水面下で離党者の目星というか、話がついているのかもしれないけれど、それでも石原新党の支持率は高いに越したことはない。

先頃、国有化された尖閣にしても、その引き金は、石原氏の都による購入案の発表。石原氏は、それを中国の指導部交代時期という、中国が動き難いときを狙ってやるなど、勝負所は心得ている。

今回の、辞任と新党立ち上げにしても、おそらく、ここ1ヶ月ほどはいろいろと注目を集め、報道されるだろうと思われるし、特に、新党結成前後の1~2週間は相当報道でも取り上げられるだろう。石原氏は今がその勝負時と見たのではないか。

一気に政局は動き出した。




画像

この記事へのコメント

  • SAKAKI

    驚きましたよ。石原さんのお金って貯金口座には僅かしかないみたい??あくまで噂ですけど・・。
     日銀券の市中への流通は発行済数の十分の一くらいだそうですね。安倍さんは日銀に緩和を求めていたけど、これでは緩和する意味などまったくない。お札印刷しても箪笥預金になるだけです。銀行や証券会社を改革しない限りにおいて日本経済は復活しません。石原さんも安倍さんも金持ちだけど、お金は投資に回してないよね。日銀はやれるだけのことをやっているのに・・・
     石原さんの決断・・不気味だよなぁ。もう少し絞った民主党はかなりマトモになるような気もするし、ここで石原さんの水を甘いと勘違いして離党する民主党議員は、逆に小物かもしれませんね。、・・
    2015年08月10日 15:24
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    安倍総裁と石原氏の間には関係はなかろう.
    そもそも世代が二つくらい違う.

    安倍総裁の目標はあくまで衆議院の早期解散.
    アンカーの青山氏が予想しているように,
    公債法案が通らないことには国民が困るから,
    法案を通してから不信任案を出すのだろう.

    石原氏の地方自治体の財政理論が紙幣を印刷できる
    政府の財政に適合するかは不明.

    安倍総裁の政策は国民のためのものであり,
    広報戦略は分かり易さなのだから, はっきりしない
    勢力と後ろで手を組むことはないだろう.
    2015年08月10日 15:24

この記事へのトラックバック