3党党首会談決裂

 
10月19日、野田首相と、自民の安倍総裁、公明の山口代表との党首会談が行われ、物別れに終わった。

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会談には3党の幹事長も同席し、約40分に渡って行われたのだけれど、野田首相は「近いうち解散」について、「大変重たい確認事項であり、責任は十分自覚している…だらだらと政権の延命を図るつもりはない。条件が整えば、きちっと自分の判断をしたい」とも強調し、条件整備の為に、特例公債法案可決、1票の格差是正、社会保障制度改革国民会議の早期設置の3つを挙げ、自公に協力を求めた。

これに対して、安倍総裁、山口代表。「『近いうち』をもっと具体的に明示してほしい。それがなければその先の話はできない」と、応じられない考えを伝え、合意には至らなかった。

党首会談の前に行われた幹事長会談で、野田首相から新たな提案があると輿石幹事長から伝えられ、それならばと受けた党首会談で、このゼロ回答。やはりこれが民主党。

野田首相は会談で、「『近いうちに』の環境整備をした上で判断したい。自分を信じてほしい」と言ったそうなのだけれど、よくもまぁ、ぬけぬけと言えたもの。

安倍総裁は、会談後の記者会見で、「驚いている。これでは全く信頼関係が築かれない。怒りを覚えた」と述べているけれど、無理はない。記者会見での安倍総裁を見る限り、野田首相のあまりもの厚顔無恥ぶりに、驚きを通り越して呆れ果てたという表情がありありと浮かんでいた。

今回の3党首会談が決裂したことで、特例公債法案の成立はますます厳しくなりつつあるのだけれど、またぞろマスコミは、法案が成立しないのは、野党が協力しないからだ、とジミンガー、アベガーと叩いてくるかもしれない。そうなると、安倍総裁は、解散ひとつとっても、野田首相のみならず、国内マスコミとも戦わなければならなくなる。

まぁ、ただ、安倍総裁が野田政権とマスコミを向こうにまわして、国民に訴えなければならないという構図は、ある意味、今の日中関係と似ている部分があるように思われる。

なぜなら、今の日中関係及び世界との関係は、安倍総裁、野田首相、マスコミ、国民の4者の関係に引き当てることができるから。

仮に、安倍総裁を日本として、野田首相を中国とした場合、マスコミは丁度、中国の宣伝活動、国民は世界各国に相当すると言っていいだろう。

尖閣問題について、日本が、事を有利に運ぶためには、まず、世界を味方につけなければいけないのだけれど、御存知のとおり、世界に向けての宣伝では、その是非は別として中国の方が優勢であることは否めない。



チベット文化研究所名誉所長のペマ・ギャルポ氏によると、最近、ブータン、ネパール、モンゴル、タイを訪問し、現地の政治家、ジャーナリスト、有識者と意見交換したのだけれど、中国側の言い分が相当浸透していて、日本の主張はほとんど理解されていないという。たとえ嘘でも皆がそれを信じれば真実になる。

中国は、やれ歴史問題だ、やれ尖閣は日本が盗んだなどと、ありとあらゆる方面で、自分の主張を世界にむけて発信している。そして、自国の反日暴動や法治が効かない国であるといった、自分に都合の悪いところは口を拭って一方的に日本を叩いている。これは、ともすれば、安倍バッシングばかりで、民主党を擁護するマスコミの態度と通ずるものがある。

マスコミは、今のところ、特例公債法案に関しては、民主党も悪いが、それに協力しない野党も悪いと、いわば、「どちらも悪い論」を展開しているようだけれど、法案を通す第一の責任は与党にあるとは決して言わない。

法案を通す責任が与党にあることを言わずに、野党も悪いというのであれば、そもそも与党と野党に分かれている必要すらなくなってしまう。互いの意見が折り合わないからこそ、与野党に分かれるのであって、その中でやりくりして法案を通すからこそ、与党は政権を担うことが許される。法案をひとつも通せない政権は、無駄に時間を過ごすだけで、存在する意味がない。

安倍総裁は、記者会見で、「両党間において全く信頼関係が築かれない状況で、信頼関係を回復する責任は野田首相にある。信頼関係を回復する努力を総理にしてもらわなければ、とても対応できない。その責任は総理にある。」と述べているけれど、それはそのとおりだろう。

もしも、マスコミが、そこを隠して、ただ、ジミンガーだの野党が悪いだのと言って、国民を誘導したとするのなら、明らかに公平を欠いているし、嘘を並べて真実だと思わせる中国のやり口と大差ない。

安倍総裁は、記者団から今後自民党の解散戦略はどう描いていくのかと聞かれ、「自民党にとって有利だからとか、不利だからという理由で解散を求めているのではない。国民に対する約束を果たして下さいと言っているだけで、政治そのものが信頼を失うかどうかの瀬戸際だと思っている」と述べているけれど、これは上手い返しだと思う。

なぜなら、安倍総裁は、戦略の階層でいうところの上位概念を掲げたから。つまり「政治とは信頼である」といい世界観があり、それを実現するために、世界観の一つ下の政策レベルで「国民に対する約束を果たす」という要求をしているのだ、というロジックを立てている。

この世界観という戦略の最上位階層を出されてしまうと、その世界観そのものを否定しない限り、それを撃ち落すことは難しい。この場合は、「政治とは信頼である」という世界観を否定しなければならないのだけれど、いかなマスコミでも、「政治とは信頼ではない」と主張して、それを多くの国民に納得させることは難しいだろう。

その意味で、安倍総裁の世界観を前面に出した説明は正しいし、安倍バッシングに対抗するにも有効な手立てであると言える。




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この記事へのコメント

  • sdi

    日比野殿。貴殿のブログのコメントに多重投稿してしまいました。通信エラーなのか「お探しのブログは存在しません」と表示されたので失敗したかと思いやり直してしまいました。お手数ですが、最初の以外削除願います。ご迷惑おかけして申し訳ありません。
    2015年08月10日 15:24
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    代表戸締り役氏がツイッターで触れていた様に,
    民主党は罰則がない限りどの様な不法も辞さない.
    衆議院の任期も無視する可能性はある.
    その場合, 警察や自衛隊に対する命令権は
    誰が持つのだろうか. 法律的には居座り内閣か.
    2015年08月10日 15:24
  • てっぷQ

    特例公債法案が成立しない場合の影響は想像したくもありませんが、民主党に政権を与えた責任はそういうかたちで国民に返ってくるんですな。民主政権を誕生させたのは自民党ではなく国民なわけで、予算執行が滞った時に生じる痛みを引き受ける覚悟をすべきなのでしょう。安倍総裁には、臆せず民主政権打倒に向けて頑張って欲しいものです。
    2015年08月10日 15:24
  • とおる

    野田政権は、
    ・国民との契約「マニフェスト」に無い消費増税を成立。
    ・消費増税の成立と引き換えに、自民党・公明党と約束した「成立の暁には、近いうちに解散」と国民に約束。
    ・「成立の暁には、近いうちに解散」を反故にして、野田政権は、新たな約束を自民党・公明党に提案(3党の党首会談で)

    野田政権は、
    ・何度、約束を破れば気が済むのか?
    ・約束を破った相手に、恥も無く、約束を提案できるのか?

    マスコミは、約束を何度も破り、それでも何度も約束を提示してくる野田政権を批判しないのか?
    2015年08月10日 15:24
  • 日比野

    sdiさん、多重投稿は削除しました。お手数かけました。どうも、ここ数日ブログのプロバイダでサーバ負荷が酷いらしく、繋がりにくい状態が続いているようです。で負荷を少しでも軽くするために、PVカウンタもOFFにしているようです。おかげてPVがさっぱり分からなくて…(泣)

    さて、解散引き延ばしによる民主党へのプレッシャーですけど、そんなもの無視するんじゃないでしょうか。財界からもプレッシャーがあるはずですけど、政党助成金も貯めこんでいるようですしね。

    引き延ばしのひとつとして、予備費による経済対策をするようですけれども、これも裏目に出るような気がします。
    2015年08月10日 15:24

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