10月17日、野田首相は臨時閣議を開き、来月中に経済対策をまとめるよう関係閣僚に指示した。
対策は野田内閣が掲げる、「機動的な財政出動を含む切れ目ない経済対策」に沿って策定し、緊急性の高いものは今月中に予備費を活用して実施するとしている。
ただ、予備費を活用するといっても、そんなに予算があるわけじゃない。予備費は一般会計では経済危機対応などで9100億円、復興特別会計では4000億円程度で最大でも1.3兆円。38兆円規模の特例公債と比べるべくもない上に、しかも年度半ばの今の時期に全額使える訳もない。
これまで自分で、予算が枯渇するからと、予算執行を遅らせている中で、予備費を使えという。どう見ても、特例公債を通すのが先だろう。
実際、9月から、各道府県への地方交付税の配布は分割払いにするなど執行抑制を始めていて、その煽りを受けて、自治体の中には資金を確保するために、金融機関からの借り入れをしているところすらあるそうだ。本来、借りなくても良いはずの資金を借りさせ、金利負担を負わせている。経済対策を策定するとか何とか言う前に、足元の国民の生活に無理を強いていることを少しは自覚したらどうなのか。全く筋が通らない。
財務省幹部によると、これは、規模云々ではなくて、「アナウンスメント効果」の意味合いが濃いという。確かに、経済対策ややりますよというパフォーマンスという面はあるだろうし、検討に一月も掛けるのなら、それだけで、年内解散を回避する口実にもなるだろう。
もちろん、野党はこの態度に反発している。自民党の高村副総裁は、「経済対策というよりも解散先延ばし対策だ。最大の経済対策は、早く衆院選をし、国民の信任を得た政権を誕生させることだ」と批判しているし、公明党の山口代表も「解散せざるを得ないからこそ、選挙対策として経済対策を検討するという趣旨に受け止められる」と述べている。
今の特例公債法案の棚ざらし状態に、財務省が危機感を強めている。
というのも、自民党幹部によると、先般の内閣改造後、野田首相が周囲に「特例公債法案はどうでもいい」と語ったという話が永田町を駆け巡ったのだという。その話を聞いた財務省は、始めは信じなかったのだけれど、裏を取ると事実だったと分かり、大物OBまで投入して猛烈な巻き返しを行なって、臨時国会を開くところにまで漕ぎ着けたのだという。
果たして、野田首相がどういう意図で「特例公債法案はどうでもいい」と話したのかは分からないけれど、資金繰りだけでいえば、今月・来月中に特例公債法案が可決されなくても、手当する方法はある。
「野田の代表選出馬と解散否定と報い」のエントリーでも触れたけれど、特例公債の代わりに、短期国債(FB)、すなわち財務省証券を発行して穴埋めするという方法がある。まぁ、これについては、野田政権も分かっていたようで、輿石幹事長の周辺では、「特例公債法案が成立しなければ、財務省証券を発行してしのいでいけばいい」という声があったそうだから、或いは、財務省証券を出させて当面の手当をしようとしていたのかもしれない。
だけど、財務省はそんなことはさせじと、説明資料を拵え、財務省幹部が自民、公明両党の幹部を個別に訪ねて特例公債法案を11月中に成立させるよう懸命に働き掛けているという。
政治評論家の田崎史郎氏によると、財務省の資料はB4版5枚のカラー刷。11月中に法案が成立しない場合、日本国債の格付けが下がる可能性があるという警告を含め、今年9月から予算執行抑制の対象としたものとしていないものを列挙し、更には、財務省証券発行による、予算の穴埋めは事実上の財政法違反になるとの説明まであるそうだ。
特に、財務省証券発行は財政法違反になるという部分については、資料では今年9月の質問主意書に対する政府答弁書を引用しているそうなのだけれど、それはおそらく、公明党の浜田昌良議員が9月24日に提出した「公債特例法案の成立の遅れに伴う予算執行抑制の妥当性に関する質問主意書」であると思われる。
浜田議員はこの質問主意書で「公債特例法案が成立せず、償還財源が確保できていない状況で財務省証券の追加発行は不可能となるのか」と質問しているのだけれど、これに対して、政府は「特例公債の発行に係る法案が成立しない場合には、当該法案に基づく歳入を見込むことができない。また、財政法第七条第二項において、財務省証券はその発行年度の歳入をもって償還しなければならないことが規定されている。これらを踏まえると、財務省証券の発行は、特例公債法案に基づく歳入を見込むことができず、かつ、当該歳入以外にもその償還のための財源が確保できていない状況では、財政法上許容されないと考えている。」と答弁している。
つまり、財務省証券は発行した年度内に償還しなければならないから、そのための償還財源を確保する必要がある。その財源が確保できない状態のまま財務省証券を発行することは財政法上許されない、ということ。
財務省は、このロジックを持って、特例公債法案が通らないと大変なことになると与野党の議員に働きかけているようだ。ただ、まぁ政治家なら、いくら官僚が、財政法がどうたらこうたら言ってきたとしても、それなら財政法そのものをもっと使いやすいように修正すればいいじゃないかと言って、修正法案を官僚に指示して作らせるなり、議員立法するなりのことが出来て欲しいところではあるけれど、財政法を修正するくらいのパワーがあるのなら、特例公債法案を通すなんて簡単だろう。
ただ一言、年内解散を確約すればいいのだから。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
多くの注目が国会に向く中で, 嘘付達は尖閣諸島で
紛争が起きるのを心待ちにしているのではないか.
基本的に現在の政府は嘘と言う武器を用いて一部の
反日勢力が作り上げた革命政府であることを忘れ
てはならない.