3党幹事長会談と輿石の苦悩

 
10月15日、民主党の輿石幹事長は、国民新党の下地幹事長と会談し、「今月中に国会を開く方向だ」と月内に臨時国会を召集する考えを伝えた。

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また、午後には、民主、自民、公明3党の幹事長会談が開かれたのだけれど、輿石氏は「今週中にも3党首会談、今月末にも臨時国会を開催したい」と述べ、次期臨時国会で、特例公債法案と、「1票の格差」是正や定数削減を含む衆院選挙制度改革、「社会保障制度改革国民会議」の早期発足に向け、自公両党に協力を求めた。

これに対して、自民党の石破幹事長は「近いうちに信を問う、というのは主権者たる国民に対する約束だ」と解散時期を明示するよう主張し、公明党の井上幹事長も「来年度予算編成を考えると、11月の早い時期が常識だ」と答えた。

輿石氏は「解散は首相の専権事項だ」と述べるにとどめ、18日に改めて3党幹事長会談が行われることになった。

自民党の石破幹事長は会談後の記者会見で「あまりに不誠実なら、党首会談が開かれても実りはない。さらに誠意ある答えを持ってきてもらいたいと言うことはあり得る」と述べ、18日の幹事長会談次第では党首会談に応じない可能性に言及し、公明党の井上幹事長も「次回、どういう答えが出るか聞いてから判断したい」と語っている。結構強気。

なぜそんなに強気になのかというと、どうやら、先の野田首相と安倍総裁との顔合わせ前後に、民主党執行部から自民党に「条件が整えば年内に衆議院を解散する用意がある」という意向を伝えていたようだ。

まぁ、そこはそれ、民主党のことだから、やっぱり嘘の可能性もある。自公両党からしてみれば、はっきりと解散の確約が欲しいところ。現時点では、月内に臨時国会が開かれそうだということだけ。

ということで、次の幹事長会談で解散時期を明示するかどうかが焦点になったのだけれど、次の幹事長会談でも民主が解散時期を明示できないといってグダグダするようなら、党首会談も出来ず流れてしまう公算が高いと見る。

これが、前の谷垣自民党であれば、またいつぞやの3党合意の時のように、野田首相が谷垣氏に電話を掛けて直接交渉して、合意を取り付けてしまうかもしれない。だけど、安倍自民党にはそうしたホットラインがないとされているから、正攻法でしか交渉する他ない。今の自公の強気姿勢を見る限り、安易は妥協はないように思う。

ただ、18日の幹事長会談だか、党首会談だかで、解散時期を明言されることがあるのなら、その時点で野田政権は終わりを迎える。その理由は勿論、野田首相が求心力を一気に失うから。

既に、民主党は国民の支持を失っている。そこに解散が決まれば、待ってましたとばかり離党予備軍が動き始める。毎日新聞は、衆院当選1回議員の中から計100人を対象として、議員本人や後援会幹部などへの取材、会合での発言などを踏まえて意向を探ったところ、小選挙区選出議員53人中7人、比例復活議員26人中2人、比例単独議員21人中2人が将来も含めて離党する可能性があることが分かったと伝えている。

衆院で民主党は、国民新党を合わせても、あと8人離党されてしまったら、与党過半数割れに追い込まれる。そうなったら、野党からの内閣不信任案を突きつけられる目も出てくるし、8人以上の造反議員が出てくれば、与党過半数割れしなくても、不信任案が可決されることだって有り得る。

特に、臨時国会冒頭でいきなり不信任案が出されて可決し、追い込まれ解散にでもなろうものなら、選挙準備が遅れている民主党にとっては大打撃。たとえ僅かなりとも準備の時間は欲しい。

臨時国会でいきなりの不信任案可決を避けるとなると、野党に不信任否決の工作をするしかない。



10月10日、民主党の輿石幹事長は、鳩山元首相が都内の日本料理店で会談している。この会談には平野博文前文部科学相も同席していて、輿石幹事長は「これ以上、離党者を出さないよう、力合わせをしていかなければならない。そのためには時間がかかる。党の態勢を立て直すためにも、国民の生活が第一の小沢代表らにも協力を求めていく方向を作りたい」と、「国民の生活が第一」との国会で連携を求めた。

解散までの時間を稼いでかつ、不信任否決のための工作を始めた。輿石氏は鳩山氏に"餌"として、党最高顧問への復帰を打診したのだけれど、鳩山氏は「中国との関係などが心配だ。きちんと外交問題を担当させてもらえるかどうかにかかっている」と保留したようだ。この期に及んで、まだ外交をやりたいなどという鳩山氏の神経は、とても凡人の理解の及ぶところではないけれど、官邸とて、ここまでやらかしてくれた御仁を、再び外交の任につけるようなことは流石にしないだろう。

その鳩山氏が、果たして、輿石氏の"おつかい"をしたのかどうかは分からないけれど、小沢氏にはその気はないようだ。「国民の生活が第一」の中堅議員によると、報道を見た若手が小沢代表に『どうなっているのか』と尋ねたところ、親方は『向こうが増税を取り下げるというなら考えてもいいが、 一緒にやれるワケないだろう。コシさんも何を考えているのか』と答えたそうだし、現に、15日には、小沢氏が記者会見で「今の野田内閣を信任するということはあり得ない」と述べている。

尤も、輿石氏とて、解散を念頭に入れていないという訳でもない。

10月12日、輿石幹事長と安住幹事長代行ら党執行部は当選1、2回の衆院議員約20人を党本部に個別に読んで、総選挙に向けて、地元で選挙準備に専念するよう指示を出している。面談では、「年末に向けて情勢調査を行う。東京には戻ってこなくていい。…しっかりやっている人とそうでない人で、党からの選挙資金の配分に差をつける」と伝え、今年1月からの各選挙区での活動状況を1カ月以内に報告するよう求めたそうだ。

一ヶ月以内に報告を上げさせ、選挙資金の配分に差をつけるということは、報告を吸い上げた結果、当選の見込みがある候補とそうでない候補を線引きして、見込みのある候補に優先的に選挙資金を配分するといった絞り込みをするのではないかと思う。おそらく、そうやって資源の集中配分をしないと、次の選挙で民主党は壊滅してしまうかもしれない、といった危機感を持っているのではないか。

ともあれ、ここから逆算すると、輿石氏は解散は最短でも1ヶ月後、できれば年内ギリギリ引っ張っての総選挙を想定してるのではないかと思われる。

ただ、それもこれも、18日の幹事長会談及びその後の党首会談が首尾良くいっての話にしか過ぎない。結論を出すにはもう少し事態を見る必要がある。

とはいえ、与党を差し置いての経団連との会談や、韓国への麻生元総理の派遣など、政権交代を見越して着々と歩を進めている自民党と、どうにかして壊滅だけは避けたい民主党とで描かれる鮮やかなコントラスト。大きな流れは明らかに政権交代に向かっている。


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この記事へのコメント

  • sdi

    >輿石氏は「解散は首相の専権事項だ」
    さすがにこの発言は真実ですね。誰が何を言おうと、どんな約束をしようと野田総理が解散権を行使しないかぎり解散はできません。なにせ日本国憲法で明文化されてますから。
    仮に「条件が整えば年内に衆議院を解散する用意がある」という話が真実だったとしても、果たして輿石幹事長が事前に知らされていたかどうか。民主党の虚言ぶりの原因は「その場を凌ぐためのでまかせ」が筆頭にくるでしょうが「右手のやってる(やろうとしている)ことが左手に伝わってない」というのもあるのではないでしょうか。何しろ「根回し」という行為を軽視するのは今に始まったことではありません。国家間、省庁間、与野党間のみならず与党内の「根回し」も不足しているんじゃないでしょうか?当たり前のことですが「衆議院解散」は「総選挙」と同義であり、議員内閣制をとる日本政治体制を考えたら「総選挙」はまさに決戦、「総力戦体制」であたらねばなりません。逆にいうと与党組織内での意思疎通が欠如して「総力戦体制」に移行できないなら、踏ん切りがつかず解散を決断できないまま、ずるずると任期切れまで先送りという事態もありえることは想定
    2015年08月10日 15:24
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    輿石の「苦悩」と書くと同氏がなんぞ立派な
    努力をしているように思える. 悪あがきとすべきか.

    いずれにしても, 信用ならない相手との間に
    ホットラインなぞとんでもない.
    幹事長を介さない内緒話は党の結束を崩す.

    後は安倍総裁の「覚悟」と発信力で決まるだろう.
    党内融和を計るか, 日本の将来を考えるか.
    融和の次に将来展望と言う余裕はないだろう.
    2015年08月10日 15:24

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