安倍、野田面談と石破氏の弱点

 
10月11日、野田首相と自民党の安倍総裁がようやく面会した。

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野田首相は輿石東幹事長らとともに、国会内の自民党総裁室を訪れ、安倍総裁に対し「当然のことながら、しかるべき時に臨時国会を開催し、大いに議論していきたい。それに先立ち党首会談をお願いしたい」と申し入れた。安倍総裁も「分かりました。実り多い党首会談にしたい」と表明し、顔合わせは和やかな雰囲気のまま、5分間で終わったようだ。

安倍総裁は記者会見で、「あれだけ明確に国民と約束したのだから、それを果たすだろうという常識の下で応じる」と答え、石破幹事長は「幹事長同士の調整により、週明けには党首会談という段取りになるのではないか」としているから、常識的には週明けの党首会談ということになるのだろう。

だけど、そんな"常識"が通用しないのが民主党クオリティ。

輿石幹事長は、そうした常識を逆手に取って、党首会談や臨時国会の先送りをしようとしている。輿石幹事長は、記者会見で、党首会談について、「(調整を)やってみないと分からない。簡単に言える話ではない」と言葉を濁し、石破氏と携帯電話番号を交換したかを問われても、「そんなに急ぐ必要はない」と突き放している。

こんな調子では、本当に来週党首会談ができるのかどうか疑わしい。

では、幹事長同士での調整なんて面倒なことはスキップして、直接、党首会談をすればいいとなるかというと、そういう訳にもいかない。党首同士で関係が悪化すると、往々にして、何も進まなくなってしまうことが多いから。

普通、党首会談を行う際には、事前に幹事長同士で、大体の話を詰めておくのが常識。党首同士が会談して、なんの成果もないばかりか喧嘩別れでもしようものなら、互いの信頼関係は崩れ、その後の国会運営や審議に影響が出てしまう。

だから、党首会談ひとつ取っても、泥臭いようだけれど、互いの人脈やツテを辿って、相手の思惑を引き出し、互いに自分のところを調整するという、縁の下の部分が結構大きくて、それ故に、とりわけ幹事長には党内を纏めきるだけの器と手腕が求められる。

だけど、安倍自民党の新執行部の民主党とのパイプは決して太くはない。



谷垣前総裁時代には、腹心の大島氏が、岡田氏や藤村官房長官と接触し、谷垣氏も野田首相と携帯電話で「トップ会談」して、3党合意に漕ぎ着けている。

だけど、安倍総裁は野田首相と個人的な繋がりは薄く、パイプはこれから。解散を少しでも先送りしたい民主党にとっては、党首会談が先送りになればなるほど、その分だけ解散も先送りになる。従って、自分から積極的に党首会談の為の幹事長会談をセッティングする必要はないし、自民とのパイプが細いなんてのは却って好都合。しらんぷりしていればいい。

谷垣氏は10月10日に、石破幹事長と党本部で会った際、「与党や首相とパイプを作らないとうまくいかない」と助言したそうなのだけれど、流石に経験者だけに重みがある。

もしも、安倍執行部の幹事長が、石原伸晃氏であったなら、長老パイプを使って、民主に働きかけることもできたかもしれないけれど、石破幹事長は党内長老のウケが悪いこともあり、そちらからの働きかけは、あまり期待できないと思われる。

だから、石破幹事長が、あの民主を相手に"物事"を進めるのは結構な難題になる可能性がある。もしも、民主党が今のように、国会から逃げ回り、石破幹事長が民主党とのパイプを造ることが出来なければ、国会の審議日程ひとつ決めるのにも苦労するだろう。結果として、何も決められないどころか、"何も進まない"事態にだって成りかねない。

もしも、石破幹事長が、もう自分では、にっちもさっちもいかないと判断すれば、今度は、民主とパイプのある、自民党の別の人の協力を仰がなくてはならなくなる。これは、これまで脱派閥を打ち出してきた、石破氏にとって弱点にあたる部分。

だから、石破氏の幹事長就任は、自身の弱点の克服、つまり、党内をまとめ、人脈を広げていくという部分に取り組まざるをえないという逆説的な面もあるのではないかと思う。

10月11日、石破幹事長は、挨拶回りとして、伊吹派会長の伊吹文明氏を訪ねているのだけれど、その際、伊吹氏から「配慮が足りないから嫌われるんだぞ…まずは我を抑えなさい…持論を言う前に党内をまとめるのが幹事長の役割だ」と50分に渡って、"説教"されている。石破氏は反論せずに聴き入り、神妙な表情で部屋を後にしたという。

また、翌12日には、森喜朗元首相と会談しているのだけれど、その際にも森氏から、「いつまでに解散しろ、とあまり言うべきでない。みっともない。」と苦言を呈されている。石破幹事長が「各種世論調査の数字だと、次期衆院選で政権交代できるのではないか」との見通しを示しても、森氏は「取らぬタヌキの皮算用をするな。君が議員票を取れなかった意味をよく考えなさい」と厳しく注意をしたという。

まぁ、これを、長老の口出し、老害とみるのは簡単だけれど、与野党の現状で、しかも常識のない民主党を相手にすることを考えると、石破幹事長も自分が使える武器、手段は多いに越したことはない。

本人は、長老に配慮するなんて馬鹿馬鹿しいと思っているかもしれないけれど、今の内に苦労しておいたほうが、後々になって役だってくるのではないかと思う。その暁には、議員に配る名刺の横に自筆のメッセージが添えられているに違いない。


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この記事へのコメント

  • クマのプータロー

    民主と自民だけ見ると仰るとおりですが、またぞろ公明党の芽が出てきたと言うべきでしょう。ここまであからさまに政局の軸に公明党の突け入る隙ができたという展開は今まで無かったので、輿石も鷹揚に構えていられないのではないかと思います。
    公明党は簡単です。正論を突きつければよいのですから…。
    2015年08月10日 15:24
  • opera

    本来であれば、党首会談などする必要は無いんですね。民主党は、与党の責任として速やかに臨時国会を開き、特例公債法案等の懸案を処理すべきです。ところが、先の国会で問責が成立しているので、このままでは自民その他の野党の協力は得られない。問責の理由は政権担当能力の欠如ですし、一体改革法案成立後の首相自らの『近いうち』解散発言もあり、「協力して欲しければ解散を確約しろ」というのはまさに正論。しかし、民主党は地方交付金や政党助成金等を人質にし、問責は無かったことにして欲しい等の戯言を繰り返し、総選挙を先送りしようとしている。
     今、石波幹事長が試されているのは、正論だけでは通用しない相手・状況でどう局面を打開するか。党内野党的な立場からの批評ではなく、自らが責任者としてどう振る舞うかでしょう(これが党内での信頼にも繋がる)。また、石波氏の悪い癖として、実現に困難が伴うような状況になると筋(正論)の方を曲げてしまう。弁が立つので、その矛盾をうまく糊塗してしまう(外交問題に多い)点ですが、筋を曲げずに何を妥協するのか。例えば、特例公債法案等の一部容認を掲げつつ、単に人脈を作るのではなく、民主党内部に
    2015年08月10日 15:24
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    野党が与党にパイプを持たないと旨く行かない
    と言うことだが, 何だか変だと思うのは私だけか?
    国会を開く義務があるのは与党であるし,
    協力を求めるのは与党である. 石破幹事長と
    パイプを持たないのは輿石幹事長の「大弱点.」
    メディアの戦略は「枠割の入れ換え」という
    戦略で自民党を攻めてくるのだろう. 谷垣総裁は
    それに乗せられて携帯番号を交換した愚か者だ.
    2015年08月10日 15:24
  • sdi

    石破幹事長の弱点はそのまま安倍総裁の強みになってますが逆も真なんですよね。石破氏の強みが安倍総裁の弱点になっている。伊吹氏の指摘は正鵠を得てると思いますが、その石破幹事長が党員票では圧倒的だった理由についても認めなくてはアンフェアではないでしょうか?
    石破幹事長は経歴からして圧倒的に自民党内での基盤が弱い。豪運宰相小泉純一郎に近いところがありますね。派閥の長でもなく、主要閣の経験もない。小泉首相のときは森元首相が派閥を上げてバックアップしましたが石破幹事長にはそこまで付き合ってくれる派閥はないでしょう。安倍総裁としては、総裁選第二位の実績とくに党員票一位の実績を認めた上で「私の次の首相になりたかったら次の総選挙(と参議院選)に勝ってみせろ」ということでしょうね。幹事長として総選挙の采配を振るえば党内人脈も広がりますし「石破チュルドレン」を組織することも夢じゃないですからね。
    石破幹事長がこけたら、安倍総裁の次は石原伸晃元幹事長ということになっさてしまいます。今の石原氏に国の舵取りなんて任せるなんて考えたくないですからね。
    2015年08月10日 15:24

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