落日の野田、東雲の安倍

 
臨時国会が始まらない。

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1.ダッチロールの野田内閣

理由は、特例公債法案などの重要法案成立を巡って、与野党での折り合いがつかないから。民主党は3党の党首会談で特例公債法案への協力を取り付けようとし、自公は、解散時期の明示がない限り協力しないとのスタンスで、双方譲らない。

10月3日、藤村官房長官は「3党の協議がまず必要。それを見守っている」として臨時国会前の党首会談を是としていて、輿石幹事長は、党首会談は11日に自民党に対して執行部発足のあいさつを行ったあと、速やかに実現するよう努力したいとしているから、今週末から来週には行われるのだろう。

ただ、野田首相は、解散時期について「今年8月に、自民党の谷垣・前総裁に私が申し上げたことは決して忘れてはいないが、特定の時期まで、具体的に与野党の党首で詰めていく性質のものではないことは、安倍総裁も元総理大臣だから、ご存じではないか」と明示しないことを宣言しているから、物別れに終わる可能性もある。

それにたとえ、何らかの折り合いがついて、臨時国会が開かれたとしても、先日発覚した、田中法相の外国人政治献金問題などの閣僚スキャンダルもあり、火達磨になることも警戒してる向きもある、

田中法相の政治献金問題については、細野政調会長が「外国人から献金をもらった一事をもって、すぐ政治家が入れ替わるのはよくない。説明を尽くした場合には次のチャンスもしっかり与える、という見方をしていただきたい」と庇っているけれど、まず、外国人からの献金は、政治資金規正法違反であることは揺るがない。だから、説明を尽くすのは勝手だけれど、違反した事実についての処分が為されなければ、規則の意味は全くない。何でもかんでも説明さえすればOKという訳じゃない。

また、何某かの問題で、すぐ政治家が入れ替わるのが良くないのであれば、すぐ交代しなさそうな、"綺麗な"人を最初から選ぶべきであって、そのロジックをいうのであれば、田中法相を任命した責任も同時に問われなくちゃいけない。

だから、田中法相が国会で火達磨だろうがが槍玉になろうが持って瞑すべし。

岡田副首相は「審議の目途がたたなければ、開くだけの意味が見いだせない」と臨時国会を開かない可能性まで仄めかしているけれど、臨時国会を開かなくても、通常国会は開かれる。その時になっても審議の目途が立っていなかったら同じこと。やっぱり火達磨になって貰う他ない。

それに、特例公債法案が通らないから、予算執行を遅らせる。それでも11月には予算が枯渇するとしているのは、民主党のほう。自分でリミットを決めておきながら、自分で国会を開かない。支離滅裂。

特例公債法案だって、いくら民主党が、ジミンガー、ヤトウガーと言ったところで、国会が開かれないとどうにもならない。先の国会で参院に特例公債法案を送ってから「ジミンガー」をしていたころなら未だしも、今の状況下でジミンガーをしても、じゃあ国会開けよ、とブーメランになって帰ってくるだけ。

今回の野田改造内閣にしても、産経新聞社とFNNが10月6~7日に実施した世論調査で、内閣支持率は25.6%と改造前の9月のそれより1.0ポイント下げている。内閣改造したところで期待されていない。

しかも相次ぐ離党で、衆院過半数も危うくなってきている、今や、国民新党を入れても過半数割れまであと8人までになっている。

そんな折、山田元農相や川内博史衆院議員らは11日を目途に、「コモンズ研究会」(仮称)という新たな勉強会を発足させ、脱原発に向けたエネルギー施策やTPPの交渉参加に慎重な立場で提言をとりまとめる動きが出ている。この勉強会は、先の代表選で野田首相の対立陣営に所属した議員を中心に、10人以上の規模とする構えで、事実上の離党予備軍とも受け止められているという。

もしも、この勉強会が8人以上集まり、彼らが全員離党すれば、与党過半数割れになるから、俄然野党からの不信任案も現実味を帯びてくる。9月30日、自民の石破幹事長は、与党が過半数割れすれば、不信任案を提出すると発言している。

今や、野田内閣や民主党執行部の思惑とは別に、周りは解散および次期政権に向けて動き出している。




2.次を見据える安倍総裁

10月9日、都内のホテルで、自民党首脳と経団連の米倉会長らとの政策懇談会が開かれた。「攻めながら守る安倍戦略」のエントリーでも触れたけれど、この懇談会は、野田内閣を差し置いて行われたものであり、財界がはっきりと民主党に見切りをつけたことを示している。

懇談会の内容は種々の報道でちらちら明かされているけれど、いくつか見出しだけ拾ってみると、次のとおり。
・安倍総裁「強い経済を」 自民、経団連と懇談会(中国新聞)
・自民総裁と経団連会長 “早期解散を”(NHK)
・早期解散で一致 自民・安倍総裁と米倉経団連会長(TV-asahi )
・「断固として領土守る意志示す」 安倍自民総裁が米倉経団連会長と会談(産経新聞)
・<経団連会長>安倍総裁らと初の政策対話(毎日新聞)
・自民安倍総裁「原発ゼロ無責任」 経団連と政策懇談会(共同通信)
・米倉経団連会長、安倍自民新総裁「経験と実行力持つリーダー」(日経新聞)
・自民と政策対話=政府・民主に先立ち―経団連(時事通信社)
懇談では、経団連が、TPP推進や原発ゼロ反対、対中関係改善などを要望したのに対して、安倍総裁は、原発ゼロ反対には同調したものの、TPPは慎重に考えることと、対中関係については、「日本に断固として領土を守るという意志がないと思われる間違ったメッセージを発することが日中関係をあやうくする」と述べ、安易な妥協はしない旨を伝えている。

報道内容を見る限り、安倍総裁も経団連の要望を聞きつつも、それなりに自身のスタンスも述べていて、言いなりというわけではないように見える。

ただ、安倍総裁は「政治と経済界が意志をひとつにしていくことが結果を出していく」とも発言しているから、互いの意見の相違は、今後、擦り合わせて纏めていこうという意思表示でもあるから、最終的には何らかの落としどころを見つけて整合していくものと思われる。

余談ではあるけれど、上記に挙げたマスコミ各社の報道のうち、安倍総裁の「領土を守る」発言について触れたのは、産経と時事通信で、見出しでそれに触れたのは、産経だけだった。この辺りに、日本のマスコミのスタンスが垣間見えるような気がして興味深い。

また、8日には、何故か麻生氏が韓国を訪問し、李明博大統領を会談しているけれど、これなんかも見方によれば、次期総選挙後を睨んでの動きにも見えなくもない。

ダッチロールしている野田政権を横目に、大きな流れは"近いうち"の政権交代に向けて動き出している。


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この記事へのコメント

  • sdi

    先の先を見て布石を打つのは民主党には全く出来なかった芸当なので、大いに成果を期待するところです。ただ、足元を固めることも怠らないためにも前々回の参議院選の大敗の戦訓を忘れないで欲しいですね。年金叩きのせいもありますが、有権者が第一次安倍政権に望んでいた政策と安倍首相がやりたかった政策の乖離が大きかった故に、その隙間をマスコミと小沢一郎党首(当時)に突かれたのではないでしょうか?
    民主党としては解散引き伸ばしして衆参同時選を狙うか早急に解散して下野するか、どちらにしても来年の参議院改選で「ねじれ国会再び」を狙うしか存続の道はないでしょう。自民党側では総選挙勝利の目算は立っていると思われますが、参議院改選のほうは総選挙の結果と選挙実施時期により変動しますから目算が立ちにくい。圧勝する必要はないので、二つの選挙で過半数獲得して欲しいですね。
    2015年08月10日 15:24
  • opera

    一応確認しておくと、民主党政権が行なわなくとも、臨時国会を召集する方法はあります。

    【憲法53条
    内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。
    いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。】

     したがって、衆議院で120名あるいは参議院で61名の要求があれば、臨時国会を開かなければなりません。
     問題は、臨時国会を開いて何をするか、でしょう。
     特例公債法案も選挙制度改革法案も、与党民主党がまともに成立させる気が無いのは明らかですから、臨時国会召集後、直ちに内閣不信任案決議を成立させ、解散に追い込む(総辞職も理論的にはあり得ますが、民主党政権が崩壊するのは同じ)ことにならざるを得ません。
     衆議院における民主党の過半数割れまで5、国民新党を含めても8ですから、この辺のせめぎ合いが今後の焦点になるだろうと思います。
     自公がリミットを12月9日と設定したのは、単にトリプル選挙を避けるだけでなく、来年度の予算編成から民主党を排除するという趣旨でしょうし、今年度の特例公債法案や選挙制度改革法案を犠牲にしても已む無し、ということ
    2015年08月10日 15:24

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