野田改造内閣と安倍総裁への期待
10月1日、第3次野田内閣が発足した。
1.第3次野田改造内閣発足
改造内閣は、18人の閣僚のうち10人を交代させる大幅改造で、民主党の面々は自画自賛しているようだ。輿石東幹事長は「野田佳彦首相が常々言っているチーム力があり、国民の皆さんの期待に応えて仕事ができる内閣だ」と評し、渡部恒三最高顧問は「国民から見て、未来に輝かしい希望を持てるような人がいないが、『あの大臣では困ったな』という人もいない。『60点内閣』か『まあまあ内閣』だ」とコメントしている。
それに対して、野党の目は厳しい。自民党の石破幹事長は「今日の内閣改造で私はキレた。国民をバカにしているのか。在庫一掃?思い出作り?選挙対策?論功行賞?本当にまじめにやる気があるのか。国家を念頭に置いた組閣とは受け取れない」と述べているし、公明党の山口代表は「首相が言う『適材適所』が崩れて改造を繰り返している。政治主導も果たされていない」と指摘している。みんなの党の渡辺代表も「入閣待望組の『在庫一掃セール』という感じを受ける。『さよなら記念内閣』『卒業記念内閣』というところじゃないか」と手厳しい。
ただ、まぁ野党が与党を批判するのは常なのであまり目くじら立てても仕方がないのだけれど、野田政権は長くないと感じているのは野党だけではなくて、政治記者も同様のようで、産経の阿比留氏も自身のブログで、「貧すれば鈍す、もう長いことないなという印象も受けました」と述べている。
その阿比留氏が懸念を示しているのが、田中真紀子氏の文科相起用。
阿比留氏は田中真紀子氏について、かつて小泉政権時代に、様々な媚中発言や対米軽視の言動で外相を更迭されたことや、秘書給与流用事件などの金銭スキャンダルも発覚している点を挙げ、碌なもんじゃないと断じている。
田中真紀子氏は自民党時代に旧科学技術庁長官も務めたことがあるのだけれど、文科省職員によると「政策とは関連がないところで職員ともめた。官房は大変なことになる」と漏らしているし、民主党議員の中には「絶対に一緒に仕事をしたくない人だ」と語るものまでいる始末。
案の定、9月1日、田中真紀子氏が、衆院議員会館の事務所に立ち寄った際、挨拶に訪れた事務次官とすれ違うと、近くの女子トイレに呼び込み、中で打ち合わせを行ったとの報道がある。何でも、滞在していた北京からの帰国が台風の影響で遅れたため、打ち合わせの時間がなかったからだそうなのだけれど、早くも波乱の幕開け。
更には、就任会見で入閣の理由を問われ「よく分からない。同じ人材ばかり。メリーゴーラウンドみたいという批判を、総理も気にしているのでは・・・あまり人気のない内閣・・・言っていることと、やっていることが違う」と真紀子節を炸裂。また、野田内閣が目指す原発ゼロの目標についても「なかなか厳しく、ハードルが高いのでは」と、もう閣内不一致を起こしてる。
尤も、田中真紀子氏は、田中角栄をして、自分の手に負えない「うちのじゃじゃ馬」とまで呼ばせた御仁。だから、会見での真紀子節もいつものことなのかもしれないけれど、角栄でも手に負えなかった「じゃじゃ馬」を、野田首相が飼い慣らせるとも思えない。真紀子氏本人も言っているように、一体どういう理由で入閣させたか理解に苦しむ。
2.田中真紀子氏入閣は財界へのメッセージ
新聞等では、先月の民主党代表選では、真紀子氏は一部から出た出馬要請を受けず「政治を前に進めるために野田首相に続投してほしい」と表明して、非主流派も野田首相を支持する流れをつくった論功行賞ではないかという見方や、日中関係が悪化している中、中国との関係を重視する姿勢をアピールする狙いがあるのではないかという見方をしているようだ。
ただ、筆者は、論功行賞は兎も角として、もう一方の「対中配慮」については、どちらかといえば中国向けというよりは、国内の財界向けの人事であるような気がしてならない。なぜなら、財界は、昨今の野田内閣の対中方針に対して、激しく反発しているから。
9月27日、経団連の米倉会長は、北京を訪れた際、尖閣問題について「中国側がこれほど釣魚島の問題を重視しているときに、日本側が問題がないというは、大変理解しがたい。日本側はこうしたことを二度と言わないでもらいたい。」と述べたと報道されているけれど、これが本当であれば、財界は、野田政権の対中方針に強烈な不満を持っていることになる。
だから、野田首相はそれも考慮した上で、真紀子氏を入閣させて財界に関係改善する気はありますよ、と財界にメッセージを送った面があるのではないか。
とはいえ、野田首相が本気で中国との関係改善を考えているのであれば、自民党の安倍総裁が、中国と深いパイプを持つ高村氏を副総裁に起用したように、文科相ではなくて、外相とか副首相くらいにしてやらないと中国に対するメッセージにはならないように思う。
中国は尖閣問題について、日本政府に対して「尖閣諸島に領土問題は存在しない」という公式見解を放棄すれば、関係回復に向けた交渉を始める用意があるとの認識を示しているから、中国との関係改善は、日本がこれまでの原則を崩して、大幅譲歩することが前提になっている。
真紀子氏は10月1日の会見で、尖閣諸島の棚上げ論について問われたとき「『棚上げ』ということは申していません。中国紙などの質問を受けた際、前段で私の歴史認識は日本政府と同じだとはっきり言っている。閣内不一致ではない。・・・武力ではなく、知恵を出し合って解決すべきだ」と述べているけれど、交渉の前提が、尖閣の紛争地認定である限り、知恵を出そうと交渉に臨んだ時点で既に敗北してる。
まぁ、官邸としても、真紀子外相や真紀子副首相では、流石に危なっかし過ぎて、とても起用できないという判断があったとすれば、それはそれで、至極妥当な判断だとは思う。だけど、外相などの要職ではないにしても、閣内に真紀子氏を抱え込むのは、いつ爆弾発言するか分からないという不安要素だけが残る結果となるような気がしてならない。
3.安倍総裁に対中関係改善を期待する財界
尤も、財界はこの人事で矛を収めるどころか、野田政権に最後通牒を突きつけている。
10月1日、米倉会長は、今回の第3次改造内閣についても「近いうちに国民の信を問うべきである」と、早期の衆院解散・総選挙を求めるコメントを発表している。これは、対中関係改善ができなければ、政権から降りるべしとの財界からのメッセージではないかと思う。
では、次回総選挙後に総理になると見られている安倍自民党総裁では関係改善ができるのかどうかが焦点になると思うのだけれど、「習金平に対抗する『自由と繁栄のプロパガンダ』」で述べたように、中国は9月24日に政府高官を訪日させていて、中国外交筋は自民党とのパイプを強めたいと発言している。
更に、安倍新総裁が誕生した翌日の9月27日には、経団連の米倉会長や日中友好7団体のトップを務める国会議員らの訪中団が北京を訪れ、賈慶林・全国政治協商会議主席と会談している。この訪中団の中には、先日、自民党副総裁に任命された高村氏も含まれている。
今回の会談は、中止された日中国交正常化40周年の記念式典に代わって中国が設定したもので、会談相手の賈主席は、中国共産党政治局常務委員の一人で序列第4位の地位にある。尖閣国有化以降、日本側と接触した要人としては最高位になる。
振り返ってみると、2006年10月、小泉総理の後を受けた、安倍氏は総理就任直後に中国を公式訪問して、胡錦涛主席、温家宝首相、呉邦国委員長と相次いで会談、日中関係の改善の確認と「戦略的互恵関係の構築」に合意している。
だから、これらのことを合わせて考えると、財界は民主党に見切りをつけ、次の安倍政権に対中関係改善を期待しているのではないかと思う。
それと関係しているのかどうか分からないけれど、先週末の報道各社の世論調査によると、自民党の支持率が急上昇し、民主党の支持率は軒並み下落している。
また、野田首相が「近いうち」とした衆院選についても、年内との回答が、フジテレビ「新報道2001」の調査で58.6%、日本テレビの調査で48.4%となり、毎日の調査では、実に71%が「首相は約束を守るべきだ」と回答している。
解散圧力は日増しに高まっている。
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この記事へのコメント
sdi
まあ、副大臣にまで拡大すると「次の総選挙に備えての箔付け人事」ということになりそうですが。
ちび・むぎ・みみ・はな
「福島 嘘と真実: 東日本放射線衛生調査からの報告」
(高田純)を読んで呆れ返った. 高田先生が考案した
6段階危険度レベル A, B, C, D, E, F でいうと,
発電所敷地内を除いて安全なレベルD 以下であるとのこと.
特に, 通常の生活であれば周囲でもレベルE以下という.
これで我々は大騒ぎをしたわけだが, おまけとして,
支那の核実験に由来する被曝で我々の骨格にはストロン
チウムの蓄積があり, その危険度レベルはDという.
この事実を我々が報道を通して知っていたなら
福島の被曝は対した騒動にならなかったと思う.
今回の日本国民の被害の殆んどは嘘付ヒトデナシ首相に
あるが, 同時に真実を知らせずに嘘ばかりを書く
メディアにも責任がある.
大東亜戦争は近衛文麿と真っ赤な(嘘の)朝日新聞が
引こ起こしたが, 今回の騒動(家畜が他数「殺された」)
も共産主義のヒトデナシと真実を伝えないメディアが
引き起こしたと言える.
これから安倍総裁へのバッシング報道が本格化するが,
まこと日本のメディアは亡国の存在だと思う.