橋下市長率いる「日本維新の会」の支持率が急落している。
フジテレビの「新報道2001」の世論調査では、9月7日の調査で、次の総選挙の比例で投票したい党として7.0%(当時は大阪維新の会)、13日の調査で9.4%の支持があったところ、9月20日には4.8%、30日も5.0%と半減した。8月までは、他の世論調査などで、おおむね10~20%の支持があったことを考えると大幅な下落。
その原因として、橋下氏の原子力発電所の再稼働に反対から「条件付きでの賛成」に転じるなど発言のブレや、最近では、竹島の日韓共同管理案を主張するなど、「国家観のなさ」を指摘されたりしている。
筆者は、維新八策の概要が発表された、今年3月の段階で、橋下氏に政治哲学があるのかと疑問を呈していたから、今更、国家観がないといったところで驚きもしないけれど、それ以外にも、日本維新の会立ち上げに当たって、自民・民主・みんなの党などから受け入れた現職国会議員9人の中に、特に大物議員がいるわけでもなく、ぱっとしないという観測もある。
選挙プランナーの三浦博史氏は「公開討論会はただの"内定者懇談会"で、散漫で緊張感がなかった。また、維新政治塾の塾生街頭演説では"橋下ベイビーズ"の素顔が垣間見え、とても国政をまかせられる顔ぶれではないということが明らかになった。今後、候補者の顔が見えてくると、どんどん支持率が下がるのではないか」とコメントしている。
確かに、9月は、自民党の総裁選に注目が集まり、各候補者の政策や討論が白熱していた。各候補者は閣僚経験もあり、それなりにきちんと政策討論をしていたから、既成政党なりの人材の厚みを見せた面はあるだろう。だから、余計に、日本維新の会が国政政党として大丈夫なのかという不安というか、目が覚めたというか、有権者も我に帰ったところがあるのかもしれない。
これまで、維新の会は、総選挙に向けて、自民、特に安倍氏と連携を取るのではないかという見方があった。維新の会の関係者によると、安倍氏に対して、自民党を離党して新党の看板になってほしいと要請したこともあったとされる。
実際、安倍氏は離党こそしなかったものの、「「憲法96条では完全に一致している。96条『改正』についてわれわれも保守系議員グループでその方向性を示したが、なかなか国民に届かない。彼ら(大阪維新の会)が発信すると国民的な話題になる。彼らの力は、そういう大きな変革には必要なのかなと…」と述べていて、連携を否定していない。
ただし、維新の会が衆院選で350~400人の擁立方針を打ち出している以上、自民とて総選挙では維新の会と対決せざるを得ない。したがって、維新の会が候補者をぐっと減らさない限り、選挙前の連携は、事実上ないとみていいだろう。
実際、選挙前の連携については、維新の会も、自民も共に否定している。
では、選挙後ではどうかというと、維新の会は部分的に連携することを視野に入れているようだ。9月26日、橋下市長は、「安倍総裁とは教育改革とか憲法問題、公務員改革で価値観がガッチリ合うところもある…教育改革や憲法改正では価値観が合うが、TPPや原発政策、外交政策、消費税の地方税化では一致しておらず、選挙の時は戦わざるを得ない…違う道を提示するので、国民に判断してほしい」と述べている。
また、松井大阪府知事も「政策が一致できるところでは、争うつもりはない」と、含みをもたせた発言をしているから、脈はあると思われる。
ただ、受ける側の自民はどうかというと、昔ほど維新の会に魅力を感じていないかもしれない。なぜなら、維新の会の党内のまとまりや橋下氏の発言のブレなど、不安要素が顕在化してきているから。
9月15日、日本維新の会に参加する国会議員と「大阪維新の会」の府議、市議らが初会合を開いて、党運営を定める規約を固め、党代表の任期は3年で再選可能とし、代表選は国会議員、地方議員ともに1人1票の投票で決めるとしている。
だけど、元々、国会議員側は、規約について「国会議員の自立性を明文化させないと国会対応が取れない」「各地域ブロックの責任者は国会議員にすべきだ」などの意見を持っていて、必ずしもすんなりと決まったわけではないと伝えられている。
実際、国会議員の一人は、協議終了後「過渡期の規約だから」と、変更もありうることを示唆している。このような水面下の対立を解消できないままだと、今後、維新の会が党の意見を纏めるときでも党内でもめる可能性があるし、場合によっては、府議、市議の意見を重視した、地域政党な意見を国会の場で主張することになることだって考えられる。
今のところ、維新の会は、消費税の地方税化を提唱しているけれど、これだって、見方によっては、地域政党な意見だと言えなくもない。だけど、消費税を地方税化すると、人口が多い自治体と少ない自治体とで税収が大きく違ってくるから、過疎地の自治体なんかは財源が不足して、行政サービスが滞ってしまう危険だってある。その辺りについても、国政政党であれば、きちんと考えなくちゃいけない。
また、橋下氏にしても、原発再稼働をめぐる発言以来、発言にブレが目立ってきている。従軍慰安婦問題にしても、当初は、「従軍慰安婦はなかった」としていたのが、「どこまで認めるかをしっかり議論」に変わっているし、竹島の共同管理を言ったかと思えば、「周辺海域の利用についてルールを決めていこうという意味だった」と釈明している。
だから、こうしたブレる代表が率いる党と連携すると、かえって獅子身中の虫というか、扱いを間違えると、自分の党の方が振り回されてしまうことにも成りかねない。
筆者は以前、安倍氏は維新の会に対して、「政策アウトソーシング」的な使い方をするのではないかと述べたことがあるけれど、昨今の状況をみると、仮に、安倍氏にその狙いがあったとしても、もっと限定的かつ、緩やかな形を考えているのではないか。例えば、教育問題や憲法改正などといった一致できる分野に絞って、かつ、維新の会が言ったことについて、ちょっとコメントして、党の政策に微調整を入れる程度の、いわば「観測気球」レベルで繋がるという具合に。
ただ、たとえ、「観測気球」であったとしても、次の衆院選で、維新の会が何十議席も取るようなことがあれば、無視できない勢力になる。だから、現段階では繋がりだけは維持しておきたいところだろう。
つまるところ、全ては衆院選の結果次第ということになるのだけれど、安倍総裁にしても、衆院選までは中立の立場で様子見するのではないかと思う。

この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
安倍総裁は全ての面において主導権をとる方向に
行くと思う. 従って, 仲良くしたいなら自民党
の主張に賛同せよという形にするだろう.
それが戦いと言うもの.
sdi
安部自民党を支持できないけど民主党も支持できないレフト指向な層へのアピールでしょう。