
今日は簡単に。
11月29日、ニコニコ動画で"歴史的な"党首討論が行われた。
討論には、10政党の党首が集まり、およそ約1時間半に渡って行われた。参加者は次のとおり。
民主党 野田佳彦 代表当初、難色を示していた野田首相も参加することになり、ニコ動運営サイドにも報道各社の問い合わせが殺到。討論会のネット中継は100万人以上が視聴したようだ。
自由民主党 安倍晋三 総裁
日本未来の党 嘉田由紀子 代表
公明党 山口那津男 代表
日本共産党 志位和夫 委員長
みんなの党 渡辺善美 代表
社会民主党 福島みずほ 党首
国民新党 自見庄三郎 代表
新党大地 鈴木宗男 代表
新党日本 田中康夫 代表
筆者もタイムシフト予約で視聴したのだけれど、なかなか良かったように思う。特に司会の角谷浩一氏が、各党首の発言時間を結構厳格に守らせた上に、各党党首に均等に発言機会も振って、自分は殆ど口を挟まない。下手な地上波よりもよっぽど公平にやってるんじゃないかと思えた。
討論のテーマは、TPP、消費増税、原発の3つ。その中で、消費増税についての議論について、簡単に討論内容を拾ってみる。討論の前に、討論テーマについて、各党にアンケートを取って、その結果を発表したのだけれど、消費増税については、民自公の3党が賛成、その他政党は凍結、もしくはその他だった。
各党の討論内容は、おおよそ次のとおり。
志位氏「今は、所得が減り、消費が減り、また所得が減る悪循環。これで増税は更に所得を奪うこと。経済が悪くなれば税収も悪くなる。消費税5%にしたときも税収が減った。共産は別の道があると提案してる。」・・とまぁ、こんな感じだったのだけれど、筆者が驚いたのは、消費増税問題を討論する中で、経済成長による税収増に触れたのは、自民党の安倍総裁ただ一人だったということ。
嘉田氏「凍結。不況下の増税は経済が悪化する。今やることは歳出削減。霞が関予算には無駄が多い。稼ぐ力をつける。子育て中の女性が仕事を欲しがっている。その人が仕事につけば内需が拡大する」
田中氏「増税で景気回復した国はない。イギリスは消費税を上げたら税収がマイナスになった。日本の企業で税金を払っているのは3割しかない。外形標準課税を適用すれば、10%税収が上がる。野田さんなぜやらないのか」
福島氏「デフレ、格差拡大の中の増税はおかしい。でも、富裕層への増税はカットした。なぜ法人税、所得税を下げたのか。欧米では食料品には軽減税率を適用してる。不公平だ」
安倍氏「消費税5%の事例は参考にしてる。デフレ進行の中では消費増税しない。けれど年金・医療・介護で毎年一兆円歳出が増えている。その責任がある。政府の900兆の借金金利の問題もある。財政再建はしないといけないが、デフレ脱却をしないと税収は増えない。だから、これまでの日銀の伝統的なやり方ではない政策を考えている。経済成長する。無駄遣いをなくす」
野田氏「誰でもいつか社会保障のサービスは受けることになる。それはタダではない。給付には負担がある。支える側が少なくなると持続可能性がない。だから広く等しく分かち合おうとするのが消費税。それを社会保障の財源にする。給付の面も考えて欲しい。格差是正はやらないといけないと思っている」
山口氏「税制全体の改正が必要だ。累進課税の見直しもやる。8%から軽減税率をやるべきだと考える。欧米では食料品、メディアに適用している。国民からも賛同を得ている。」
渡辺氏「消費税が社会保障の財源というのが間違い。社会保障が所得の再分配であるならば、所得税の中でやるべき。消費税は全額地方財源にすべき。歳入庁を創設すれば保険料のとりっぱぐれがなくなる。2兆円くらいは増収になる。」
鈴木氏「政権交代のとき、鳩山さんは4年間消費増税しないといった。でも菅さんになって増税にTPPになった。民主主義では手続きが大事。その次が中身だ。手続きも中身もないのは民主主義に反する。消費増税で国民に負担を強いるなら、まずは国会議員の定数削減だ。公務員を2割切れば、1兆8千億の財源が出る。国会議員の身を切る改革が先だ。」
志位氏「総理は社会保障の財源だから仕方がないといった。でも何故不公平税制を正さないのか。一億以上の所得では税の負担が下がる。大企業と中小企業の法人税の実効負担は、大企業が19%に対して、中小は26%だ。不公平税制を正して、大企業、富裕層に応分の負担を求めるのが先だ。所得税の累進課税を強化して財源をつくればいい。なぜ消費税なのか」
野田氏「税制の抜本改革はやらなきゃいけない。消費増税は社会保障の財源にする。資産課税は格差是正の観点からの見直しは必要。消費税増税はマニフェストで言わなかったが、欧米が金融危機になり、財政と経済の両立を図る待ったなしの状態と思い、判断した。手続きは丁寧にやった。暴走した積りはない。だから、今回ここで国民の信を問うている」
田中氏「日本の会社の7割が法人税を払ってない。野田総理は財政規律を守るために消費税を上げるといった。それなのに前の国会では、財政規律を破る赤字国債を3年間青天井で発行できると国会審議無しで決めた。財政規律を守るというのなら、なぜ外形標準課税を適用しないのか」
自見氏「誰も消費税を上げろなんて言いたくない。97年に消費税を5%に上げたとき、拓殖銀行や山一証券が崩壊して、その恐ろしさは分かっている積りだ。だがなぜ賛成したかというと、自分の本職は医者だ。高齢社会で医療・年金、お金が要る。安定した財源が要る。景気条項を守った上で、増税は止むをえない。」
その他党首は全部、無駄を削減しろだとか、富裕層の税率を上げろだとか、税金をしっかり徴収しろ、だとか、お金をどうやって取るか、又は、どうやって無駄を省くかそんなのばっかり。
昔でいえば、「検地と刀狩」をするというようなもの。それだけしか言ってない。新しい田畑を開墾して収穫を増やしてしまえばいいんだという発想をしているのが安倍総裁だけ。なんという貧乏マインドであるのか。野田首相の討論にしても、今ある財源でなんとかするしかない、という貧乏神的発想から全然抜け出せていない。
筆者は、政権交代前の2009年7月に「タタミの田んぼ」というエントリーで、自民党と民主党の経済対策について、ドラえもんの話を引用しつつ、民主党の経済対策は、一個の餅を巡ってケンカするようなもので、自民党の餅を増やそうという考えの対極にあると指摘したことがあるけれど、その時から何も変わってない。
貧乏神に財布を持たせても、貧乏になるだけ。やはり貧乏神にはとっとと御退場いただいて、福の神にお出で願うべきだろう。
この記事へのコメント
とおる
民主党: 労働組合に支援されている政党なので、労働組合的な体質(経営側から組合の分け前の要求を飲ませる)から抜けきらない。
自民党: 腐っても資本主義の申し子。経済発展についての見識が少しはある。