メディアの利用実態とネットの可能性について

 
11月24日、公益財団法人の新聞通信調査会はメディアに関する全国世論調査の結果を発表した。この調査は2008年から行われていて、今回で4回目。

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質問は全部で33あり、大きく「各メディアの印象・信頼度」、「東日本大震災とメディア」、「新聞への意見」、「生活の中の新聞」、「新聞のこれからとインターネット」の5項目に分かれている。そのサマリーを挙げるとざっと次のとおり。

-各メディアの印象・信頼度
1.各メディアの印象は? …情報源として欠かせない「新聞」、信頼の「NHKテレビ」、面白い「民放テレビ」
2.各メディアの情報の信頼度は? …1位「NHK テレビ」74.3 点、2位「新聞」72.0 点、3位「民放テレビ」63.8 点。
3.各組織、団体の信頼感は? …「国会」の信頼層、昨年度より7ポイント減。政治不信さらに高まる。

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4.東日本大震災で情報を得たメディアとその信頼度は? …接触率はテレビが圧倒的、震災直後の被災3県では「ラジオ」が有効。信頼度は1位「NHK テレビ」(67%)、2位「新聞」(55%)
5.東日本大震災に関する新聞の報道は?  …被災3県では「被災地の状況」「被災者の安否情報」を70%以上が評価。
6.東日本大震災に関するNHKテレビの報道は? …すべての報道内容について他のメディアより高い評価。
7.東日本大震災に関する民放テレビの報道は? …「被災地の状況」を70%前後が評価。
8.東日本大震災に関するインターネット情報は? …被災3県で「被災地の状況」を60%が評価。
9.東日本大震災に関する報道で、今後、新聞に望むことは?  …「放射能の拡散状況」への要望が72%。
10.新聞の原発事故報道についてどう思う? …「確実情報に限定して報道」が56%、不確かでも最悪のシナリオを含めて報道」が27%。
11.東日本大震災を境に、新聞に対する信頼感は? …「高くなった」と回答した人が19%。被災3県では29%にのぼる。

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12.新聞についてどう思う? …情報の「多様性」「正確性」「責任感」に高い評価。
13.新聞の政治に対する態度についてどう思う? …「不正を追及」「客観的な視点」に4割前後が肯定。「政治家についてすべて報道している」には変わらず厳しい評価。
14.新聞の政治的立場についてどう思う? …欧米のように政治色を出すことに否定的なのは昨年度と変わらず。
15.新聞の記事の満足度は?  …ラ・テ欄、地元記事、社会記事など、身近な記事の満足度が高い。
16.新聞全般の満足度は?  …満足している人は60%、不満な人は7%。高年齢層ほど満足度が高い。

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17.新聞を読んでいる人は?  …「読んでいる」は朝刊83%、夕刊31%、減少傾向に歯止め。
18.新聞を読む時間は? …平均時間は28 分で昨年度と変わらず。若い世代ほど短い。
19.新聞を読む場所は? …新聞を読むのは朝刊、夕刊共に自宅が中心。
20.新聞を読む理由は? …新聞を読むことは生活の一部。1位「習慣になっている」、2位「世間の動きがわかる」
21.よく読む新聞記事は? …身近な記事が人気。1位「地元記事」、2位「社会記事」、3位「ラ・テ欄」
22.新聞を読まない理由は? …1位は「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」(67%)、2位「新聞を取っていない」(42%)。
23.戸別配達をどう思う? …日本独特の戸別配達制度、「続けてほしい」81%。減少傾向から増加に転じる。
24.夕刊の発行をどう思う? …「続けてほしい」は22%。減少傾向から転じて、若干の増加。
25.月ぎめ新聞の購読状況は? …85%が購読。30 代で購読68%と最も少ない。
26.新聞の購読料をどう思う? …「高い」とする人は51%。若い世代で負担感が大きい。
27.通信社の役割を知っている? …特に若い世代で「役割を知っている人」は少ない。
28.見たり聞いたりしたことがある通信社は? …1位「共同通信社」(69%)、2位「ロイター通信」(68%)で順位変わらず。

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29.インターネットのニュースをどの程度見る?…「インターネットニュースを毎日見る」20 代、30 代では半数近く。30 代以下では朝刊の閲読率を上回る。
30.よく見るインターネットニュースの記事は? …1位「スポーツ・芸能に関する記事」(71%)、2位「社会記事」(53%)
31.インターネットニュースを見るサイトは? …ポータルサイトが87%、新聞社の公式サイトは26%。
32.将来の新聞の役割についてどう思う? …「新聞が報道に果たす役割は大きい」が昨年度より2ポイント増と持ち直す。
33.電子新聞の利用意向は? …「利用してみたい」21%、40 代以下では利用意向が30%前後。
この中で、特に筆者が注目したいのは、設問1から3までの各メディアに対する印象及び信頼度。次の表は設問1の各メディアの印象についてまとめたものだけれど、その1位のものをみると、情報源として欠かせない「新聞」、信頼の「NHK」、面白い「民放」という傾向が見て取れる。

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面白いことに、NHKと民放を比べてみると、NHKは「信頼でき、影響力があって判り易い」と見なされているのに対して、民放は「面白くて手軽で量が多い」と見なされていて、同じテレビでも情報の質において全く別のものとして捉えられている傾向にある。また、新聞は情報ソースや役に立つとして受け止められているという結果となっている。

これに対して、インターネットはというと、ラジオや雑誌よりは上位にあるものの、NHK、新聞、そして民放の次程度の信頼度しかない。まだまだ世の中ではネットは十分な信頼を得ているとは言い難い。

では、新聞・テレビとネットの情報について年代別にみるとどうなるか。

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上図は、各メディアについて「情報源として欠かせない」又は「情報が信頼できる」と答えた人の割合を示したものだけれど、予想通りというかなんというか、やはり若い世代ほどネット情報を情報源とし、かつ信頼している割合が多いのに対して、年代が上がるにつれて急激に減少する傾向が見られている。

特に、60代以上の世代については、ネットを情報源として欠かせないと考えている割合が1割を切り、信頼していると答えている人はたったの6%程しかいない。これをみる限り、所謂、団塊の世代の人達にネットではこうこう言われているなんて言ってもまったく通じないであろうことが分かる。

ネットをよく使う人にとっては、新聞テレビの編集された報道と、ネット動画等で流される生情報との間に著しいギャップがある場合があることは、よく知られている。だけど、この調査結果を見る限り、情報ソースとして見た場合、ネットが新聞やテレビと互角に扱われているのが30代以下であることを考えると、おおよそ30代を境として、日本国民の間で非常に大きな情報格差が生まれている可能性があると言える。

こうした傾向は、別の調査でも見られる。

今年5月に東京に本社を置く、クロス・マーケティング社が全国15~52歳(1960年~1990年代生まれ)の男女2043人を対象に、「メディア利用に関する調査 ~年代別に見たSNS利用実態~ 」を実施しているのだけれど、その中で各年代別に「普段接しているメディア」を調査した結果は次のとおり。

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この調査結果でも1970年代生まれ以前、即ち30代以上の世代では、テレビと新聞が主に接しているメディアであるのに対して、1980年代生まれ以降、即ち、30代以下の世代では、テレビがトップではあるものの、その以外のネットメディアであるニコ動や新聞、Wikipedia、FBなどのSNSサイトなどにも均等にアクセスしている傾向が出ている。

色んな情報に均等に接するということは、それらに一定以上の信頼性があることが前提になるとはいえ、より多様多種な情報に接していることになるから、テレビ、新聞だけの影響を受けるということにはならず、畢竟、情報操作しにくくなることを意味する。こうした世代が若年層に控えている。

では、こうしたネット情報の中で何が一番信頼されているのかというと、それは、価格.comのような口コミサイトだったりする。

2010年4月にマーケティング支援を生業とするドゥ・ハウス社が、全国在住の20歳~69歳を対象に「情報メディアに関する利用実態調査」として、メディアの利用実態および信頼度などを調査している。それらを利用実態・情報の信頼度・今後の利用意向の3パラメータでバブルチャートにした図を次に引用する。

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これらの中で、テレビ・新聞が利用実態・信頼度が共に高いことはさて置き、それに迫る利用実態と信頼が置かれているのが「比較・口コミサイト」。これはネットメディアの中では、最高の位置を占めていて、影響力という意味では、テレビや新聞に尤も近いメディアであるといえる。

なぜ、口コミサイトがそれだけの信頼を得ているのか確たる理由はよく分からないけれど、少なくとも、一つの対象について、いろんな人が自分の目で評価できるシステムを土台として、いろんな角度から検証されているだろうという暗黙の了解がその信頼度を担保しているのではないかと思う。即ち、"情報の民主化"であり、"情報の集合知"がネット情報の信頼度を高めているのではないかということ。

これに対して、ブログや掲示板、SNS、Twitterなどは信頼度も利用実態もまだまだ。尤も、ツイッターなんかは、2010年当時と比べるともっと利用されているだろうから、もう少し右よりの位置に来ているとは思うけれど、少なくとも信頼度で口コミサイト並にまでいかないとテレビや新聞の域に達するのは難しいのではないかと思われる。

将来、ネットが既存マスコミに対抗しうるときが来るとするならば、それはネット情報の信頼度をどこまで高めることができるかにかかっていると思う。




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この記事へのコメント

  • opera

    ネットの可能性や影響力を考える場合に、本来は異なる次元の問題が一緒に扱われているような気がします。
     一つは、情報の伝搬性や拡散性という側面で、これは国民のライフスタイルが相当に変化しない限り、当分は従来のマスコミの優勢が続くだろうと思います。
     次に、第一次情報の発信手段の確保、あるいは情報の信頼性の保持という側面ですが、これは(国民には周知されていませんが)現時点でもネットの方が圧倒的に優勢だと言っていいのではないでしょうか。
     安倍総裁の最近の動きは、本来の情報発信者である政治家が公式情報を発信するメディア(媒体)としてネットを選択するようになったと考えることもできます。
     こうした動きは、自民党を中心に麻生政権時代からあったことで、当時は官公庁を巻き込んだもの(総理府・外務省がとくに積極的)でした。その後、谷垣前総裁時代の自民党HPで試行錯誤が繰り返され、今回の自民党の政策に対するマスコミのつまみ食い的ネガティブ報道に対しても、政策集のオリジナル全文が自民党のHPで誰でも読むことができる形で公表されていることが、一定の制約になっているのではないでしょうか。
     個人的にはtwi
    2015年08月10日 15:24
  • hradaaaan

    読んでて面白かったです。

    確かに信頼性はと問われると...う~んってなりますね!

    SNSなんかは結構低い数字なんですね!
    私が先日読んでいた記事は、企業として使用するソーシャル・ツールについてでしたよ!

    http://bit.ly/Z9YKJa

    こちらはまた違った視点で面白かったです。

    是非読んでみてください。

    おすすめですよ!
    2015年08月10日 15:24

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