
ついに解散が決まった。
野田首相は、8月14日に行われた、自民党の安倍総裁との党首討論で、「次期通常国会で、定数削減を必ずやると決断してもらえるなら、16日に解散してもいい。」と表明した。
今回の党首討論は、緊張感があり、中々良かったように思う。
党首討論での野田首相は、自分は"うそつき"ではないという主張から始まり、特例公債の可決、一票の格差の是正と議員定数削減への協力の確約をしてくれれば、「近いうち」の内容を具体的に提示すると切り出した。だから、野田首相は、元から、この党首討論で、16日解散を表明する積りであったものと思われる。
そして、返す刀で、安倍総裁に格差是正、定数削減を確約してほしいと迫り、確約するのであれば、16日に解散すると表明した。
対する、安倍総裁はソフトな語り口ながら、0増5減はすぐ可決できる。ただし定数削減は、この場で我々だけで決めていい筈がない、しかし、定数削減そのものについては、自民党は、次の選挙公約としている。来年の通常国会でやっていく、約束する、と押し返した。
ただ、安倍総裁の表情をみると、ここで野田首相が具体的な解散日時まで明言するとは期待してはいなかったのか、少し虚を突かれたというか、意外な表情が僅かながらあったように見えた。
今回の党首討論での野田首相には、迫力があった。眉間からビームでも出ているが如くの意志を感じた。ここまで腹を固めているのであれば、輿石某とか、中山某とかがいくら年内解散反対を唱えたとて、全く問題にはならない。軽く吹き飛んでしまう。
事実、民主党は、その後の3役会議で、次の衆院選は、「12月4日公示―16日投開票」の日程で実施する方針を決めているし、対する安倍総裁も、党首討論後、定数削減について党内で検討し、全面的に協力するとの方針を固めている。
二大政党の党首が、党首討論で討論した内容について、即座に結論を出した。久方ぶりに党首の党首らしい行動を見た気がする。
ともあれ、国会内で、野田首相が解散時期を明言した。安倍総裁が特例公債可決に協力する方針に転換したときは、それなりに反対もあったと思われるけれど、結果として、解散まで追いつめたことには変わりない。
これも、谷垣前総裁が「近いうち解散」発言を引き出し、それを引き継いだ安倍総裁が「近いうち解散」をしない野田首相を「うそつき」とするコンボ技によるものであるけれど、少なくとも、これで、安倍総裁の党内評価は更に上がったものと思われる。
野田首相も野田首相で、解散をバックに定数削減の条件を付け、"したたかな意地"を見せたと見る。というのは、野田首相は、自分はうそつきではない、と前置きした上で、安倍総裁に定数削減を確約するよう問うたから。
これは、安倍総裁に対して、「あなたは定数是正を確約できるのか。あなたは嘘つきではないといえるのか、どうなのだ」と逆に詰め寄ったことを意味してる。
議員定数削減は、中小政党にとっては死活問題。中小政党の多くは小選挙区では殆ど勝てず、比例でなんとか滑り込む形になっているのが現状。そんな中小政党にとって、議員定数がどう減らされるかは党の存続に大きく響く。
民主党が出していた、定数削減案は比例を40、小選挙区を5減らして、一部の小選挙区には比例代表連用制を適用する案を出していたけれど、この小選挙区比例代表連用制は、中小政党に有利な制度と言われている。
だから、来年の通常国会で議員定数削減を審議しようとすると、この民主党案も遡上に上ることになると思われるし、中小政党からもそれなりの支持が得られる可能性がある。
仮に、次の衆院選で、自公が政権を奪取したとしても、参院では過半数を持っていないから、民主と立場を変えてのねじれ国会はやっぱり続くことになる。
次の総選挙後に民主がどれくらい議席を持っているかは分からないけれど、流石に、公明や国生以下の中小政党にまで転落するとは考えにくい。だから、総選挙後は、自民・民主で連立といわないまでも、民主の協力を得なければ進まないケースもあるだろうと思われる。
その意味では、定数削減の確約というのは、総選挙後も民主党が政権に食い込む、或いは繋がりを持っておくための保険的な意味合いもあるのではないかと思う。
そういう仕込みを含めて、野田首相が安倍総裁に定数削減の確約を迫ったとしたら、転んでもタダではおきない"したたかなドジョウ"の意地をみせた「最後の党首討論」だったといえるだろう。
この記事へのコメント
白なまず
クマのプータロー
ちび・むぎ・みみ・はな
はどうやら「何時もクライマックス」らしい.
流石, 引退の危機から復活した安倍晋三だ.
何時も真剣な政治は国民を向上させる一番の薬だ.
嘘付政権の下で我々がどれほど坂を下り落ち
てしまったのか, 安倍晋三を見て気がつく.
そんな政治家は希少だ.
だが再生への戦いは始まったばかり.
sdi
谷垣前総裁との約束も結果として曲りなり守った形になるわけですから、野田首相としても「私は嘘吐きではない」と言い返しボールを安倍総裁側に投げ返したということですね。
ただ「年内解散なんて冗談じゃない」派が民主党内にも結構いるわけで、「定数是正法案」と「特例公債」が彼らの造反によって否決されたら事態が急転する可能性も皆無ではありませんがね。