解散までのカウントダウン

 
11月13日、民主、自民、公明の3党は政調会長会談を開き、特例公債法案を修正し、平成24年度予算の減額補正と27年度まで赤字国債発行を認めることで正式合意した。

画像


これによって、特例公債法案は15日に衆院を通過。参院も早くて19日にも成立する見通しとなった。

また、社会保障制度改革国民会議についても、早期設置に向けて3党の実務者協議に入ることを確認し、一票の格差是正のための衆院選挙制度改革法案についても、民主党執行部は「0増5減」の先行処理も検討している。

自公と野田政権が共に歩み寄る形で、解散への環境が整いつつある。

ここ数日、マスコミ報道で、年内解散の文字が躍るようになったけれど、これは、野田首相が年内解散を周囲に伝えていたことがその発端のようだ。

今のところ、11月22日解散、12月16日投開票と都知事選挙とのダブル選とする案が軸になると囁かれているけれど、無論そうと決まったわけじゃない。

先日、野田首相は輿石幹事長を会談しているけれど、どうも、そこで年内衆院選の意向を伝達したようだ。輿石氏は選挙情勢及び、「野田降ろし」や「大量離党」に発展しかねない党内事情を説明して、慎重な対応が必要との考えを伝えたとみられている。

尤も、その輿石氏は、12日の記者会見で、「誰が反対しようと何を言おうと解散権は首相にしかない」と述べているから、或いは、年内解散で押し切られることも、頭の中にあるかもしれない。

野田首相の年内解散の意向を伝えられた民主党は、さっそく揉め始めた。

13日に開かれた民主党常任幹事会では、「任期満了までしっかりやるべきだ」とか、「TPPを争点にするやり方はいかがなものか」など首相批判一色。9人が解散反対を表明した時点で、中野寛成常任幹事会議長が「解散すべきでないが常幹の総意だ」とし、輿石氏が野田首相に報告している。

民主党の常任幹事は11月13日現在で41人いる。そのうち何人が今回の幹事会に出席したかは分からないけれど、9人が反対した時点で「常幹の総意だ」なんていうからには、さぞかし反対の雰囲気で一杯だったのだろう。

それどころか、常任幹事会では首相退陣論まで飛び出したようだ。中山義活議員は、「今解散するのは自民党が一番望んでいること。自民党が一番嫌がるのは代表が代わって選挙をすることだ」と首相退陣を要求したと伝えられている。

更に、鹿野前農水相のグループは年内解散反対の会合を開き、20人を集めた。鹿野氏は「震災からの復興に加え、地域経済が疲弊している状況に早く手を打つことが政治に課せられた大きな使命だ。今は解散で政治空白を作るべきではない」とし、年内解散を避けるよう輿石氏に申し入れをしている。

だけど、党の代表選で、野田氏を大差で代表に選んだのは、その民主党の議員達。それもわずか2、3ヶ月前のこと。早期解散回避の申し入れを受け入れられなければ、離党するのが筋だろう。



つい最近まで「燃え尽き症候群」ではないか、と囁かれていた野田首相も、とうとう解散で腹を固めたとの観測もある。官邸周辺は、「腹を決めたのだろう。次期衆院選で民主党は惨敗必至で、多くの同僚議員や秘書らを路頭に迷わせることになりかねない。しかし、先延ばしすれば議席はさらに減る。オバマ米大統領が再選されたタイミングで『TPP交渉参加』に打って出て、TPPに慎重な自民党を揺さぶり、第3極を分断して、戦う覚悟では」との声があるようだ。

こうなると、年内解散回避をするためには、それこそ「野田おろし」をするしかなくなるのだけれど、そんなことが出来るのか。
先般、代表選で野田首相を代表に選んだばかりの民主党は、もう一度代表選をやる訳にはいかないから、やれることといえば、精々、解散反対の声を伝えて、野田首相の翻意を促すくらいしかない。

だけど、その野田首相自身が、解散を先へと伸ばしに伸ばして延命をしようとしていた。少なくとも先月までは、まだ民主党政権の延命を本気で考えていた節がある。

評論家の田原総一郎氏は、ある外務省幹部から聞かされた話として、次のように述べている。
最近、ある外務省幹部が呆れ顔で私にこう言った。

 「野田首相から、『あまりに民主党政権の評判が悪い。今ナショナリズムが高まっているから、集団的自衛権についてやろうかと思うが、どう思うか』と相談され、え?と驚いた。私は、『それは今までやってきたことと全く違うので、次の政権に譲ったほうがいいんじゃないですか』と野田首相に答えた」

田原総一朗の政財界「ここだけの話」 10月26日 より引用
田原総一郎氏は、この話から、野田首相は政策に一貫性がなくなっているとし、その役目は終わったと述べているのだけれど、そこまでして、政権延命を模索していた野田首相が、解散で腹をくくったというのが本当であれば、ちょっとやそっとの年内解散反対の嘆願くらいでは、動かないような気がしないでもない。

もし、それが揺らぐのであれば、「もう何もかも嫌になった」とそれこそ政権を投げ出す形での辞任ということになるのではないかと思う。

筆者は、昨年、野田首相が誕生した際に、野田首相を表す一字は「定」になるのではないかとエントリーしたことがある。野田政権の1年半を振り返ってみると、増税法案成立などに見られるように、与野党内外からやいのやいの言われながらも、なんだかんだで、大きな方針は定めたといっていいだろう。

果たして、野田首相は、年内解散を"定める"ことができるのか。




画像

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    増税法案と言うが, 正確に言えば

    「条件が揃わなければ増税しなくとも良い法案」

    嘘付増税首相は「何か」を決めたのだろうか?

    解散しないことを約束して党首になった男だ,
    本当に解散すると「信じ」たら負けだろう.
    信用せずにとことん追い詰めるのが正しかろう.
    2015年08月10日 15:24
  • sdi

    と、コメントしたらNHKがこんな報道を。
    「衆院選 来月4日公示・16日投票へ
    野田政権は、14日夜、政府・民主三役会議を開き、自民党が野田総理大臣が提案した定数削減などに協力する方針を決めたことを受けて、衆議院選挙を来月4日公示、16日投票とすることを決めました。」
    決まりましたかね。これは。
    2015年08月10日 15:24
  • クマのプータロー

    民主党になってから、すでに増税感を味わっている人たちもいますが、来年から復興増税が20年続きます。ここを忘れている人が大変多いのが気がかりです。
    2015年08月10日 15:24

この記事へのトラックバック