安倍総裁のネット優位化作戦

 
民主党の中道路線について、自民党の安倍総裁が厳しく批判している。

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11月7日、安倍総裁は都内での講演で、民主党の「中道路線」について「自分の信念も哲学も政策もない人たちを中道の政治家という。堕落した精神、ひたすら大衆に迎合しようとする醜い姿がそこにある。つまり自分たちの考え方がない」と述べた。

民主党の中道路線とは何なのかについての筆者の考えは、11/8のエントリー「政党における戦略の階層とは何か」で触れたから、改めて触れないけれど、少なくとも、今の民主党がその「中道」が意味する世界観を提示できていないのは確か。

この安倍総裁の発言に対して、民主党の仙谷氏が噛みついた。11月8日、仙石氏は、安倍総裁に対して、「中道路線」について公開討論を求める申し入れ書を郵送したと明らかにした。

安倍総裁はいちいち相手にする余裕はない、とあしらった上で、自身のフェイスブックに書き込んでくれれば返信するとした。安倍総裁は、それを評価するのは国民の皆さんだ、としているけれど、安倍総裁のフェイスブックが一般公開されている限り、ここでコメントによる討論だって十分「公開討論」にはなる。

仙石氏は、公開討論を申し入れたことについて、「哲学や信念があるのかないのかは、安倍さんが断定する話ではなく、国民だ。…我々が98年から掲げている『民主中道』という旗について、何か深いお考えがあるのだろう。安倍さんが言い出した話だ。ぜひお逃げにならないでお願いしたい。」と述べているから、本当にそう思うのであれば、安倍総裁のフェイスブックに書き込めばいい。きっと、親切な国民が全力で仙石氏の持論を"判断"してくれるだろう。



最近の安倍総裁のネットの使い方は上手い。

先日も、フェイスブックで、自民党の総裁選直前にTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』に出演したことを取り上げ、その番組上で「安倍元首相に期待するか」という街頭インタビューの内容紹介で、「安倍晋三には期待しない」の声が8割だったことについて、ネットから異論の声が上がっていることに触れ、「『番組作りには本当の国民の声が反映されるべき!』との大きなうねりが起きつつあります。その意味では皆様に積極的に番組に意見を伝えることも、草の根の声を活かしていくことに繋がるのではないでしょうか。TBSもそのために視聴者センターを設けています。」と、視聴者センターの電話番号まで載せている。

まぁ、これで視聴者センターに電凸する人がどれだけいるかは分からないけれど、少なからず電凸した人はいたのではないかと思われる。

筆者は10月6日のエントリー「デタラメ記事と安倍FBの反撃」で、安倍総裁は、ネット上のライブチャンネルでこそ、普段マスコミに話さないようなコメントをすることで、情報格差をつけて、ネットの優位性を確立すべきだ。そうすることで、マスコミはネットの後追いをするようになる。と述べたことがある。

ここ最近の安倍総裁のフェイスブックでの発言は、まさにこの情報格差戦術を取っていて、ネット優位をつくりつつあるのではないかと見る。事実、仙石氏が求めた公開討論に対して、安倍総裁はフェイスブックに書き込んでくれと"記者団"に対してコメントしている。

このように、安倍総裁は、仙谷氏を相手にしていないけれど、マスコミも半ば相手にしていない。今回の騒動については、マスコミも「公開討論はフェイスブック(FB)上で」という見出しでネットを後追いしている。

安倍総裁がここまでネットに対する感度がよいのであれば、更にネットを有効活用する策が考えられる。それは、地方遊説先などでネットブロガーに同行取材させること。

これは、以前、麻生政権時に、「真田忍者とアルファブロガー」及び「同行ブロガーの計」のエントリーで述べたことがあるのだけれど、予め、各地方県連レベルで、何人かのブロガーと面接の上、選抜・契約を結んでおいて、大物議員が地方遊説する際に、同行取材させて貰う。移動中の車内でのインタビューでもいいし、街頭演説の様子や裏側のレポートでもいい。

そうした、より深い情報をネットから先に配信することで、マスコミはどんどん置いてきぼりになる。マスコミが記事にすること以上の情報をネット経由で広く国民が知っている状態に持っていくことで、マスコミの情報操作は無力化してゆく。

安倍総裁のフェイスブックには注目して損はないと思う。




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この記事へのコメント

  • sdi

    >安倍総裁のフェイスブックには注目して損はないと思う。
    フェイスブックのIDを持っている人しか注目できない、というのが最大の欠点ですね。そしてそれは、フェイスブックを使わない有権者にとって何の意味もない論争になりかねません。
    私はネットの影響力は限定的だと思っています。特に選挙に関しては。
    過去の国政選挙において、システム的にほぼ組織投票が不可能なニコニコ動画アンケートの結果と、有権者全体の動向の差がどれほど大きかったは論ずるまでもないでしょう。
    電力で例えると、ネットの影響力は原子力及び火力以外のいわゆるクリーンエネルギー発電(おまけで水力含む)合計程度ではないでしょうか?
    2015年08月10日 15:24
  • ス内パー

    ツイッターですか。あれはバカッターとか揶揄されるように
    失言を生みやすい装置なので正確な言葉が必要とされる政治とは相性が悪いですね。
    やるなら講演の全文書き下しとか推敲済みの法案書き下しとか
    そういうのに限定して政治家の生声推敲なしの投稿は避けるべきでしょうね。

    赤い人こと三橋さんとこみたく業務連絡オンリーだとそれはそれで面白みないのですが失言を捏造りあげられるリスクを考えると黒い人こと渡辺さんとこみたくぺらぺらしゃべるのは難しいというか政治家の場合は無茶でしょうね。
    2015年08月10日 15:24
  • 日比野

    sdiさん、どもです。

    選挙に関してネットの影響が限定的であるのは、私も数年前、検証したことがあるのですけれどもそのときは最大6%程、昨年再検証しましたが、最大7%と殆ど変ってないですね。

    ネットの影響が限定的であるのは、ネット上で政治系の話題を見る人がその程度しかいないというのが原因です。

    ですから、今回の記事でも述べているように、直接FBを見るというよりは、既存マスコミに「後追い」させるというのがポイントだと思っています。

    ただ、ブレイクスルーできる可能性があるとすれば、サイトやブログではなく、ツイッターになると思っていますけれども、もう少し様子を見たいところですね。
    2015年08月10日 15:24
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    安倍総裁にはしっかりとした広報アドバイザーが
    ついているのだと思う.

    どんな場合でも曖昧なことは決して言わない.

    これは谷垣氏が見逃していた広報の最重要点.
    我々が聞きたいのは自民党の意向ではなく,
    総裁の考えなのであるから.

    究極的には自民党と言う組織を既存のメディアと
    ネットに加えた第三のメディアとできれば良い.
    可能であるが, 一番時間のかかるところでもある.
    2015年08月10日 15:24

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