進次郎議員の演説テクニック

 
「こげんずんばいきぃくいあって、ありがとごわす。…『つけあげ(さつまあげ)』は美味しいんだけど、つけあがっている民主党はまずいんです。これを何とか正してかなきゃいけない。でも、民主党は、決して、悪く言われることだけじゃありません。よくね、民主党というのは『ブレる、ブレる』と言われます。しかしそんなことはありません。ちゃんと、彼らは彼らなりに、ブレない筋を持っています。それは、『最後まで解散したくない』。この筋は、今回も、安倍総裁、公明党の山口代表、そして、野田総理の、3人による、会談でも変わりませんでした。」
小泉進次郎 10/21 鹿児島県南薩摩市応援演説にて


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小泉進次郎議員の人気が物凄い。先月行われた、鹿児島3区の補選の応援演説に進次郎議員が駆け付けたのだけれど、演説場所である、南薩摩市の加世田運動公園には、進次郎議員を一目見ようと3000人超の観衆が集まり、黄色い声援が飛んだ。
 
肝心の選挙に出馬している宮路和明候補はというと、進次郎議員に近づこうとする観衆に押しのけられていたというから、どちらが主役なのか分からない。進次郎議員は、完全に候補者を喰ってしまっていた。
 
結局、進次郎議員の街頭演説には鹿児島県内の4ヵ所(薩摩川内市、いちき串木野市、日置市、南さつま市)で計1万人近くが詰めかけたという。これは、維新の会の橋下代表が10月20日に鹿児島、熊本、福岡の3都市で行った街頭演説に集まった計約5000人の聴衆を大きく上回る。
 
現在、進次郎議員は、落選中の前職のほぼ全員、180人近くから応援要請が来ているそうで、自民党で"最も忙しい議員"だと言われている。
 
党内では、進次郎議員を党の要職に立てて、前面に出して貰えないかという要請が執行部にも入っていて、安倍総裁も「青年局長と報道局次長だけで置いておくのはもったいない。幹事長代行か代理の補佐、国際局と組織運動本部や選対本部も任せられないか」と、石破幹事長に持ちかけているとの噂もある。
 
なぜそれほど聴衆から人気があるのか。もちろん、若くてイケメンで颯爽としているというルックスもさることながら、その演説の上手さは親譲りかそれ以上ともいわれ高く評価されていることも一役買っているだろうと思われる。



日本大学芸術学部教授で「パフォーマンス学」を専門とする佐藤綾子氏は、新次郎議員は、その若さで既に、ほとんど完成された演説のスタイルを持っている"演説の名手"なのだと指摘する。
 
佐藤綾子教授によれば、演説においては、聴衆を引き付けるいくつかのテクニックがあり、進次郎議員はそれらを既に身に着けているという。
 
たとえば、演説の始めに、御当地ネタを取り入れて、その土地の人々と自分との間に橋を架け、「なんと身近な人だろう」と思わせていく「ブリッジング効果」というテクニックがあるのだけれど、今回の鹿児島補選の応援演説でも、進次郎議員は、冒頭「こげんずんばいきぃくいあって、ありがとごわす。(こんなに沢山きてくださって、ありがとうございます)」と薩摩弁で挨拶し、ブリッジング効果を使っている。
 
また、思いがけない例え話をぱっと言い、天と地のように落差をつけて、まったくその逆を突いて「演説の意外性の効果」を狙う「コンシート話法」というテクニックがあるのだけれど、これも、進次郎議員は使っている。
 
進次郎議員は、政治家になる前のエピソードとして、祖父の純也氏の地元であるこの地を訪れたとき、地元のおばあさんに「あなた、小泉さんか? よくみりゃ純也さんに似てるな」と切り出し、鹿児島との関わりと、その血統に触れ、自身を少し持ち上げた。そのあと、そのおばあさんに「純也さんのほうがよかにせ(美男子)だな。」と言われたと自分を落としてギャップを作って笑いを誘っている。
 
あと、細かいところでは、聴衆の反応をよく見ていて、「法事の帰りですか?それでも来てくれて有難うございます。」とか、「高校生?加世田にも高校生だけ投票権があればいいのにね。」とか、「さっきから、何度手を叩いてくれているか分からないお母さん」とか語りかけ、親近感を高めたりしている。
 
更には、拍手に重ねて言葉を入れず、終わるのを待って話始める、"間"の使い方、似た意味の単語を次々と並べて、余分な接続詞を全て省いてしまう"連辞"のテクニック。決め言葉(ワンフレーズ)で心を掴む「サウンドバイト」のテクニックなど、様々なパフォーマンスのテクニックを駆使しているのだそうだ。
 
特に、決め言葉については、進次郎議員自身意識しているそうで、佐藤綾子教授との談話の際、「街頭で歩いている人、急いでいる人に聞いてもらうにはとにかくワンフレーズで最初の一分間が勝負ですね。記者会見だって同じでしょう。みんな忙しいなかで聞いていますから。それで聞いた人みんなをファンにする積りで、良く聞こえるようにやっています。」と述べている。
 
もちろん、テクニックだけで中身がなければどうしようもない事は言うまでもないけれど、それ以前に聞いてさえもしてくれなければ、どんなに中身があったとしても意味はない。
 
それに、中身がないと、最初はよくても、何度も聞くうちにその内容の無さが誰の目にも明らかになって、見向きもされなくなる。進次郎議員は、この3年、全国を飛び回り、その人気は衰えることを知らない。今回の応援演説でその人気は実証された。
 
来たる次の衆院選では、進次郎議員は自分の選挙区そっちのけで、他の候補の応援に回ることになるのではないかと思う。



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