解散に向けて歩み寄る自民と民主
自民党、民主党、双方共に、解散の条件としている法案可決に向けて歩み寄りを見せ始めている。
11月3日、自民党の石破幹事長は、神戸市で記者団に対して、特例公債法案の可決について「時期や方法にはいろいろな知恵がある。セットにすべきか、まず法案をやるかは今後の話し合いだ」と法案に協力する前提としている、平成24年度予算の減額補正に関し、同時処理にはこだわらず公債法成立の先行を容認する考えを示した。
一方、民主党も、11月2日、小選挙区の一票の格差是正について、野田首相が「定数削減に絡め、いい知恵があるか最後のトライをしないといけない。…そのうえでまとまるかを見極める。この国会中に結論を出さねばならず、どういう選択があるか、政治判断をどこかで求められる」とし、「0増5減」を定数削減より先行させることも容認する方向で調整に入った。
これは、民主党がかねてから主張していた、0増5減と比例定数の40削減とのセット論を引っ込めることになるから、民主党が譲歩した形になる。民主党の安住幹事長代行は「憲法違反状態を放置して与党の責任が果たせるか」と述べ、再来週の審議入りを目指す考えを示している。
今ではすっかり、国民の多くから、民主党は総選挙を出来るだけ先延ばしにしようとしていると思われているのだけれど、一応、曲がりなりにも、総選挙の準備は進めている。
候補者については、現在、候補者が擁立できていない約70の小選挙区について、11日までに候補者を申請するよう、各県連に指示が出ていて、11月2日に衆院選と参院選の合同選対本部役員会を開いている。
また、次期衆院選のマニフェストについても今月中の策定を目指し、10日から18日まで、全国11か所で国民の意見を聞く集会を開くという。
ただ、11月3日に、岡田副首相が、民主党の候補者が決まっていない空白区について、「機械的に全部立てるより、いい候補者を探して立てるのが基本方針だ」とし、必ずしも全選挙区で候補者を擁立する必要はないと述べているから、空白区の候補者擁立はもう無理だという見通しでいるのかもしれない。
世間では、「近いうち解散」は近くはないだろうと思われている中、自民・民主とも、解散の環境整備に向けて形づくりをしているように見えなくもない。
先日、前原国家戦略担当相が「近いうち解散」は年内だ、と発言して、物議を醸したけれど、今度は、玄葉外相が「近いうち解散」を口にした。
11月3日、玄葉外相は自身の選挙区である福島県田村市に入り、その会合で、「首相は約束を守る人なので、近いうちに解散はあると思う」 と発言した。ただし、具体的な時期には触れなかったという。とはいえ、選挙区では、玄葉大臣のポスターを新しいものに変えているから、解散が近いのではないか、と見る向きもある。
そして、野田首相周辺からは、特例公債法案などの成立を前提に、野田首相が年内の衆院解散の可能性を探っているという情報まで出てきている。
どうやら、解散を先延ばしすれば、野党から「『近いうち』に解散する約束を守らなかった首相」などと批判され、選挙に悪影響を及ぼすことを懸念しているのではないかと見られている。首相周辺は「首相は『嘘つき』のレッテルを貼られることを一番嫌っている」と語っているようだ。
ただ、まぁ、ここまでやらかしてしまえば、年内に解散しようと、「嘘つき」の汚名は晴らせないとは思うけれで、それでも年内解散することがあれば、多少は「嘘つき」度は薄れてくれる期待はなくはない。先の3党首会談は決裂したけれど、そのあと、谷垣氏との党首会談で「予算編成まではやらない」という密約を暴露された。これによって、年内解散を約束していたことが、国民に広く知られるようになった結果として、野田首相=「嘘つき」というレッテルが貼られそうになっているように見える。
だから、もしも、本当に野田首相が嘘つきのレッテルを嫌って年内解散をするのであれば、「野田首相は嘘つきだ」イメージ作戦は正しかったことになる。
さて、民主党は、次期衆院選のマニフェストで、自民を右翼、民主党を中道と位置付けるイメージ戦略で戦おうとしている。だから、自民はそれに対抗して、民主は嘘つきの信じられない政党、自民は誠意ある政党という対立軸を持ち出せないことはない。だけど、仮に、この対立軸を出しても、世間受けは今一つだろうと思う。一時期よりは支持が集まってきたとはいえ、世間はその政治手腕は認めこそすれ、まだまだ、自民党を誠意ある政党とは思っていない。誠意があると思われていれば、鹿児島3区の補選であれほど無党派層の票を逃すことはなかった筈。
だから、民主との対立軸をどう出していくかが大切になるし、民主の「自民=右翼」イメージ作戦への対応を考えておく必要がある。
一口に右翼だ、左翼だといっても、具体的に、何を持って右翼なのか、何が中道になるのかについて明示しておかなければ、それはタダのイメージ。それこそ先の総選挙で、政権交代すればよくなるといった、イメージで票が流れていったことと殆ど変らない。
おそらく、民主党は「中道」という名の"現状維持"路線を打ち出してくるだろうと思われる。急激な変化を嫌い、安定と安心を望む国民の深層心理の部分をついてくると見る。だけど、ただ、"現状維持"だと唱えているだけで現状維持できるほど世界は甘くない。それは平和憲法を尊守していれば、平和になるのだと思い込んでいることと何も変わらない。
現状維持したいという望みは結構だけれど、そのためには何をしなければいけないのか。何もしないでいれば、今の国難を乗り越えることができるのか。そういった部分を突き詰めておかなくちゃいけない。
民主党はマニフェストで掲げる、中道の冠をつけた"現状維持"政策が如何なるものかは分からないけれど、自民はその辺りを徹底的に突いていく必要があるだろう。
この記事へのコメント
クマのプータロー
成田長親は領主ではなかったので、泥鰌の城から「のぼう」が出てくるには総理・副総理以外からという感じだと思うのですが、見回してみても「のぼう」になりそうな人は見あたりません。まあ、突然「のぼう」が出てくることはありませんが、長身で爽やかな「のぼう」を出そうとする企みなら現状でも見えてますね。
ちび・むぎ・みみ・はな
安倍総裁は徐々に田母神氏等の保守に歩み寄りを
見せているようだ. 麻生氏と田母神氏の公的な和解
が成立すれば大きな前進となる. 逆に, 完全な
和解ができなければ, 「自民=右翼」の罠にはまる.
安倍総裁のリーダシップが必要とされる.
他方, 嘘付党は?
> 次期衆院選のマニフェストについても今月中の
> 策定を目指し、10日から18日まで、
> 全国11か所で国民の意見を聞く集会を開くという。
もうね。。。。