壊れた未来と小沢を封じる方法
衆院選後、ひと月も経っていないのに、早くも政界再編の動きが出始めた。
衆院選で下地幹郎氏が落選して衆院議員が1人、参院議員3人の計4人となった国民新党は「党を存続しても、来年夏の参院選を戦えない」として、解党を検討していることが明らかになった。来月1月上旬に両院議員総会を開き、解党を正式決定する見込み。解党後にどの政党に移るかは各議員の判断に委ねるという。
また、大きなところでは、日本未来の党が分党した。12月27日、日本未来の党は、党名を「生活の党」と改め、代表を嘉田滋賀県知事から森裕子参院議員に変更。嘉田氏は、社民党から参加した阿部知子衆院議員を党員として、新たな政治団体「日本未来の党」を設立する。環境学者の飯田哲也氏が参加するようだ。
さて、結党したばかりなのに、早速分裂することになった日本未来の党なのだけれど、12月24日、結党後初の両院議員総会を開いているのだけれど、そこで議題となった人事案が大揉めの原因となった。
嘉田代表は、阿部知子前社民党政審会長を共同代表とし、衆院選で落選した飯田哲也代表代行の続投と、幹事長に鈴木克昌氏を充て、小沢氏と亀井静香氏を顧問とする人事案を提案した。
ところが、この案を小沢氏に近い議員らが拒否。逆に小沢氏を共同代表とするよう提案がなされたのだけれど、嘉田氏は「小沢氏と党を立ち上げるときからの約束だ」と要職に起用しない方針を示し「自分の提案したことに従わないのは認めない」と反発した。
総会は2時間半にわたって行われたものの、結論は出ず、持越しとなっていた。
あれほどの大敗をしたのだから、その責任を取って、嘉田氏は代表を辞任するのが普通だと思うのだけれど、辞任どころか所属議員に対して、自分の提案したことに従わないのは認めない、とは恐れ入る。
この嘉田氏側と旧国生議員との対立に嫌気がさした、亀井静香氏は党を離党する意向を固め、27日に離党届を提出している。亀井氏は、どうやらみどりの党に合流するようだ。
結党後初の両院総会で対立したかと思ったら、あっという間に分党。
嘉田氏は「ご支援いただいた皆さんにおわび申し上げたい」と陳謝し「未来の党の名前とフラッグは阿部氏の方が持つ」と述べているけれど、小沢氏との共同代表提案を受けた両院総会後「小沢共同代表を受け入れたら、私の政治生命が終わる。社会的な抵抗が大きすぎる」と記者団に語っている。
そう思っているのであれば、そもそも、小沢氏率いる国民の生活第一の合流自体が間違いだったのではないのか。たとえ、小沢氏の一兵卒の約束が本当だったとしても、それだけで全て押し通せると考えるのは少々甘い。なぜなら、党には嘉田氏と小沢氏だけしかいないわけじゃないから。その他の議員の意向だって存在してる。
衆院選で大幅に議席を失う大敗をした以上、嘉田代表がその責任を問われるのは当然。その際に、旧国生の議員らが元の親分である小沢氏を代表に推すのもこれまた当然のこと。仮に、未来の党の結党時に小沢氏が共同代表か何かに収まっていたのであれば、今回の敗戦の責任を問われ、代表を辞任することになっていたと思う。
ところが小沢氏は、今回の結果を見通していたのかは分からないけれど、うまい具合に自らに責の及ばない"一兵卒"に逃げ込んでいた。
ただ、小沢氏が心底"一兵卒"でよいと思っていたのであれば、今回の騒動で、旧国生系議員が小沢共同代表提案をして揉めたときに、彼らを説き伏せて、事を収めてやるのが筋。嘉田氏に恩も売れた筈。
嘉田氏が「小沢さんは『一兵卒』という約束をして動き出した。で、小沢さんにコンタクトを取ろうとしたが、なしのつぶてだ」と語っているように、小沢氏に事を収めて欲しいと思っていたフシがある。ところが小沢氏は"なしのつぶて"になって、子飼いの議員達に騒がせるに任せた。そして党分裂に追いやった。
だけど、こうしたクーデター紛いのやり方は覇道であって、王道じゃない。離党届を出した、亀井静香氏は、小沢氏と会談し、小沢氏系議員らの行動を批判した上で、小沢氏に対して「早く別れた方がよい」と促していたようだ。
評論家の屋山太郎氏は「小沢氏と手を組んだ政党や議員は滅びる」と述べているけれど、ここでもその力を発揮した。
筆者は、新総理が就任する折に、新総理の行動原理を表す一字をエントリーしているけれど、最早、首相になる目も潰えたであろう小沢氏について、あえてその一字を挙げるとするならば、それは「動」になるのではないかと思う。
自分が動き、また周囲や相手も動かすことで局面を打開する。そういう行動をする。今回は、自分は後ろに控えて動かなかったように見せていたけれど、その代わりに周囲に配置した"石"を動かすことで、嘉田代表という"石"を殺した。
まるで、碁打ちのように、手持ちの"石"を打っては、その石に仕事をさせる。その代り小沢氏自身は、その"石"を求めて「動いていく」。その意味では、嘉田氏自身も小沢氏にとっての"石"のひとつだったのかもしれない。
未来の党を乗っ取る形となった小沢氏は、次の乗っ取り先を求めて、民主党にくっつこうとしているのではないかという噂まである。
ただ、こう立て続けに、あっちこっちと離散集合する姿を見せられては、それを見せられる国民のほうだって辟易する。そろそろ政界における小沢氏の存在もその弊害の部分が大きくなってきた印象を受ける。
今後、小沢氏がどう動くのか分からないけれど、もしも小沢氏を封じる方法があるとすれば、それはおそらく、小沢氏が「動けない」状態に追い込む方法になると思う。
先程、小沢氏の行動原理は「動」であり、自分も相手も動かすことで局面を打開するといったけれど、このやり方が効果を上げるためには、その動く主体となる「石」が必要で、それも多ければ多いほどいい。つまり、小沢氏子飼いの議員や小沢氏と共に合流する議員が数多くいなくちゃいけない。
小沢氏が民主党を離党した後、結党した、国民の生活が第一は37議席あり、未来の党を結党したときには51議席あった。それが総選挙後は衆参合わせて16議席になってしまった。
小沢氏はせっせと51の石を集めたのに、16石に減らし、今回の分党で15にまでしてしまった。周りは294の白石や、57の黒石、54の斑石などに囲まれてしまってる。
流石にこの状態で局面を一気に打開するのは厳しい。だから、小沢氏が手持ちの15の石を、黒だか、斑だかに塗りなおして、それらに合流しようとするのは分からなくはない。
だけど、逆にいえば、その小沢氏の16石が合流できなければ、局面は動かないともいえるわけで、他の野党が小沢氏の合流を拒絶すれば、それだけで小沢氏の影響の大半を封じることができる。
だから、小沢氏の打つ"石"に釣られて、自分も動いて小沢氏の術中に嵌るのではなくて、自らの立ち位置をしっかりと確認して「不敗の地」に立つことが大事。
「不敗の地」とは何かというと"民意"をしっかり掴むこと。
総選挙でも明らかになったように、"反原発"は支持されなかった。少なくとも"反原発"が第一の政策課題とは認められなかった。
今の民意は景気回復にある。だから、そこをがっちりと抑えて離さないことが大事。小沢氏が景気回復を掲げて接近してきても、同調しないこと。それが、小沢氏の動きを封じる一手になる。
この記事へのコメント
洗足池
参議院では4倍以上、衆議院では2倍近い票の重みの違いがある。票の重みが大きい地区ほど一人当たりの納税額も小さい。だから国にたかろうとする人間の思いが政策に反映されるのだ。地方の公共工事は形を変えた生活保護にすぎない。
sdi
小沢一郎氏は「自民党出身で竹下派七奉行の一人(ひょっとしたら筆頭格?)なのですが、自民党離党以後はとにかくマスコミから持ち上げられるようになった」というのが私の評価です。新進党時代や自自公時代も含めてです。特に日本最強のイエローペーパーとなった日刊ゲンダイ(厳密には新聞ではありませんが)のヨイショ振りの凄さは記憶されてる方はおられるでしょう。あと、私が印象に残っているのは永田メール事件の後、党首になった小沢氏をテレビ局が密着取材して「小沢党首の一日」という放送をニュース番組の中で流したりしました。そのとき、実に爽やかで溌剌とした小沢氏のイメージが露骨に演出されていたのを覚えています。
小沢一郎氏が祟り神呼ばわりされるほどの破壊力を発揮する原因の一つにマスコミの過大評価があるような気がしてならないんですね。というか、おそらく一部のマスコミと小沢氏は暗黙どころか明確な持ちつ持たれつ関係を構築していたのではないかとさえ思えてきます。というのは、今回
ちび・むぎ・みみ・はな
嘘付に殉じた「阿呆」としか言いようがない.
> 小沢氏について、あえてその一字を挙げるとするならば、
それは「滅」であろう.
ミダス王は触れるものを全て金に変えたと言うが,
嘘付利権王は触れるものを全て滅ぼす.
とうとう, 御自分の正統性さえ滅ぼす.
利権王は既に三年前から死んでいる.