12月26日、衆参両院にて首相指名投票が行われ、自民党の安倍総裁が第96代内閣総理大臣に指名された。
衆参両院での投票結果は次のとおり。
○衆議院首班指名と、参院では決選投票になったものの、両院とも無事に安倍氏を総理に指名した。
投票総数 478
過半数 240
被指名者(候補者)無記載 2 (無効)
指名者(投票者)無記載 1 (無効)
安倍晋三 328
海江田万里 57
石原慎太郎 54
渡辺喜美 18
志位和夫 8
森ゆうこ 7
福島みずほ 2
自見庄三郎 1
無効 3
よって衆院は安倍晋三を内閣総理大臣に指名
○参議院首班指名
投票総数 234
過半数 118
安倍晋三 107
海江田万里 87
渡辺喜美 11
森ゆうこ 8
志位和夫 6
福島みずほ 5
自見庄三郎 3
石原慎太郎 3
亀井静香 1
無効 3
よって参院は1位安倍と2位海江田とで決選投票
○参議院首班指名・決選投票
投票総数 234
安倍晋三 107
海江田万里 96
無効 1
白票 30
よって参院は安倍晋三を内閣総理大臣に指名
一度総理を退陣した後、再び総理として選出されるのは、戦後では吉田茂元総理以来、64年ぶり、2人目だそうだから、如何に、総理の再登板が稀有なことなのか分かろうというもの。
26日夕方、安倍総理は、総理大臣官邸に入り、連立を組む公明党の山口代表と党首会談を行った後、組閣本部を設置。夜には、皇居での総理大臣の親任式と閣僚の認証式を経て、第2次安倍内閣が正式に発足の運びとなった。
第2次安倍内閣の閣僚は次のとおり。
首相 安倍 晋三一見して明らかなとおり、重厚かつ強力な布陣。層の厚みは民主党とは比較にならない。特に注目したいのは、やはり経済対策を重視したと思われる組閣であること。
副総理兼財務大臣兼金融担当大臣兼デフレ脱却・円高対策担当大臣 麻生太郎
総務大臣兼地域活性化担当大臣 新藤義孝
法務大臣 谷垣禎一
外務大臣 岸田文雄
文部科学大臣兼教育再生担当大臣 下村博文
厚生労働大臣 田村憲久
農林水産大臣 林芳正
経済産業大臣兼原子力経済被害担当大臣兼産業競争力担当大臣 茂木敏充
国土交通大臣 太田昭宏
環境大臣兼原子力防災担当大臣 石原伸晃
防衛大臣 小野寺五典
官房長官兼国家安全保障強化担当大臣 菅義偉
復興大臣兼福島原発事故再生総括担当大臣 根本匠
国家公安委員長兼拉致問題担当大臣兼国土強靱化担当大臣兼防災担当大臣 古屋圭司
沖縄・北方担当大臣兼海洋政策・領土問題担当大臣兼IT政策担当大臣 山本一太
少子化担当大臣兼女性活力・子育て支援担当大臣兼消費者担当大臣 森まさこ
経済再生担当大臣兼社会保障と税の一体改革担当大臣兼経済財政担当大臣 甘利明
行政改革担当大臣兼公務員制度改革担当大臣兼規制改革担当大臣 稲田朋美
まず、麻生氏を副総理兼財務相兼金融相としている。財務相と金融相を兼ねるのは、昔でいうと大蔵大臣に相当し、財政と金融を一体で対応するという意思表示でもある。
直近では、麻生政権時に故・中川昭一氏が、財務相と金融相を兼務したことがあった。当時もリーマンショックへの対応で強力な経済対策が求められていた。今回はこの役目を麻生副総理が担うことになる。
安倍総理と麻生副総理は、その信条・政策を共有していることから、「AA (ダブルエー)」と呼ばれることがあるけれど、かつては、これに、故中川昭一氏を加えて「ANA」と呼ばれてもいた。
また、故中川昭一氏と麻生氏、菅義偉氏、甘利明氏を加えて「NASA(ナサ)」と呼ばれることもあった。今回の第2次安倍内閣では、「NASA」のうち3人が入閣。麻生氏が副総理兼財務相兼金融相、菅義偉氏が官房長官、甘利明氏が経済再生兼経済財政相と急所に配置している。だから、おそらく、中川昭一氏が存命であったなら、重要ポストで入閣していたものと思われる。
また、甘利氏の経済再生担当相と経済財政担当相の兼務にしても、経済再生への強力な意志が伺える。
安倍総理は、首班指名後の記者会見で「経済再生の司令塔として日本経済再生本部を創設致します。経済財政諮問会議も再起動致します。新たに経済再生担当大臣、デフレ脱却・円高対策担当大臣、産業競争力担当大臣を設けて、きめ細かな政策実施に向けた体制を整えました。内閣の総力をあげて大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この三本の矢で経済政策を力強く進めて結果を出して参ります。」と述べている。
経済財政諮問会議とは、経済財政政策に関する重要事項について、調査審議することを目的として、内閣府に設置される合議制機関のことで、2001年1月の中央省庁再編によって初めて設置された。
その構成員は、内閣総理大臣を議長とする、計11名以内の議員に限定し、内閣官房長官、経済財政政策担当大臣以外の議員は法定せず、民間有識者の人数を、議員数の4割以上確保することになっている。
経済財政諮問会議は、従来の大蔵省主計局を主とした予算編成過程を、官邸主導型に転換する働きをし、特に小泉内閣において、官邸主導の予算編成に力を発揮したのだけれど、2009年以降の民主党政権では、開催されなくなっていた。
安倍総理は、経済再生の司令塔として位置づけた日本経済再生本部の長と、復活させる経済財政諮問会議の構成員として定められている、経済財政政策担当大臣を、甘利氏に兼務させることで、再生本部と諮問会議の一体運用を図ろうとしているように見える。
従って、第2次安倍内閣は、小泉内閣を彷彿とさせるような、強力な官邸主導型の経済対策を打ち出してくると思う。
また、返り咲きを果たした安倍総理は、今回の組閣に当たって、前回の失敗の教訓を活かそうとしているフシがある。なぜなら、小泉元総理の政務秘書官を務めた飯島勲氏を今回の安倍内閣の官房参与に起用する方針でいるから。
飯島氏は特命担当として非常勤で広報や危機管理面でのアドバイスを受け持つようなのだけれど、彼の情報調査能力は桁違いだと言われている。
小泉政権時代、飯島氏は、議員の身辺調査として、自民党議員は、3年生以上全員、民主党も敵情調査ということで全議員を調査している。しかも、警察庁や内閣情報調査室などは使わず、独自のチャンネルで調べ、お金、女性関係のみならず、当選前後の発言までチェックしていたという。中でも、小沢一郎氏の資料は、1メートル以上の書類になったという。
こうした情報を元に、飯島氏は、この議員があの大臣に相応しいか等を入念に分析していった結果、小泉政権の閣僚不祥事はゼロだった。
前回、2006年の安倍内閣は、政治資金規正法絡みで松岡利勝農相が自殺したほか、後任の赤城徳彦氏も政治団体の事務所費問題で辞任するなど、1年間で5閣僚が相次いで交代するなど、大きなダメージを受けた過去がある。
だから、尚のこと、安倍総理は過去の失敗を繰り返すまいとして、飯島氏を起用しようとしているのではないか。
今回の組閣人事に当たって、事前に閣僚予想がマスコミ各社で報道されていたけれど、ネット等では、これも飯島氏が、わざと情報をリークして、どの経路から、どの情報が漏れていったのかをチェックしたのではないかという説まである。
それくらい、今回の安倍内閣は情報管理を徹底しようとしている。その意味では、相当、足元を固めた内閣だといえるし、安倍総理も過去の失敗を教訓にして、一段と強力になった感がある。
一度挫折を経験したものは強い。日本を覆う危機の"天元"を突破する内閣であることを期待したい。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
安倍・麻生両氏とも外交をおもんばかって国民
への手当を軽視した過去があるやに思う.
大目的のために小さなことは我慢するのは
「個人」としては良いが, 国民の期待を我慢させる
のはやはり大変に危険なこと言わねばならない.
具体的には, 竹島, 尖閣, 靖國, 皇統, 防衛.
「良識派」の言説を聞く限り, これらは一時的に
棚上げせよとのことだが, 参議院選挙までの
国民対策には如何がなものだろうか.
それから, 田母神氏の名誉回復も残る問題だ.
国民は忘れていない.
これらを軽視するようなら, 「かつて辿った道」だ.
政治の最重要事項は「国民」だ.
mony
あんたも大変ねえ。
都民を代表して頑張ってくれw
洗足池
世界中不景気の中、円安、インフレだけでは経済の本格回復は望めない。企業業績が少し良くなっても賃金の上昇は殆ど望めず、インフレで実質賃金はむしろ低下する事も充分ありえる。
sdi
とにかく、景気を上向かせ(国民の景況感を向上させるというべきか)参議院選で「ねじれ国会」再現を阻止するとこ。これが出来なれば「また」同じことを繰り返すはめになります。そうなれば、どんな理想も志も無に帰してしまいます。というより日本の保守政治の危機ですよ。
今回の組閣のポイントは「敵は閣内、味方は党務」の前半部分はかなり考慮されていると思いますね。後半部分については石破幹事長の立ち位置によるのでしょうね。
内閣参与ですが、私も飯島氏を引っ張り込むとはおもってませんでした。有能な敵より無能な味方のほうが厄介なのは世の常ですから、そのあたりの配慮も前の安倍政権のときよりはしている布陣ですね。三つ子赤字神殿にはご自分の専門分野で専念して下されば十分です。