アクセル・ワールドにはまだ早い
昨日のエントリーと関連して、簡単に…
12月21日、自民党の石破幹事長が、BS朝日番組の収録で、日経平均株価が1万円を回復し、為替も84円台まで円安になったことについて、「どうやってこれを長く続けるか、そのためにはどうするかという話だ。…円は安ければ安いほどいいのか、というと日本の産業構造上、そうではなくて、85円から90円ぐらいにどうやって収めるかということを考えなければならない」と述べた。
昨日のエントリーでも述べたとおり、日本の各産業の採算ラインは大体83円くらいだから、確かに85円から90円というのは、そこそこ利益が取れる為替レートではあるのだけれど、普通はこんな具体的な値はいわないもの。何故態々、口にするのか。
そういえば、石破幹事長は、17日のフジテレビ番組でも、安倍総裁の金融緩和路線について、「金融緩和は必要」としながらも、「緩和しても(マネーが)ぐるぐる回っているだけではしょうがない。…どうやってそれが消費に向かい、設備投資に向かい、そのことを1つ1つ各論として詰めていかないと。ある意味日本の経済の、他国と違う構造を改善していかないといけない」と述べている。
何やら、安倍総裁の発言に対して、石破幹事長がそれを一部否定もしくは訂正する発言をすることで、安倍総裁がアクセル、石破幹事長がブレーキ、とそれぞれ役割分担をしながら発言しているように見えなくもないのだけれど、本当のところはどうなのかは分からない。
ただ、今回の石破幹事長発言によって、為替が反応するのか、或いは反応しないのかについては、興味がある。もしも、石破幹事長のこの発言で、円安の流れにブレーキがかかるようであれば、本当にブレーキ役を果たしたことになるのだけれど、逆に為替相場が混乱して乱高下するかもしれない。筆者的には少しリスキーな発言かもしれないと感じている。
もしも、安倍総裁と石破幹事長の間で、互いにアクセル役とブレーキ役をするという具合に暗黙の了解が成立しているとするならば、今後も為替以外でも同じように、互いに相反する発言をする可能性はある。
例えば、21日、安倍総裁は山口県庁での記者会見で「民主党政権が決めたことは決めたこととして、もう一度、全国でどう考えるか見直していきたい。…自前のエネルギーについて集中的に研究し、10年間で考えていくという大方針がある。その中で新設についてどう考えるかは、これから検討したい」と、民主党の野田政権が決めた「原発の新設・増設は行わない」との原則を見直す可能性について触れている。
これついても、もしかしたら、後日、石破幹事長が、前政権が決めたことは尊重しなければならないとかなんとかいって、ブレーキを踏むかもしれない。
因みに、山口県上関町には、建設計画中の原発がある。これは、上関町田ノ浦の山林を切り開いて14万平方メートルの海面を埋め立て、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)2基を建設しようとするもので、中国電力は、2010年から予定地内の埋め立て工事に着手している。
だけど、現地では推進と反対とで激しい対立があり、建設計画は小康状態に陥っている。今年の7月に山口知事選が行われ、無所属新人で元国土交通審議官の山本氏が当選しているのだけれど、山本知事は上関原発について「県民の安全安心を第一に考えて対処する」と述べ、凍結方針を示している。
だから、たとえ、安倍総裁個人が本音では原発を推進したいと思っていても、そう思わない人もいるわけで、その辺りの意見の吸い上げと調整をした上で進めなくてはならないことは理解できなくもない。
ただ、その調整にあまりにも時間をかけすぎると、またぞろ、どこかの政党のように"決められない政治"に陥る可能性もある。ねじれ国会である以上、それが改良されるまで、つまり、少なくとも来年夏の参院選で勝利するまでは、政策に優先順位をつけて、そこに注力しながらの慎重な政権運営が求められる。
もっと先へ――『加速』したくても、今は我慢するとき。アクセル・ワールドにはまだ早い。
この記事へのコメント
SAKAKI
日銀の緩和はGDP比なら90年代以降世界最大です。勘違いしている人が多い。そこに物価上昇率2%なんて、国債の値下がりリスクを抱え、銀行・証券には厳しい時代となります。日銀は限界近くまでやっていると思いますよ。
金の回転を速めることが重要で、たとえばカード金融の貸し出し利息を下げるとか、金持ちの税金を釣り上げて新技術開発や公共事業につぎ込むとか。世間が消費税増税以上に嫌がることをしなければなりませんね。安倍 麻生ラインは何をするのか楽しみです。エネルギー開発が一番いいように思えますね。
原発云々より、石炭ガス化複合発電(IGCC)なんて発電コストがかなり低いそうですよ。
前エントリーでソニーと東芝の関係を日本と韓国に置き換えておりましたが、サムスンははたして、インパクトのある製品を世に送り出すことができるのでしょうか??この場合の製品とは、今まであるものの焼き直しではなく、生活様式を塗り替えるような独創的製品ですね。
白なまず
ス内パー
アベノミクス=輪転機無限に廻す『だけ』
というミスリードをしているのか。ミスリードにのっかっているのか。
朝日新聞や池田信夫氏なんか典型的なミスリード馬鹿晒してますが
そんなに『政府が儲け話のタネを提供(防災を兼ねた公共工事により働くもの食うべし路線)』が嫌いなんですかね?
ベーシックインカムやウォール街式金融術、株主至上主義(スポンサー原理主義)会社経営とか新自由主義者の大好きな働かざるものだけ食うべし路線を誉めそやしてるんだから輪転機廻す『だけ』という働かざるものだけ食うべし路線な政策万歳三唱くらいしてもおかしくないのになぁといつも不思議に思うのですが。
opera
GDP比ではなく、リーマンショック後の諸外国と比較してみてください。日本の金融緩和が足りないとする論者の根拠の多くはそれです。
また、アベノミックスという言葉が先走りしていますが、安倍政権の政策は金融緩和と財政投資の二本立て(あるいは産業政策を含めた三本立て)です。
ちび・むぎ・みみ・はな
石破氏を入閣させなかった理由が分かる気がする.
日本を強化するためには, 強い内閣が肝要.
これらを考え合わせると, 安倍総裁が積極
財政を全面に出して選挙を戦った意味とその
今後の自民党内での調整における重要性が分かる
気がする.
財務、金融、外交、経済産業等は安倍総裁の
考えを理解している重朕で固めていくだろう.
今後の攻撃は自民党内部から始まるだろう.
洗足池
国に補償を求めるのは許せない。
国債の無制限の日銀買いオペでも金利が急騰しないと主張する人がいる。原発の過酷事故は日本では絶対起こらないと2011年3月10日まで業界、学会では主張されて来たことを思い起こすべきだ。歴史的にみれば10年債の利回りの平均値は約5%である。だから公的年金の運用利回りは5%で設定されているのです。現在の日本では2%の金利でさえ壊滅的打撃を起こすのですよ。私の友人に債券ディラーがいるが、彼の仲間は皆、来年は大変な年になると言ってるそうだ。