
投開票を明日に控え、各党最後の追い込みに入っている。
注目された第3極は、当初の"期待"に反して支持が伸びない。各紙の獲得議席予想では、維新の会は40~60議席程度。それどころか、未来の党に至っては、衆院現有議席61議席を大きく減らして10議席程度になるのではないかと言われている。
維新の会は、当初、全小選挙区に候補者を擁立するとしていたのだけれど、候補者が集まらず、最終的には172人と半減。獲得議席も10月の段階では、100議席以上取るのではないかと言われていたのに、今や50議席がどうこうというレベル。これでは、石原代表が目指す第2極になるのはちと厳しい。
維新の会が伸びない原因はいろいろ取沙汰されているけれど、筆者としては、太陽の党との合併と、選挙戦略の拙さが大きいのではないかと見る。
まず、石原氏率いる太陽の党との合併で、橋下維新が変容した。TPPや原発政策などで互いに対立する同士の合併で、政権公約がアヤフヤになってしまった。
そして、選挙戦略でもフラついた。維新の会は、始めは、橋下代表代行や維新所属の大阪府議が全国を回る拡大戦略をとっていた。地元の大阪には、左程力を入れていなかった。それが仇となった。
選挙戦序盤の各種世論調査結果が出ると、様相は一変した。全国どころか、大阪府内の14選挙区でも勝利が見込めるのが4、5選挙区。全体でも40議席前後。とても地方遊説どころではなくなった。
そこで、選挙戦終盤にきて、維新の会は選挙戦略を「全国展開」から「大阪重視」に転換。全国に飛んだ大阪府議らに地元候補の応援を強制し、地方中心だった橋下氏の遊説日程を大阪府内に戻した。
いい気になって他所で戦っているうちに、大阪の本丸が包囲されてしまっていた。
包囲の主力は勿論自民党。自民党は安倍・石破・進次郎の3枚看板を何度も大阪に送り込んで本丸への攻勢をかけている。まぁ、接戦の選挙区に大物を送り込んで、情勢を有利に運ぼうとするのは当たり前のことなのだけれど、それを大阪でやれるということは、それだけ取れそうな選挙区があると見ているのだろう。
これで、結果的に、維新の会が大阪の議席の多くを取りこぼしてしまったら、地元を疎かにしたことは、選挙戦略のミスだということになる。尤も、維新の会が終盤になって地元重視に転換していること自体が選挙戦略をミスしたと自白しているようなものではある。
だけど、この選挙戦略によって、地方で立候補している維新の候補者を見捨てることになった。選挙経験のない新人が多くを占める維新候補が、党からのサポートも受けられないとなれば、もう選挙にならない。
ただでさえ、維新の会からの出馬する候補は選挙費用を自己負担する上に、広報費用として100万円を党本部に上納することになっている。それらをクリアしないと立候補すらできない新人候補にとって、それを負担するだけの見返りがあるのかというと、それもない。たとえ、比例単独または重複立候補しても名簿上位には載せて貰えない。
維新の会の比例名簿は次のとおり。
【北海道=4人】(1)重複候補3人 (4)米長知得(新)一見して分かるとおり、名簿上位は現職議員ばかり。地方で出馬する新人候補は金だけ取られて、選挙はほったらかしにされることになった。
【東北=11人】(1)小熊慎司(新)=福島4区 (2)重複候補2人 (4)重複候補8人
【北関東=18人】(1)上野宏史(新)=群馬1区 (2)石関貴史(前)=同2区 (3)重複候補14人 (17)植竹哲也(新) (18)仲田大介(新)
【南関東=20人】(1)小沢鋭仁(前)=山梨1区 (2)松田学(新) (3)重複候補16人 (19)田中甲(元) (20)横田光弘(新)
【東京=22人】(1)石原慎太郎(元) (2)今村洋史(新) (3)山田宏(元)=東京19区 (4)重複候補18人 〔22〕上村昭徳(新)
【北信越=10人】(1)中田宏(元) (2)重複候補8人 (10)堀居哲郎(新)
【東海=14人】(1)藤井孝男(元) (2)今井雅人(前)=岐阜4区 (3)重複候補11人 (14)近藤浩(元)
【近畿=40人】(1)東国原英夫(新) (2)西村真悟(元) (3)重複候補8人 (11)三宅博(新) (12)重複候補28人 〔40〕喜多義典(新)
【中国=8人】(1)重複候補6人 (7)藤井昇(新) (8)谷本彰良(新)
【四国=7人】(1)重複候補4人 (2)重複候補2人 (7)大内淳司(新)
【九州=19人】(1)松野頼久(前)=熊本1区 (2)重複候補17人 (19)黒仁田典之(新)
こんなやり方は後に大きな禍根を残す。こんな割の合わない選挙戦を強いられるのであれば、維新から立候補しようだなんてと思う人はいなくなる。
だから、今回の衆院選でどれだけの議席を確保できるか分からないけれど、来年夏の参院選では候補者を集めるのには相当苦労するのではないかと思う。ただし、50人規模で議席を確保できれば、それなりの額の政党助成金が貰えるから、少しは資金面で助けになるかもしれない。だけど、選挙経験や組織というものは金だけではどうにもならない。
それに対して、自民党は選挙における組織力の強さを見せつけた。維新の会の本丸に斬り込んで、落城させんとの勢いで迫っている。維新の会は大阪城に籠城して、懸命に生き残りを図っている。
なぜ、自民が民主ではなくて、維新の会を潰しにかかっているのか。
その確たる理由は分からないけれど、筆者の独断と偏見を許していただければ、これは、次の参院選、或いは次の次の衆院選を睨んだ戦略ではないかと思う。
つまり、維新の会を大阪に封じ込めることで、次の選挙で、全国展開させないようする狙いがあるのではないかということ。
今回、維新の会が全国展開するつもりが、大阪本丸を攻められて苦戦することになった。となると次の選挙では、全国展開の前に地元を固めなくちゃいけなくなる。当然その分、地方には手が回らなくなって、多くの議席は取れなくなってしまう。
参院は定数146人の選挙区と、定数96人の全国比例代表から、半数改選によって選出される。大阪選挙区の定数は6。半数改選で、事実上の議席は3しかない。維新の会を大阪選挙区だけに封じ込めることができれば、あとは比例代表の改選議席48をどうするかの話になる。だから、次の参院選を考えると、維新の会を大阪だけに封じ込める意義は思ったより大きい。だから戦略レベルでみると、維新の会はもうほとんど敗北しているのではないかとさえ思えてくる。
維新の会がここまで防戦一方の展開になってしまったら、次の選挙は、自民と選挙協力をしたほうがいいと考えてしまう可能性が出てくる。
安倍自民にとって、今回の衆院選で政権奪還しても、次の参院選で過半数を取らないと、捻じれ国会での難しい運営を迫られる。だから、今回、維新の会を大阪に封じ込めて、中小政党レベルに抑え込むことができれば、逆に、将来連立するための布石にもなり得る。それほど今回の自民の選挙戦略はえげつない。
この記事へのコメント
sdi
自民党が維新潰しに全力を挙げた、という日比野殿の指摘はその通りでしょう。維新・太陽に「前回総選挙で民主党に投票したけれど、今回は民主党に入れたくない」有権者の票を持っていかれるのを警戒したというのはあるでしょう。
あと、総選挙で自民党が目出度く政権奪回を果たした後の国会運営、特に参議院です。参議院の議席数を考えると、少なくとも来年夏の改選までは民主党と妥協して国会を運営するしかありません。そのとき維新・太陽が衆議院で勢力を持ってると間違いなく離しがややこしくなるでしょう。他の第三極(55年体制では中道政党)政党はそんな大勢力になるとは思えませんので、維新を何とかすれば交渉相手を民主党一本に絞れます。
opera
ちなみに、私の隣県の某選挙区でも、公示直後は民主の中堅が優勢と言われていたのですが(自民党候補はタマはいいのですが若過ぎて知名度が低い)、逆転の目が出てきたらしく、進次郎・谷垣前総裁・細田総務会長等が続々と送り込まれています。まぁ、安倍・石波の二枚看板や麻生元総理ほどの華やかさは無いにしても、こうした選挙区は少なくないと思います。
今回の自民党は、総裁・幹事長を筆頭にした全国版のドブ板選挙のようなもので、谷垣時代に再生させた組織をフル活用していることと併せて、「風」に期待しない選挙戦の模範のようなものかもしれません。
一方維新は、政策は時代遅れの新自由主義路線ですし、全国的にはもはや賞味期限切れでしょう。確かに、太陽との合併は戦術的
ちび・むぎ・みみ・はな
それほど維新の会は将来の国政に害になる
可能性があると判断しているのだろう.
橋下氏のやり方は本当に危なく, 汚い.
同氏の危うさは既に良く知られているが,
市長と府知事が国政選挙に入れ上げている
と言うのはどういうことなのか.
大阪らしいと言うのか. だから何時までも
下降線なのだと言うべきか.
ス内パー
民主党小沢派は未来の党に吸収されて勢力としては死んだも同然ですが
非小沢派(ブレーンの竹中とか)は新進党を捨てて民主党で大成功した成功体験を元に
民主党を捨てて維新でもう一回大成功したいと考えている節が強く見受けられますので
そのきっかけすら与えないための行動が結果論として維新つぶしになったのでしょう。
洗足池
先週中国に出張し現地駐在の日本人に多数会ったが、口を揃えて今回の事態を招いた慎太郎を罵っていた。石原一家は許せない。民主党は嫌いだが松原仁に投票する。比例はみんなの党にする。都知事は松沢、最高裁判官は全員バツ。