バンドワゴンと石破リアリズム

 
昨日のつづきです。

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先週末、時事通信社は電話世論調査を実施し、更に支社局の取材を加味して選挙情勢を探った。

それによると、自民党は単独で過半数の241議席を超え、絶対安定多数である269議席も上回る勢い。北信越や中国、四国など、元々、地盤が強固な地域で優勢であるのに加えて、都市部でも復調の傾向で、120を超える選挙区で当選圏、比例でも60議席超確保する見込みだという。

一方、民主党は、前回221勝だった小選挙区で、議席獲得が見込めるのは40程度。比例も前回の87議席を大きく下回る見通しで100議席割れは元より下手をすれば、70議席台に落ち込む可能性すらあるという。

また、日本未来の党や日本維新の会など「第三極」陣営は伸び悩んでいるようだ。

この時事通信の選挙情勢調査より更にアグレッシブな予測をしているのが毎日新聞。毎日新聞は同じく、12月8~10日にかけて世論調査及び全国の取材網からの情報を加味した調査によると、自民党は青森、秋田、新潟、富山、石川、福井、岐阜、鳥取、島根、広島、山口、徳島、高知、佐賀、大分の15県で小選挙区を独占する模様で、小選挙区だけで240議席を伺う勢い。比例でも60議席台の上積みを狙えるという。

一方の民主は小選挙区で40議席を割る可能性があり、比例代表も30議席台ではないかとしている。

更に、第三極については、日本維新の会が大阪の7小選挙区で優位に立ち、5小選挙区で自民候補らと接戦。大阪以外でも前職らが議席を得て小選挙区で10議席以上、比例代表では30議席以上を確保すると予測している。

先週末あたりから急激に動いてきた選挙情勢。一部ではバンドワゴン効果が出てきているのではないかという見方がある。

バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)とは、いわゆる"勝ち馬に乗る"行動のことで、ある選択が多数に受け入れられているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなることをいう。

バンドワゴンとは、大きな祭りのパレードなどに登場する先頭の楽隊車のことで、この車が来て、演奏がはじまると、それまで冷静だった人の気持ちもウキウキしてくる。この気持ちの変化を誘発するところから、バンドワゴン効果と言われるようになった。

バンドワゴン効果が起こる原因には大きく2つあると考えられている。ひとつは、誰が誰に投票したがが分かるようなケースで、勝者による論功行賞への期待や報復への恐れから勝ち馬の乗ろうとする心理が強く働く。それゆえに、企業や団体などの組織票集めでは、特にこの傾向を示すとされる。

もうひとつは、個人の判断より、集団の決定が正しいという思い込み、或いはそうした空気に流されることで発生するとされる。選挙において、こちらの効果が表れたと考えらえるのは、前回の総選挙でマスコミが政権交代だと煽りに煽って、多くの人を熱狂させたことがそれに当るだろうと思われる。

これに対して、全く反対の効果を期待するものがある。アンダードッグ効果というのがそれ。

アンダードック効果は別名「負け犬効果」ともいい、弱い立場にある人や不利な状況に追い込まれている人を見ると、その人を応援したくなる心理状態が生まれることを指す。要するに「判官びいき」。



選挙でいえば、代議士などの死亡で妻やその他の親族が身代わり候補として出馬する、いわゆる「弔い選挙」などで数多くこうした現象がみられる。

だけど、このアンダードック効果は、その候補者が"判官びいき"してもらえるだけのものがなければならない。それは、もはや政策云々ではなく、その人の人柄や普段からの努力等がものをいう。

それに、正直いって、民主党に同情票を集めようとするのは、ちょっと無理がある。なぜなら、今の民主には、有権者の同情を集めえるだけの「真摯さ」など欠片も持っていないから。

人の同情を得るためには、頭の良さ云々の前に「真摯さ」がなくてはいけない。もう2年も前のエントリーになるけれど、「もしドラッガーが江戸時代の日本に生まれたら」の中で、ドラッガーの説くリーダーの条件として最初から身につけていなければならないものとして「真摯さ」があり、民主党にはそれがないと述べたことがある。

ついこの間まで「うそつき」と言われていた代表を擁する民主党がそれを短期間で覆すのは難しい。過去3年半の民主党議員の態度、国会運営、それらが全てこの選挙戦に跳ね返っている。因果応報。ブーメラン。

先週、マスコミ各社が自民大勝の世論調査を報道したとき、一部では、マスコミが自民を勝たせ過ぎないように、アンダードック効果を狙ってワザと自民が有利なように報道しているのではないか、という見方があった。

もしも仮にそうだったとしても、現状を見る限り、マスコミは"うそつき効果"とも呼ぶべき民主党の体質がアンダードック効果の打ち消している可能性を軽視していたのかもしれない。

このアンダードック効果については、維新の会も使い始めている。12月10日、橋下徹代表代行は大分市内の街頭演説で「選挙戦はこれから後半に突入するが、日本維新の会は完全に負けている。自民党が圧勝だ」と述べた。これなども、アンダードック効果を狙った発言だと思われる。

また、石原代表も7日の応援演説の際に、「維新で苦労している。…中央官僚体制を打破するために暴走している。みなさん助けてください。石原に力を貸してください」と同じくアンダードック効果を期待する発言をしている。だけど、これらがどこまで効果を発揮するかは、橋下氏や石原代表のイメージに拠るところもあり、なんとも言えない。

さて、では、大勝を報道されている自民党はというと、石破幹事長と小泉進次郎議員が全国を駈けずり回っているようだ。

自民党は、安倍総裁を始めとし、石破幹事長、小泉進次郎議員を全国の激戦区に集中投入する戦略にでていて、遊説日程は過密もいいところ。

中でも、石破幹事長は、沖縄の全選挙区を一日で回ったかと思えば、その数時間後にはプロペラ機で北海道へ。更には、選挙運動ができる時間には移動したくないと、寝台車をも使って移動する。

石破幹事長は「限界を超える。…指揮官たる者が一番つらい思いをしなくて誰がついてくるんだって話ですよ」と意気込む。

それとは別に、石破幹事長がマスコミのインタビューで、注目すべき発言をしている。それは、安倍総裁の金融緩和や国防軍などの一連の発言について、「離れていく票もあるわけでね。本当に実際に政権とったときに、それができるのだろうかというのもある。非常に高い理想を掲げて打って出るタイプの総裁と、極めてリアリストな私との違いはそういうところに出るのかもしれないね」と述べたこと。

世論調査と安倍石破タッグの重要性」のエントリーで、筆者は、安倍総裁が打ち出す世界観に対しては、石破幹事長がそれをより具体化し、現実的な政策に落とし込んで、国民に丁寧に説明するといった役割分担をすることが大切で、安倍総裁と石破幹事長のタッグは必須だと述べたことがある。

石破幹事長の発言は、ある意味これを裏打ちしているものだともいえ、少なくとも石破氏はそうした自分の役割を自覚しているのではないかと思われる。

総選挙後、安倍総裁が総理に再び就任することがあるとしても、石破氏のリアリズムは安倍総裁を補完するであろうと思われる。総選挙後の石破氏の処遇はひとつのポイントになるかもしれない。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    石破氏のそれはリアリズムでなく, 単に古いだけ.
    彼自身が日本の中心を見失っており, 日本の中心
    を追い求めている安倍晋三を理解し切っていない.
    多くの「気英の」自民党議員も同様だろう.
    経済に強い筈の候補者が石破氏とのツーショットを好む.
    それは長いデフレを伴った自民の過去の負債だ.
    日本の古い過去を遡れば, 安倍晋三の心意気こそ
    日本であることが分かる.

    やむにやまれぬ大和心.
    2015年08月10日 15:23

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