紅白から韓流スターが消えた。
11月26日に発表された「第63回NHK紅白歌合戦」の出場歌手50組に、韓流グループはひと組も入らなかった。去年の紅白は、東方神起、少女時代、KARAと3組も出場していたことから考えると大きく様変わりしている。
勿論これは、昨今の、竹島などでの日韓関係悪化が原因だと言われている。何でもNHKには、「韓流を出すな」という抗議が相当来ていたそうで、最後まで揉めた挙句、視聴者感情に配慮しての判断だったようだ。
尤も、選ばれなかった当の韓流スター自身も、内心はほっとしているのではないかと噂されている。何でも、韓国でも大晦日に、『歌謡大祭典』という歌謡イベントがあって、そちらに出ずに日本の紅白に出ると、『どうして日本ばかり向いているんだ』と韓国のファンから物凄い勢いで批判されるのだという。
韓国政府は文化産業に予算をつけて、国策として韓流ブームを後押ししている筈なのに、自国民から反発されるとはなんとも皮肉な話ではある。
ただ、その一方で、NHKの決定について、韓国の3大紙は、一斉に反発している。 中央日報は、「本当に独島問題と関連しないだろうか」と疑問視し、朝鮮日報は「韓国歌手ボイコット宣言なぜですか?」を不満を爆発。東亜日報は「K-POP歌手の出演が排除された」と批難している。
一体、韓国は日本における「韓流ブーム」に賛成なのか反対なのか、一体どう受け止めているのか。
日本大学の櫻坂英子氏によると、「韓流ブーム」なるものは、最初から韓国政府主導で始まったわけではなくて、民間活力による浸透が先にあり、政府はその成果に対して、後で乗っかったのだという。
日本で韓流ブームが起こったのは、2004年からとされているけれど、「韓流」は1990年代には、中国、台湾、香港、シンガポールなどで既にブームになっていた。つまり日本の「韓流」はこれらアジア諸国から遅れてブームになったということなのだけれど、その切っ掛けは2003年に放送された「冬ソナ」にあったことは広く知られている。
通常、大衆文化を支えるのは若年層であるのが一般的であるのに対して、日本の韓流は、中高年の女性に強く支持されてブームとなった。これ以降、韓国に対する日本の関心が高まった。
NHK韓国語講座のテキスト販売部数は、2003年までは毎年8~9万部の発行に留まっていたのけれど、「冬ソナ」放送後の2004年には、英語を除いた外国語では最多販売部数である20万部を記録し、韓国語教室の受講生も、放送以前と比べ10倍以上に増加した。
韓国観光を広く伝えている国営の韓国観光公社は2004年を「韓流観光の年」として、日本の韓流ファンをターゲットに韓国への観光旅行を誘致していった。「韓流」とタイアップした観光企画を次々と打ち上げ、中高年の女性を中心に韓流ドラマのロケ地に次々と日本の観光客が訪れるようになった。
こうして、日本の韓流は民間レベルで徐々に浸透していったのだけれど、当初、韓国国内では、日本の韓流ブームは信じられていなかった。
2004年の「ヨン様」来日騒動について、韓国の雑誌記者が、記事を纏める際に、本国および新聞社から非難を受けている。その理由は「韓国人を見下している日本人が韓流に熱を挙げる筈がない、こんな記事を出してしまったら、韓国が文化先進国になったような錯覚を与える」という危惧だったのだという。知日派の韓国人ほど、日本の韓流ブームを認めることが難しかったようだ。
だけど、日本のメディアが、連日「韓流」を持ち上げ、煽り続けるに従って、次第に韓国でも「韓流」は本物だと認識され、自信を持つようになっていった。
この段階になって、韓国政府は「韓流」人気と経済効果に着目して、「韓流」を外交文化政策に利用し始めた。手始めとして北京と上海に「韓流体験館」を建設し、中南米や中央アジアに韓国ドラマを無償配給していった。
こうして民間の成功に相乗りする形で韓国政府が「韓流」を国策にしていったのだけれど、それをぶち壊したのが、先般の李大統領の竹島上陸と今上陛下に対する侮辱発言。まぁ、侮辱発言については、のちに「そんなこといってない」としているようだけれど、これらによる韓国のイメージダウンは計り知れない。
内閣府は毎年、外交に関する世論調査をしているのだけれど、その中に、韓国に対して、親しみを感じるかどうかという調査がある。その推移を次に引用する。
見事に、2012年の好感度が急落している。どの年代でもまんべんなく落ち込んでいるのだけれど、特に、70歳以上の50%近い落ち込みと、50代の70%にも届いていた好感度が、43%程度にまで急落しているのが目につく。40~60代でみても、6割以上あった好感度が45%程度にまで落ちている。
これは、これまでの韓流ブームの成り立ちを考えると、中高年層の好感度の急落は、韓流に大きなダメージを与えることは間違いない。
今や、韓国を訪れる日本人観光客は大幅に減っている。今年、9月に韓国を訪れた日本人は計30万8883人と、昨年9月より3.8%減少し、更に10月は日本人の入国者数が26万9732人と、昨年10月比20.7%も激減している。
これに合わせて、ロッテ・ホテル・ソウルは、日本人宿泊客数が、昨年同月比で、9月は25%、10月と11月はそれぞれ30%減少。アシアナ航空によると、日本人団体乗客数が10月と11月は約30%減少したという。
ハンナラ観光のクォン・へギョン常務によると、「日本の高校から韓国に修学旅行にくることになっていたが、保護者らが反対し、キャンセルされた事例もある」と述べているし、韓国を訪れた日本人観光客自身も、韓国を警戒しなければならないと考える中高年層が増えていると感じていて、「韓国に行くといったら、知人らから危険だから気をつけてねといわれた」と漏らす観光客もいるようだ。
韓国観光公社の李丙贊・日本チーム長は、「日本人たちは天皇に触れることに、大変敏感だ。…最近、中国で反日デモが続くと、韓国も中国のように危険だろうと思う日本人が増えている」とし、「観光公社のフェイスブックのページを通じて、『韓国は安全だ』というメッセージを出し続けているが、9月から、日本の主要メディアから、韓国関連記事が姿を消すなど、空気は尋常ではない」と述べている。
筆者は8月18日の「世界地図から韓国がなくなる日」のエントリーで、李大統領の今上陛下に対する侮辱発言を取り上げ、このことで、韓国への旅行しようなんて日本人は居なくなるし、韓流番組をどんなに流したところでスルーされ、政府の思惑とは一切関係なく、個人レベルでかの国との関わりを断ってしまう方向に流れてゆくと述べたけれど、半年経って、その通りになりつつある。
特に、これまで韓流ブームを支えてきた、中高年層の好感度の急落は決定的であり、彼らが「脱韓国」に向かってしまったら、韓流を支える層はいなくなってしまう。「韓流ブーム」の復活はそうとう厳しい道のりになるだろう。
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