12月4日、衆院選が公示された。
立候補者数は、小選挙区1294人、比例代表210人(重複立候補者を除く)の計1504人で現憲法下で最多となった。
これは、自民・民主といった既存大政党が250名以上の候補者を擁立したことに加え、新たに結党した未来や維新がともに100人超の候補者を擁立したことが、候補者数を押し上げた要因となったようだ。
政党別の主な候補者数は次のとおり
民主 267このうち、民主は前回の330人から大幅に後退しているけれど、離党者が続出する中、それでもこれだけの数を集めている。世論調査での政党別支持率で、10%前後と民主党とだいたい同じ支持を集め、マスコミなどで持て囃された維新が、始めのうちこそ、全選挙区で候補者を立てるなんて息巻いていたのに、蓋を開けてみれば172名の擁立に留まったことと比べると、腐っても、金と組織があるというのは選挙に於いては大きなこと。
自民 337
未来 121
公明 54
維新 172
共産 322
みん 69
社民 33
大地 7
国新 3
新日 1
改革 2
諸派 67
無所 49
今回は新党が続々と登場し、実に12政党が名のりを上げたのだけれど、そのお蔭で、選挙区毎での競争が激しくなり、競争率は、小選挙区が4.28倍超(前回3.80倍)、比例選が5.39倍超(前回4.93倍)と、小選挙区は過去最高。
如何に自候補の支持票を固めつつ、相手候補の支持票を削り、かつどれだけ無党派層に浸透してゆくか。これまで以上に一票が大きな意味を持つことになる。
普通の選挙でさえ、各候補者は対立候補との違いを明確化して有権者にアピールするものだけれど、今回のように特に対立政党が多くなると、違いを出すのも簡単じゃない。
選挙公約の部分で対立軸があれば、まだマシだけれど、公約の内容が似てしまうと、無理矢理争点を作り出して、アピールするか、対立政党或いは対立候補のネガティブキャンペーンをひたすら張って、相対的に自党を浮き上がらせるとか、いろいろと苦労することになる。
ただ、今回の総選挙に限っては、幸か不幸か、争点は多岐に渡ることは万人が認めるところ。
第一に、3年半の"民主党政権の総括"があることは元より、震災復興、景気対策、消費増税、TPPに原発と、ぱっと目につくだけで5つもある。更に、自民党の安倍総裁が掲げる憲法改正、国防軍も争点に加えると実に7つ。
前回の「政権交代選挙」や、前々回の「郵政選挙」のようなワンイシューで済んでいた時とは大きく様変わりしている。争点が多いということは、その分、票が割れやすいということでもあるから、各政党は、どの争点にターゲットを絞って選挙戦を戦っていくのかも一つのポイントになってくる。
だけど、争点のターゲットを絞るなんて、ぱっと決められるほど簡単じゃない。なぜなら、当たり前のことだけれど、何を重要だ考えるかは国民一人一人によって違っているから。特に今回の総選挙のように大きな争点が4つも5つも出てくるときなどはそう。
まぁ、それでも有権者が重視する争点には、おおよその傾向があることはある。
11月17~18日に行われた産経新聞社とFNNの合同世論調査で、衆院選の争点を1つだけ挙げて貰うよう尋ねたところ、「景気・経済対策」が33.6%でトップ、医療・年金などの「社会保障」が20.6%で続き、原発・エネルギー政策は7.9%、消費税率引き上げは5.9%と振るわず、TPPに至っては2.3%と低調だった。
ただ、これも、調査機関や、調査時期及び、調査した時の社会情勢によっても変化する。たとえば、去年の福島原発事故を受けて、菅前首相が浜岡原発を停止するよう求めたことについて6割以上の評価が集まっていた。もし、あの当時に"脱原発"で解散していたら、少なくとも今よりは民主党に票が集まっただろうと思う。
その意味において、今現在の社会情勢をみてみると、争点に影響しそうな事故・事件が起きている。
例えば、先月27日に暴風雪に見舞われた北海道の登別市や室蘭市などで、送電線を支える鉄塔が倒壊して、およそ5万6000世帯が停電し、復旧まで3日ほどかかったことがあったけれど、現地はそうとう困窮したそうだ。
大型の灯油式ストーブは戸外の灯油タンクからの送油が電動によるため、長時間運転ができなかったり、集合住宅の給水システムが電動のだったため断水。街灯や信号機が点灯しないため、高速道路は通行止め。JRも運転休止で交通は麻痺する有り様だったそうで、それ以来、原発再稼働反対を口にする人はめっきり減ったという。
また、先日の笹子トンネル崩落は、インフラ整備の重要性を改めて世に知らしめた。これによって、公共事業悪玉論は影をひそめるであろうと予想される。
更には、北朝鮮が今月に10日から22日までの間に、人工衛星と称したミサイル発射を予告しているけれど、これなんかも、外交安保に対する国民の意識を高めさせることになる。中国の尖閣領海侵犯に至ってはいうまでもない。
だから、冷静にみても、今の日本の社会情勢は明らかに国難の最中にあり、それに対応できうる政党が政権につかないと危険であろうことは火を見るより明らか。
筆者は、別にこれらを天意とは言わないけれど、非常に示唆的なことであり、今度の選挙は、郵政選挙とか、政権交代選挙とかいった、ナントカ選挙ではなくて、国家の命運をもかけた新たな"国造り"の総選挙と捉えるべきではないかと思っている。
この記事へのコメント
sdi
真冬の北海道で停電という状況に追い込まれてやっと安定した電気の供給が自分たちの日々の生活の根底部分を支えていたか気がついた、ということですね。無くしてみてはじめてわかる有り難味を北海道の室蘭地区の方々は忘れないでしょう。
「そんなの想像力を働かせばわかるだろうに」という人もいるかも知れませんが、全ての人がそこまで期待するのはやはり無理すじというもの。かく言う私も今回の北海道の停電ニュースの詳細を聞いて「電気が通じてなければ、石油ストーブが使えない」といまさら気がついた次第です。もう一つの反原発の機運減少の心理的要因として、今回の停電地区に太陽電池バネルをつけた家屋が少なからずあったはずですが、停電時には恐らく役に立たなかったでしょう。発電量自体が小さいため送電網がダウンすると電力として取り出すことが出来なかったと思われます。都市ガスによるコジェネはガスの供給が停止せず電力供給なしで起動可能なら発電できたでしょう。北海道地区は今後太陽電池パネルの需要が減少するのではないでしょうかね。今までが期待しすぎだっただけですけどね。
せみまる
安倍はかつて国民の多くが年金や社会保障について政府の対応をもとめていたのに、教育とか憲法改正とか、ある意味どうでもいいことを持ち出したがために、見事に失脚した。安倍の弱みはそこにある。経済も社会保障も何もわからず、変な学者の言い分をおうむ返しし、現実に経済活動をしている企業社会から失望されるのだ。