11月29、30の両日、東京新聞は都内有権者を対象に世論調査を行った。有効回答は1004人。
調査で、衆院選比例代表でどの政党に投票するかの回答は自民党が19.9%でトップ、民主党が10.3%で続き、以下、日本維新の会が10.2%、日本未来の党(6.2%)、共産党(6.0%)、公明党(5.3%)、みんなの党(3.7%)となっている。
この結果について、東京新聞自身も指摘しているけれど、結党間もない、日本未来の党が支持を伸ばし、前回調査時の生活と減税日本の合計分より更に2.2ポイントほど上乗せしている。
筆者的には、日本未来の党は、卒原発しか言っていないようなイメージがあったのだけれど、今のところ明らかになった限りでは、TPP反対、卒原発、消費増税反対に子ども手当が旗印のようだ。
TPPについては「交渉入り反対」とする一方、FTA、EPAは「積極的に推進」の方針で、原発は、すべての原発が確実に廃炉となる『卒原発』への道のりを定め、東電は国の直轄管理、発送電分離。
消費税については増税法案凍結。年金制度一元化。子供手当は一人あたり年間31万2000円、とするようだ。
この内容は2009年の民主党マニフェストに良く似ており、それに卒原発と消費増税反対をくっつけたような公約といえる。まぁ、民主党を離党した小沢氏が母体となっているのだから当たり前といえば当たり前なのだけれど、公約的には、今の民主党のマニフェストと比べて、TPP、消費税、原発と悉く対立する形となっている。
だから、日本未来の党は、2009年時点の民主党を支持していた、或いは、今の野田民主党に反発する有権者層に対する受け皿になっていて、これに加えて、反原発の層を取り込もうとしているように見える。
ネットにどなたが作られたのか分からないけれど、直近1年の政界再編図解というのがある。以下に引用する。
これを見ると、"反増税"で民主を飛び出した小沢氏が、先に民主党を離党していた「きづな」を吸収し、"反TPP"で民主及び国民新を追い出された議員を合流させ、そして、卒原発を掲げる嘉田由紀子知事を神輿に担ぐことで"脱原発"の議員を吸収したことがはっきりと分かる。
つまり、有権者への公約ベースで反TPP・反消費増税・反原発を掲げる裏で、それに同調する現職議員を取り込み、彼らが持つ基礎票も一緒に抑えたということ。もちろんこれは、地元にちゃんとした後援会などの支援組織があるという前提なのだけれど、民主を支持するか生活を支持するかで、民主県連が対立もしくは分裂している状況を考えると、支持組織を民主から剥ぎ取ってくるくらいは十分予想される。
この組織票をきちんと抑えにかかるという部分が、維新の会とは大きく違う部分で、金も組織もない維新の会が、石原・橋下の二枚看板を全面に出す、所謂、"風"だよりの選挙戦であるのに対して、日本未来は、金は左程ないかもしれないけれど、組織の部分は、かつての支持母体及び、後援組織がしっかりしている議員のをフル活用する、「他人のふんどし」方式で用意して、表向きは、反TPP・反消費増税・反原発という「反民主党」政策によって"風"も得ようとしている。
今のところ、"風"だけでみると、維新の会の方が日本未来より上なのだけれど、元々、この維新の"風"は、既成政党に対する批判票が大きなウェートを占めている。民主は駄目だけれど、かといって自民に戻すのも嫌、という層は確実に存在し、彼らに対する訴求力があった。
だけど、維新の会は、ここ最近、公約を巡るゴタゴタが表面化して、橋下氏の発言も二転三転している。先日、とうとう橋下氏は、「公約をどこまで重要視しなければいけないのか」と言い放ち、石原代表も「細かい政策の話をしても仕方ない」と述べるに至った。"風"を頼みとする筈の維新の会が、その公約を重要視しないと自ら言ってしまった。これは、有権者、とりわけ、まだ投票先を決めていない人達に対する訴求力という意味ではマイナスになる。
仮に公約を軽視し、何をやるのか分からない第3極政党がいたとして、それでも投票する有権者がいるとするならば、彼らは、単に、既成政党を否定したいだけであり、ただ、反対さえしてくれればいいと見做していることになる。だけど、2009年の日本であれば兎も角、民主党政権という黒歴史を経験した2012年の日本では、流石にそれは減っているのではないか。
それに、反民主党という意味では、日本未来が明確にそれを掲げている。
だから、今、吹いている"維新の風"が、今後、弱まってくることがあれば、維新よりは組織があり、「反民主党」で公約が固まっている日本未来の方に、民主党に対する批判票が集まる可能性はあると思うし、当然、かつて民主党を支持した人達の票を削りとってゆくだろう。
今回の東京新聞の世論調査でも、支持層別見たとき、自民党は79.1%、維新の会は72.9%を固めているのだけれど、未来の党は既に89.2%の支持を固めているという結果となった。一方、民主党はまだ63%しか固めきれておらず、しかも民主党支持層の内、5.1%が日本未来に流れているという。
従って、現時点で支持層を固めきれていない民主から票が流れ出す可能性は高く、民主の議席は相当数減ることはやはり確実のように思われる。
先日の報道では、なんと野田首相が、比例代表に重複立候補するという。現役首相の比例重複は前代未聞。いくら選挙が厳しいからといって、そこまで追い込まれているとなると、他の候補は推して知るべし。
或いは、先日の党首討論でも自民の安倍総裁と一対一の討論を執拗に要求していたのも、生き残りをかけた起死回生を狙っていたのかもしれない。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
未来の党は野田に愛想をつかした社会党の
慣れの果てではないか. 団塊の世代とその
「薫陶」を受けた左翼主義者が投票できる
党を求めてさ迷っている. 新党形成の混乱は
それを表しているのだと思う.
しかし, 彼らは必ず投票するという点で,
その投票力は馬鹿にはならない.
自民党支持者が迷えば彼らが勢力を延ばす.