11月30日、昨日のニコ動での党首討論に続いて、日本記者クラブ主催の党首討論が行われた。
参加したのは11党で、次のとおり。
民主党 野田佳彦首相討論は2部構成で行われ、1部が党首が他党へ指名質問してそれに答える方式で、2部が記者からの質問に答える方式で行なわれた。
自民党 安倍晋三総裁
日本未来の党 嘉田由紀子代表
公明党 山口那津男代表
日本維新の会 石原慎太郎代表
共産党 志位和夫委員長
みんなの党 渡辺喜美代表
社民党 福島瑞穂党首
国民新党 自見庄三郎代表
新党大地 鈴木宗男代表
新党改革 舛添要一代表
1部は原則質問は一人一問で全党に質問機会を与える形であったから、29日のニコ動党首討論での方式に割と近いと思われた。ただ、質問相手を指名する方式であるために、どうしても現職総理または次期総理と目される人に質問が集中しがちで、完全に公平な発言時間を配分するのは難しい印象を受けた。
従って、野党は如何に鋭い質問をして、相手をやり込めてしまうかに力を注ぎ、逆に与党は如何なる質問に対しても、見事に切り返して返り討ちにするかという形になる。いわば、道場破りに来た野党と、迎え撃つ与党といえようか。
実際の討論はどうだったということについては、既に動画がいくつもネットにアップされているから、そちらを参照していただければよいと思うけれど、各党の質問内容は昨日のニコ動での党首討論と殆ど同じだった。
まぁ、質問をぶつける側にしてみれば、質問そのもので、自党をアピールしなければならない。従って、相手の弱点をつき、かつ、その点について、自党が素晴らしく見えるような質問をすることになる。畢竟、質問はかなり絞り込んだものになると思われ、結果的に似たような質問になってしまうのではないかと思われる。
だから、この方式での討論は、先にやったもの勝ちなところがあり、速報性という意味では、ニコ動が一番得をしたようが気がしないでもない。
それに、これだけ参加者が多いと、どうしても一人当たりの時間が少なくなってしまう。仕方ないことだとは思うけれど、十分な討議ができなかったことは残念ではある。
次に2部の記者による質問になるのだけれど、2部では、司会がニュース性を重視してと前降りしていたけれど、1部以上に、質問が現職総理または次期総理候補に集中していた。こうしたところをみると、なんだかんだいっても、発信機会という意味では、"与党の有利"と言う部分があることは否定できない。
記者の質問は、まぁ、質問であるから当たり前なのかもしれないけれど、「いついつ誰がこういう発言をした」あるいは「貴方の発言に対して、誰々がこう反論した」という情報を持ち出して、互いに見解がぶつかりそうな点について聞くというスタイルだった。
だから、最初は、記者がなんとなくそれなりの質問をしているように聞こえたのだけれど、よくよく考えてみれば、これくらいの質問であれば、市井の政治系ブロガーであっても十分できるのではないかと思えた。
政治の話題を書くブロガーは沢山いるけれど、彼らは、いろんな記事をチェック、評論し、特にはツイッター等で議論している。ゆえに、何時何処で誰が何と発言したかということについての情報共有は意外と進んでいる。筆者にしても、記者の質問を聞いても、「あぁ、あの発言のことか」と気づくことが殆どで、驚きの質問というものは少なかった印象がある。
尤も、ニュース性を重視するのであれば、こうした質問になるのは当たり前だと言われたらそれまでだけれど、この質問で通用するのであれば、政治系を扱う人気(質の高い)ブロガーであれば、十分同レベルの質問ができるのではないかと思う。
これはおそらく、情報化社会が進み、ネット等による幅広い情報拡散・共有化が行なわれた結果、知識あるいは知力において、一般国民とマスコミの差が無くなってきているのではないかと思う。
以前、「安倍総裁のネット優位化作戦」のエントリーで、各政党が何人かのブロガーと面接の上、選抜・契約を結んでおいて、大物議員が地方遊説する際に、同行取材して、レポートやインタビュー記事を発信したらどうかといったことがあるけれど、これなんかも十分成立するように思う。
今回の日本記者クラブの党首討論の第2部の内容であれば、うまくすれば、同行ブロガーによるインタビューでも代替可能になるかもしれない。今回の第2部は、記者と党首の1対1のやり取りだったから、各党党首が一同に会する必要はない。なんとなれば、ネット回線で各党の代表と繋ぐだけでも事足りるだろう。
29日のニコ動での党首討論は、実に140万人以上が視聴し、リアルタイムコメントは、50万件以上にもなったという。また、ツイッターでは「うちは爺婆含めて大人6人家族で見ました。1ユーザー1人ではありません。ネットユーザーは有権者です。テレビは死んだと皆で話しました」とか、「もうテレビが情報を独占して好き勝手にする時代は完璧に終わった」とか、「もう、テレビはいらないですね」などの声も上がっていたそうだ。
ニコ動は、翌日には、党首討論の全文書き起こしをネットにアップしている。最早、情報の拡散・発信はマスコミの専売特許ではなくなった。マスコミが、情報を右から左へ"伝言ゲーム"するだけで通用した時代は終焉を迎えつつある。
この記事へのコメント
sdi
そして、この特性こそ今後ネットメディアが一次ソースとなるにあたっての最大のアドバンテージじゃないでしょうか?。
三四郎
切り口は異なりますが、レガシィメディアの存在意義が低下してきたことを実感する内容でした。
ス内パー
元々インターネット自体がアーカイブ性と閲覧性の両立(アメリカの各大学コンピューターにて管理保存した論文の閲覧用ネットワークの集合体)から発展した代物ですからね。
書物に比べると遅れていた単位面積あたりの情報量及び視認性の悪さも大分改善されましたし。
ただテレビはアーカイブ性がないことを強みとして来たメディアなのでこれからもネットのアーカイブ性には気付かない可能性は大いにあるかと。